機能強化加算の掲示要件:何を掲示する必要があるのか
5項目の「かかりつけ医として行う取組」
機能強化加算を算定する医療機関は、かかりつけ医機能として行っている取組 を院内掲示およびホームページに掲示する必要があります。これは厚生労働省の「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」で明示されており、全国の医療機関でほぼ同じ文言で運用されています。
掲示が必要な5項目は次のとおりです。
- 受診している他の医療機関と処方されている医薬品の把握(お薬手帳の確認)
- 必要に応じた専門医療機関または専門医への紹介
- 健康診断結果等の健康管理に関する相談対応
- 保健・福祉サービスに関する相談対応
- 診療時間外を含む緊急時の対応方法等の情報提供
掲示が必要な場所
施設基準上、掲示が必要な場所は次のとおりです。
| 掲示場所 | 必須/推奨 | 備考 |
|---|
| 院内(受付・待合室など患者の見やすい場所) | 必須 | 紙ベースの掲示物として常時掲示 |
| 自院ホームページ | 必須 | 院内掲示と同等の内容をWeb上にも掲載 |
| 書面交付(必要時) | 努力義務 | かかりつけ医機能報告制度に基づき、患者が希望する場合に交付 |
機能強化加算の算定要件として、見やすい場所への院内掲示と ホームページ等への掲示 の両方が施設基準で求められており、加えて2024年度(令和6年度)改定で全施設基準共通のウェブサイト掲示義務が課され、2025年6月で猶予期間が終了しています。このため、機能強化加算を算定する医療機関にとって Web 掲示は実質必須です。
2026年6月改定で追加された掲示の論点
6月改定では施設基準そのものに新要件が追加されたため、自院がBCPを策定したことや、外来データ提出加算・在宅データ提出加算の届出状況など、患者向けの掲示文の中で触れる必要は基本的にはありません。ただし、地域の医療連携や災害時対応の説明責任を果たす観点から、自主的に「災害時にも医療提供を継続できる体制を整えています」といった一文を加える医療機関もあります。
そのまま使える院内掲示テンプレート
ここから先は、A4用紙1枚に印刷して掲示することを想定したテンプレートです。自院の状況に合わせて施設名・連絡先・診療時間を差し替えてください。

標準テンプレート(医科診療所向け)
かかりつけ医機能について
当院は、機能強化加算を算定している医療機関として、地域における
かかりつけ医機能を担うため、以下の取組を行っています。
1. お薬手帳の確認・服薬管理
他の医療機関の受診状況および処方されている医薬品を把握し、
必要な服薬管理を行います。受診の際は、お薬手帳をご持参ください。
2. 専門医療機関への紹介
必要に応じて、専門的な医療を必要とする場合に、適切な医療機関を
ご紹介します。
3. 健康診断結果等の健康管理に関する相談対応
健康診断や検診の結果に関するご相談、健康管理上のご相談に応じます。
4. 保健・福祉サービスに関する相談対応
介護・福祉サービスに関するご相談についても、必要に応じて関係機関と
連携してご案内します。
5. 診療時間外を含む緊急時の対応方法
診療時間外の緊急時には、下記の連絡先までご相談ください。
【診療時間外連絡先】 〇〇〇-〇〇〇〇-〇〇〇〇
【夜間・休日対応医療機関】 〇〇市夜間急患センター 〇〇〇-〇〇〇〇
医療法人〇〇会
〇〇クリニック
軽量版(A5・受付カウンター掲示用)
A4で掲示できるスペースが取れない場合は、要点だけをまとめた軽量版を併用するのも有効です。
かかりつけ医機能について(要約)
当院は機能強化加算を算定する医療機関として、
以下の取組を行っています。
● 他院での受診状況・処方薬の把握
● 必要に応じた専門医療機関への紹介
● 健康診断結果に関する相談対応
● 保健・福祉サービスに関する相談対応
● 診療時間外を含む緊急時の対応案内
詳しくは受付までお声がけください。
〇〇クリニック
ホームページ掲示用テンプレート
Webサイトに貼り付ける場合は、見出し階層を調整して、患者が見つけやすい位置(トップページからのリンクが1〜2クリック以内)に配置してください。

基本パターン(HTMLそのまま貼付可)
<h2>かかりつけ医機能について</h2>
<p>当院は、機能強化加算を算定している医療機関として、地域におけるかかりつけ医機能を担うため、次の取組を行っています。</p>
<h3>1. お薬手帳の確認・服薬管理</h3>
