機能強化加算とは?施設基準・届出要件・掲示義務をわかりやすく解説

機能強化加算は、かかりつけ医機能を持つ診療所を評価する加算です。初診料に80点が上乗せされるため、クリニック経営にとって重要な加算の一つといえます。
しかし、施設基準が複雑で「自院が対象になるのかわからない」「掲示義務の内容がはっきりしない」という声も少なくありません。
この記事では、機能強化加算の施設基準・届出手続き・掲示義務について、チェックリストや文例つきでわかりやすく解説します。
機能強化加算とは
機能強化加算は、2018年度(平成30年度)の診療報酬改定で新設された加算です。地域におけるかかりつけ医機能を担う診療所や中小病院を評価する目的で設けられました。
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 点数 | 80点(初診料に加算) |
| 算定タイミング | 初診時(初診料を算定する患者全員) |
| 対象医療機関 | 診療所、または許可病床数200床未満の病院 |
| 新設時期 | 2018年度(平成30年度)改定 |
機能強化加算を算定する医療機関は、患者に対して以下のかかりつけ医機能を提供することが求められます。
- 患者が受診している他の医療機関および処方されている医薬品を把握し、必要な服薬管理を行う
- 必要に応じて、専門医師・専門医療機関への紹介を行う
- 健康診断の結果等の健康管理に係る相談に応じる
- 保健・福祉サービスに係る相談に応じる
- 診療時間外を含む緊急時の対応方法等に関する情報提供を行う
これらの対応は、単に届出をすればよいのではなく、日常の診療の中で実際に行うことが求められます。
機能強化加算の施設基準【7つの要件】
機能強化加算の施設基準で最も重要なのは、以下の7つの要件のうち、いずれか1つを満たしていることです。

自院がどの施設基準を届出しているかわからない場合は、以下から施設名で検索すると届出状況を確認できます。
施設名で検索するだけで、あなたの医療機関に必要な掲示義務の一覧と、実際の掲示ページのデモをご覧いただけます。
かかりつけ系(地域包括診療加算・診療料)
| # | 要件 | 補足 |
|---|---|---|
| ① | 地域包括診療加算1の届出を行っている | 在宅実績が必要(在支診10人以上 / その他3人以上) |
| ② | 地域包括診療加算2の届出を行っており、直近1年間に算定した患者が3人以上 | 加算2は24時間連絡体制の確保が要件 |
| ③ | 地域包括診療料1の届出を行っている | 診療所または200床未満の病院が対象 |
| ④ | 地域包括診療料2の届出を行っており、直近1年間に算定した患者が3人以上 | — |
小児系
| # | 要件 | 補足 |
|---|---|---|
| ⑤ | 小児かかりつけ診療料1または2の届出を行っている | 小児科の常勤医が1名以上必要 |
在宅系
| # | 要件 | 補足 |
|---|---|---|
| ⑥ | 在宅時医学総合管理料又は施設入居時等医学総合管理料の届出を行っており、在宅療養支援診療所(1)(2)または在宅療養支援病院(1)(2)に該当する | 機能強化型または連携型 |
| ⑦ | 在宅時医学総合管理料又は施設入居時等医学総合管理料の届出を行っており、在宅療養支援診療所(3)または在宅療養支援病院(3)に該当し、直近1年間に在宅患者訪問診療料(I)の「1」・在宅患者訪問診療料(II)・往診料を算定した患者の合計が3人以上 | 在支診(3)・在支病(3)の場合は実績要件あり |
多くの診療所では、地域包括診療加算2の届出+算定実績3人以上(要件②)が最も取り組みやすいルートとされています。
その他の施設基準
上記7要件に加えて、以下も満たす必要があります。
- 診療所または200床未満の病院であること
- かかりつけ医機能に係る院内掲示を行っていること
- かかりつけ医機能に係る内容をウェブサイトに掲載していること(自らウェブサイトを管理している場合)
届出の手続き
届出先
管轄の地方厚生(支)局に届け出ます。
届出に必要な書類
| 書類 | 内容 |
|---|---|
| 基本診療料の施設基準等に係る届出書(別添7) | 届出の表紙となる書類 |
| 様式1の3 | 機能強化加算の届出に必要な添付書類 |
| 前提となる加算の届出控え | 地域包括診療加算等、要件①〜⑦のいずれかの届出が受理されていることを証明する書類 |
届出様式は、厚生労働省の地方厚生局ホームページからダウンロードできます。
届出のタイミング
- 前提となる加算(地域包括診療加算等)の届出が受理された後に、機能強化加算の届出を行います
- 届出が受理された翌月1日から算定が可能です(月の最初の開庁日に届出た場合は当月1日から)
掲示義務の内容と掲示例
機能強化加算を算定する医療機関は、かかりつけ医機能について院内に掲示し、患者に対して説明することが求められます。
掲示義務の全体像については

