旧加算(医療DX推進体制整備加算)の経過措置はなぜ終わるのか
経過措置の根拠
2025年7月23日の中央社会保険医療協議会(中医協)総会で、医療DX推進体制整備加算と医療情報取得加算の見直しが正式に承認されました。2024改定で導入された旧「医療DX推進体制整備加算」では、施設基準のうち「電子カルテ情報共有サービスへの参加に係る掲示」と「電子カルテ情報共有サービスを活用できる体制を有している」と見做す経過措置が、2026年5月31日まで設定されていました。
6月1日以降は「実参加」が新加算(加算1)の必須要件
6月1日から施行される新加算「電子的診療情報連携体制整備加算」では、電子カルテ情報共有サービスへの参加が加算1の施設基準として組み込まれています(旧加算で経過措置の対象だった「みなし扱い」の文言は新加算には引き継がれません)。
参加状況の判定は、医療機関等向け総合ポータルサイト(社会保険診療報酬支払基金が運営)に電子カルテ情報共有サービスの「運用開始日」を登録し、厚生労働省ウェブサイトの「対応施設」一覧に公表されることで行われると整理されています。
2026年4月21日付の厚生労働省保険局医療課事務連絡「疑義解釈資料の送付について(その4)」問3でも、電子カルテ情報共有サービスへの「接続」の判定は、ポータルサイト上の運用開始日登録と厚生労働省サイトでの公表状態をもって行うと明示されています。
※同問3 答の末尾には「現在、ポータルサイトでの入力機能及び厚生労働省ウェブサイトにおける公表ページは準備中のため、準備が整い次第、詳細については両サイトで公表予定」と注記されています(R8.4.21時点)。読者が運用開始日を実際に登録できるようになるのは、両サイトの公表後となります。
新加算「電子的診療情報連携体制整備加算」の点数構造
新加算は、旧加算と比較して大幅に評価が引き上げられる方向で設計されています。特に再診時は従来「3か月に1回・1点」から「月1回」へと算定頻度が改善されています。
※2025年7月23日中医協答申段階の個別改定項目PDFでは、各点数は「●●点」と空欄で示されており、確定点数は告示・通知(保医発0305第6号 等)で示されました。本記事では複数の解説で一致している参考値を掲載していますが、最終的な点数は必ず告示・通知をご確認ください。
算定区分と点数(2026年6月1日施行・参考値)
※印の点数は複数解説で示されている参考値。最終確定は告示・通知をご確認ください。
再診料の加算は原典(個別改定項目 P.495 A001再診料 注19)では区分なしの一律点数で規定されており、「初診または入院で加算1〜3いずれかを届出している施設が、再診時に算定する点数」という構造になります。
重要な算定制限:本加算は、明細書発行体制等加算(再診1点)と同月別に算定できません(個別改定項目 P.495 医科初診料 注15・再診料 注11/19)。診療所では明細書発行体制等加算を算定している施設が多いため、二重算定による返戻に注意してください。
加算区分の違いは「施設要件の充足度」
初診加算は加算1〜3の3区分、入院加算は加算1・2の2区分という構造です。加算区分の差は、施設要件(電子処方箋・電子カルテ情報共有サービス・電子カルテ導入の充足度)に対応します。
- 加算1(最高評価): 電子処方箋の発行体制、電子カルテ情報共有サービスへの参加、電子カルテ導入のすべてを満たす
- 加算2(中位評価): 一部要件のみ充足
- 加算3(基本評価・初診のみ): 基本要件のみ充足
自院がどの加算区分に該当するかは、後述の施設基準チェックリストで判定してください。
5月31日までに完了すべき最終チェックリスト
以下の5項目を5月18日(月)までに着手しておくと、5月下旬に始まる電子申請受付に間に合い、6月1日からの算定開始が可能になります。
チェック1. マイナ保険証利用率の実績確認
新加算(電子的診療情報連携体制整備加算)のマイナ保険証利用率は、加算1〜3すべて30%以上で統一されました(保医発0305第7号 第1の8 (4))。算定月の3月前のレセプト件数ベースで判定し、前月または前々月の値で代替することも可能です(同 (5))。
旧加算で重い壁だった70%/50%の上位区分は新加算では廃止され、加算1〜3の差はマイナ保険証利用率ではなく、(9) 電子処方箋発行体制 / (10) 電子カルテ要件 / (11) 電子カルテ情報共有サービス活用体制などの施設要件の充足度に切り替わっています(加算1: (1)〜(11)全要件 / 加算2: (1)〜(8) + (9)〜(11)のいずれか / 加算3: (1)〜(8)のみ)。
参考までに、旧「医療DX推進体制整備加算」(2024改定)における経過措置基準値の引き上げ経緯を以下に示します(新加算ではこの基準値は適用されません)。
小児科特例は基準値を3ポイント低く設定されています。実績はオンライン資格確認等システムの利用状況管理画面で確認できます。
チェック2. 電子カルテ情報共有サービスへの参加申請
医療機関等向け総合ポータルサイト(https://iryohokenjyoho.service-now.com/csm)で、電子カルテ情報共有サービスの利用申請と「運用開始日」を登録することで、厚生労働省サイト上の「対応施設」一覧に公表されるという仕組みになります。
ただし、疑義解釈(その4)問3 注釈の通り、運用開始日の入力機能および厚生労働省ウェブサイトの公表ページはR8.4.21時点で準備中とされています。準備が整い次第、両サイトで公表予定とされていますので、最新情報を必ずご確認ください。