<p>他の医療機関の受診状況および処方されている医薬品を把握し、必要な服薬管理を行います。受診の際は、お薬手帳をご持参ください。</p>
<h3>2. 専門医療機関への紹介</h3>
<p>必要に応じて、専門的な医療を必要とする場合に、適切な医療機関をご紹介します。</p>
<h3>3. 健康診断結果等の健康管理に関する相談対応</h3>
<p>健康診断や検診の結果に関するご相談、健康管理上のご相談に応じます。</p>
<h3>4. 保健・福祉サービスに関する相談対応</h3>
<p>介護・福祉サービスに関するご相談についても、必要に応じて関係機関と連携してご案内します。</p>
<h3>5. 診療時間外を含む緊急時の対応方法</h3>
<p>診療時間外の緊急時には、下記の連絡先までご相談ください。</p>
<ul>
<li>診療時間外連絡先:〇〇〇-〇〇〇〇-〇〇〇〇</li>
<li>夜間・休日対応医療機関:〇〇市夜間急患センター(〇〇〇-〇〇〇〇)</li>
</ul>
簡易パターン(テキストエディタしか使えない場合)
Web管理ツールがHTML編集に対応していない場合は、テキストベースのまま貼り付けても問題ありません。患者が読みやすいように、見出しと箇条書きの体裁が崩れないように整えてください。
かかりつけ医機能報告制度に基づく書面交付ひな型
2025年4月施行の改正医療法により創設された かかりつけ医機能報告制度 により、かかりつけ医機能を担う医療機関は、患者が希望する場合や継続的な医療提供が特に必要と判断される場合に、電磁的方法または書面交付 によって自院のかかりつけ医機能の内容を説明する努力義務が定められています。
機能強化加算の施設基準とは別の制度ですが、機能強化加算を届け出ている診療所の多くはかかりつけ医機能(2号機能)の公表対象となるため、対応する場面が重なります。書面交付の努力義務は『継続的な医療を必要とする患者で、居宅・外来診療上特に説明が必要と判断される場合』が対象で、すべての患者に毎回交付する義務ではありません。
書面交付テンプレート(A4・1枚)
かかりつけ医機能に関するご説明書
発行日: 年 月 日
患者氏名: 様
当院では、患者さまのかかりつけ医機能を担う医療機関として、
以下のような医療提供体制を整えています。
■ 提供する医療の内容
・継続的な健康管理および通常診療
・他医療機関の受診状況、処方薬の把握とお薬手帳の確認
・必要に応じた専門医療機関への紹介
・健康診断結果等の健康管理に関する相談対応
■ 連携している医療機関等
・〇〇病院、△△クリニック、地域包括支援センター〇〇
■ 診療時間外の対応
・電話相談:〇〇〇-〇〇〇〇-〇〇〇〇
・夜間休日対応:〇〇市夜間急患センター(〇〇〇-〇〇〇〇)
■ 業務継続体制(BCP)
・災害時においても医療提供を継続できるよう、業務継続計画を策定し、
計画に従って必要な措置(訓練・備蓄・連絡体制の整備等)を実施し、
定期的に見直しを行っています。
ご不明な点がありましたら、当院受付までお気軽にお声がけください。
医療法人〇〇会
〇〇クリニック
書面交付の運用ポイント
書面交付は すべての患者に毎回交付する必要はありません。次のような場面で交付すると現場運用が回しやすくなります。
- 慢性疾患で継続的な通院が始まる初回
- 高齢患者で複数医療機関を受診している方の初診時
- 患者から「どんな医療を提供してくれるのか書いた紙がほしい」と求められたとき
書面交付の有無は診療録に記録しておくと、適時調査時の説明資料としても活用できます。
2026年6月改定で追加された3つの新要件と掲示への影響
2026年6月改定では、機能強化加算の施設基準に3つの新要件が追加されました。掲示文を直接書き換える必要はありませんが、自院の運用と整合させるために理解しておく必要があります。

新要件①:BCP(業務継続計画)の策定義務化
施設基準通知に 業務継続計画(BCP)の策定 が新設されました。原文では『業務継続計画を 策定し、当該計画に従い必要な措置を講じる こと。また、定期的に業務継続計画の見直し を行い、必要に応じて変更を行うこと』とされており、計画書の作成だけでなく、訓練・備蓄・連絡体制の整備など計画に沿った実施と、定期的な見直しまでが要件です。厚労省は『医療機関(災害拠点病院以外)における災害対応のための BCP 作成の手引き』を参考にすることを推奨しています。