手順書・マニュアル・補助金申請も同ポータルから入手可能となる予定です。電子カルテ情報共有サービス自体の本格運用は2026年度内を目指すスケジュールとされていますが、6月1日時点では「参加表明(運用開始日登録)」フェーズで足りると整理されています。
チェック3. 電子処方箋の発行体制
加算1を算定する場合、電子処方箋の発行体制が必須です。電子処方箋管理サービスへの接続状況と、実際の発行実績を確認してください。
チェック4. 院内掲示・Web掲示の文言差替え準備
5月中に、院内掲示と自院ウェブサイトの掲示文言を「電子的診療情報連携体制整備加算」に差替える原稿を準備しておきます。具体的な差替え例は次章で示します。
チェック5. 地方厚生局への再届出
旧加算からの自動移行はありません(疑義解釈〔その1〕令和8年3月23日 問3 でも「改めて届出を行う必要がある」と明示)。新加算を6月1日から算定する場合、5月7日(木)〜6月1日(月)必着で地方厚生局へ再届出が必要です。
電子申請の受付は 令和8年5月25日(月)から全国一斉に開始 されます(社会保険診療報酬支払基金告知)。郵送の場合は土日を考慮し、5月18日(月)までの発送を強く推奨します。
届出様式は「別添7 基本診療料の施設基準等に係る届出書」、加算区分ごとに様式番号(例: 入医DX2)が指定されています。詳細は管轄の地方厚生局のウェブサイトで確認してください。

6月1日から差替える院内掲示・Web掲示の文言例
施設基準として、新加算の名称と体制について「見やすい場所及びウェブサイト等に掲示」することが求められます(個別改定項目 P.499 施設基準 三の七 ヘ・ト)。旧「医療DX推進体制整備加算」表記のまま掲示を続けると、適時調査や施設基準確認時に「要件未充足」と判定されるおそれがあります。
旧 → 新 文言差替え例(掲示テンプレート)
旧文言(5月31日まで)
当院は、医療DX推進体制整備加算の施設基準に係る届出を行っており、医療情報取得加算を算定しています。マイナンバーカードの健康保険証利用にご協力ください。
新文言(6月1日から)
当院は、電子的診療情報連携体制整備加算の施設基準に係る届出を行っています。
- 当院は電子カルテ情報共有サービスに参加しています(加算1の場合)
- 当院は電子処方箋を発行できる体制を整えています(加算1の場合)
- マイナンバーカードの健康保険証利用にご協力ください
掲示すべき要素
新加算の施設基準として、最低限以下の要素を院内掲示・Web掲示に含めることを推奨します。
- 新加算の名称(電子的診療情報連携体制整備加算)と届出済みである旨
- 電子カルテ情報共有サービスへの参加状況(加算1を届出している場合)
- 電子処方箋の発行体制(加算1の場合)
なお、Web掲示と院内掲示は内容を一致させてください。両者の不一致は適時調査でも頻繁に指摘される項目です。届出と院内掲示の不一致対策については、関連記事の6月改定後の適時調査で必ず見られる「届出と院内掲示の不一致」を防ぐチェックリストも参考にしてください。
よくある質問・間違い
Q1. 旧加算1を取っていれば、6月以降も自動的に新加算1が算定できますか?
いいえ、自動移行はありません。新点数体系のため、現在加算1を算定している施設も、6月1日以降に算定するには改めて新加算1の届出を地方厚生局に提出する必要があります(疑義解釈〔その1〕令和8年3月23日 問3)。
Q2. 電子カルテ情報共有サービスに「接続」していれば施設基準を満たしますか?
接続だけでは不十分とされています。医療機関等向け総合ポータルサイトで「運用開始日」を登録し、厚生労働省サイトの「対応施設」一覧に公表されることが施設基準充足の証拠となる、と疑義解釈(その4)問3で明示されています。ただし同問3 注釈の通り、入力機能・公表ページはR8.4.21時点で準備中とされていますので、最新情報をご確認ください。
Q3. 同一月内に同じ患者の初診と再診の両方で算定できますか?
できません。疑義解釈(その4)問4では、他の疾患で初診を行った場合でも、その月に再診時加算を算定済みなら初診時加算は算定不可と明示されています(逆に初診時加算算定月に再診を行っても再診時加算は算定不可)。月1回・初診or再診のいずれか、という整理です。
Q4. マイナ保険証利用率が判定値に届いていない場合、どうすればよいですか?
まずは6月時点で算定可能な区分(加算2や加算3)を選択し、利用率が改善した時点で上位区分への変更届を提出する方法があります。利用率向上策(窓口での声かけ、案内ポスター掲示等)も並行して進めてください。
Q5. 5月31日が日曜のため、5月29日(金)までに届出を出さないといけないのですか?
届出期限は「6月1日(月)必着」です。電子申請の受付は 令和8年5月25日(月)から全国一斉に開始 されますので、5/25〜6/1の電子申請も選択肢になります。郵送の場合は土日を考慮し、5月18日(月)までの発送を強く推奨します。
まとめ
医療DX推進体制整備加算の経過措置終了まで残り約30日。今すぐ動くべき優先順位は次の通りです。
- マイナ保険証利用率の実績確認(最終的な数値要件は告示・通知で確認)
- 医療機関等向け総合ポータルサイトの最新情報確認(運用開始日登録機能はR8.4.21時点で準備中)
- 5月18日までに地方厚生局へ再届出(郵送)/電子申請は5/25(月)から全国一斉開始
- 院内掲示・Web掲示の文言差替え(6月1日から新加算名称に切替)
- 明細書発行体制等加算との同月別算定不可に注意(返戻リスク回避)
旧加算からの自動移行はなく、放置すると6月1日以降は加算自体が算定できなくなります。本記事のチェックリストを使って、期限内に確実に切替を完了させてください。
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参考資料