経過措置: 令和8年(2026年)3月31日時点ですでに機能強化加算の届出を行っている保険医療機関は、令和9年(2027年)5月31日までの間に限り、施設基準通知の本要件に該当するものとみなされます。新規届出医療機関には経過措置の適用はありません。 なお、同様の経過措置は在宅療養支援診療所・在宅療養支援病院の届出にも適用されます(経過措置一覧の項目#58、令和9年5月31日まで)。在支診・在支病を併せて届け出ている医療機関は、両方の経過措置をあわせて確認してください。なお、地域包括診療加算・地域包括診療料・小児かかりつけ診療料については、令和8年度改定の経過措置一覧に独立項目としての記載がないため、新規届出時の対応は厚生局の最新情報をご確認ください。
書面交付ひな型の「業務継続体制(BCP)」の項目は、このBCP策定要件を踏まえて加えています。BCPを策定済みの医療機関は、書面交付の中で一文触れることで患者への安心感の提示にもつながります。
新要件②:外来医師過多区域の3年以内期限付き指定診療所の除外
健康保険法第68条の2第1項の規定により、3年以内の期限が付された同法第63条第3項第1号の指定を受けた診療所(外来医師過多区域での新規開設に該当)は、機能強化加算の届出対象から 除外 されます。
これは新規開設の診療所に関する制限のため、既存の医療機関の掲示文には影響しません。新規開業を検討中の方は、開設予定地が外来医師過多区域に該当するかを事前に都道府県の医療計画担当課に確認してください。
新要件③:外来データ提出加算・在宅データ提出加算の届出(努力義務)
外来データ提出加算・在宅データ提出加算 の届出が「望ましい」要件(努力義務)として施設基準に追加されました。義務ではないものの、今後義務化される可能性が高いと多くの解説で指摘されています。掲示文への直接の影響はありませんが、自院として届出を検討する材料となります。
2026年6月改定への届出スケジュール
2026年6月診療分から新点数を算定する場合、施設基準届出の受付期間は次のとおりです。
5月下旬は届出が集中して厚生局窓口が混雑するため、可能な限り 5月18日(月)までに届出 を行うことが厚労省から要請されています。掲示物の準備と並行して、届出書類のチェックも前倒しで進めることをおすすめします。
各厚生局が公表している届出様式や受付情報は、厚生局の公式サイトで最新版を必ず確認してください。
よくある質問
Q1. 院内掲示とホームページ掲示で文言を変えてもよいか
基本的な5項目の趣旨が伝わる範囲であれば、媒体に応じて表現を整えても問題ありません。ただし、患者が「院内とWebで言っていることが違う」と感じる差異は避けてください。適時調査でも掲示と届出内容の整合性は確認対象になります。
Q2. ホームページがない医療機関はどうすればよいか
機能強化加算の算定にはホームページでの掲示が要件として求められているため、シンプルな1ページサイトでもよいので開設が必要です。SNSのプロフィールページのみでは要件を満たさないと判断される可能性が高いため、独自ドメインまたは無料CMSを使った正式なWebページを準備してください。
Q3. 書面交付は全患者に必要か
全患者への必須交付ではありません。かかりつけ医機能報告制度の趣旨に沿って、特に説明が必要な患者や、患者から希望があった場合に交付する努力義務という位置づけです。
Q4. 5項目の文言を要約・短縮してもよいか
要約は可能ですが、5項目それぞれが伝わる必要があります。とくに「専門医療機関への紹介」「診療時間外の対応」は、患者にとって直接的に有益な情報のため、短縮しすぎないことをおすすめします。
Q5. 掲示物に厚生労働省の表記やロゴを入れてもよいか
厚生労働省の正式なロゴ・エンブレムを掲示物に使用するのは避けてください。出典として「厚生労働省告示」「保医発通知」などの文言を引用するのは問題ありませんが、ロゴの無断使用は控えてください。
まとめ:今すぐ取り組むべき3ステップ
機能強化加算の掲示対応は、次の3ステップで進めるとスムーズです。
- 院内掲示テンプレートを印刷し、受付・待合室の見やすい場所に掲示
- ホームページに同等内容を掲載(独自ページ、または既存ページの中の見出しとして)
- 書面交付テンプレートを準備(必要時に印刷して交付できる形で保管)
さらに、施設基準そのものをチェックリスト形式で確認したい方は、関連記事の機能強化加算の施設基準を徹底解説、ほかの加算の掲示テンプレートをまとめて整えたい方は施設基準の院内掲示・ホームページ掲示の文例集を併せてご活用ください。
2026年6月改定への届出推奨期限は 2026年5月18日(月) です。掲示物の準備と届出を並行で進め、改定施行日までに余裕を持って体制を整えていきましょう。
掲示義務のWeb対応についてお困りの方は、お気軽にお問い合わせください。
参考資料