厚生労働大臣が定める掲示事項とは?医科・歯科・薬局別に全項目を解説
厚生労働大臣が定める掲示事項の全体像を医科・歯科・薬局別に解説。令和6年度改定でウェブサイト掲載が義務化された背景や、対応していない場合のリスクについても説明します。
で詳しくまとめています。
院内掲示で求められる内容
以下の内容を、院内の見やすい場所(受付窓口付近など)に掲示します。
- 当院がかかりつけ医機能を有する医療機関であること
- かかりつけ医機能として実施している具体的な内容
- 機能強化加算を算定していること
- 医療機能情報提供制度(医療情報ネット)を利用して、かかりつけ医機能を持つ医療機関等を検索できる旨
書面の設置・交付義務
院内掲示に加えて、以下の対応も施設基準で求められています。
- 掲示内容を記載した書面を、患者が持ち帰れるよう見やすい場所に設置する
- または、患者の求めに応じて書面を交付する
つまり、ポスターを貼るだけでなく、同じ内容をまとめたリーフレット等を用意しておく必要があります。
院内掲示の文例
以下は、そのまま利用できる掲示文例です。
かかりつけ医機能について
当院は「かかりつけ医」機能を有する医療機関として、以下の取り組みを行っています。
- 患者様が受診されている他の医療機関や処方されているお薬を把握し、必要な服薬管理を行います
- 必要に応じて、専門の医師・医療機関をご紹介します
- 健康診断の結果に関するご相談や、健康管理に関するご相談に応じます
- 介護・保健・福祉サービスに関するご相談に応じます
- 診療時間外を含む緊急時の対応方法について、情報提供を行います
なお、初診の際には機能強化加算を算定しております。
かかりつけ医機能を有する医療機関は、医療機能情報提供制度(医療情報ネット)で検索できます。
○○クリニック
患者への説明のポイント
掲示だけでなく、必要に応じて患者への口頭説明も求められます。特に以下の点を伝えると理解が得られやすくなります。
- 「かかりつけ医として、お薬の管理や専門医への紹介などを行います」
- 「健康管理や介護に関するご相談も受け付けています」
- 「夜間や休日など緊急時の連絡先をお伝えします」
ウェブサイトへの掲載義務
2025年6月から義務化
令和6年度(2024年度)の診療報酬改定で、施設基準等で定められている院内掲示事項について、ウェブサイトへの掲載が原則として義務化されました。
経過措置が設けられていましたが、2025年5月31日で経過措置が終了し、2025年6月1日以降はウェブサイトへの掲載が必須となります。ウェブサイト掲示義務の全体像や対応期限については

ウェブサイト掲示義務とは?制度の全体像と対応期限を解説【第1部】
ウェブサイト掲示義務の法的根拠、2つの柱の構造、包括規定の重要性、経過措置の終了、対象施設、掲載方法まで、制度の全体像をわかりやすく解説します。
をご覧ください。
対象となる医療機関
自らホームページ等のウェブサイトを管理している医療機関が対象です。ウェブサイトを持っていない医療機関は、院内掲示のみで問題ありません。
ウェブサイトに掲載すべき内容
院内掲示と同じ内容、すなわち以下の情報をウェブサイトにも掲載します。
- かかりつけ医機能を有する医療機関である旨
- かかりつけ医機能として実施している具体的な取り組み
- 機能強化加算を算定している旨
- 医療機能情報提供制度(医療情報ネット)で検索できる旨
具体的にどの項目をウェブサイトに掲載すべきかは、

【医科・歯科編】ウェブサイト掲示義務の具体的な掲示項目一覧【第2部】
医科・歯科のウェブサイト掲示義務の具体的な掲示項目を一覧で整理。全施設共通の5カテゴリー、選定療養12項目、施設基準ごとの掲示要件を網羅しています。
で確認できます。
対応方法
ウェブサイトへの掲載方法は、主に3つの選択肢があります。具体的な設置手順は

ウェブサイト掲示義務の対応方法|何をどう載せればいい?具体例つきで解説
医療機関のウェブサイト掲示義務について、何を掲載すべきか・どう対応すべきかを具体例つきで解説します。令和8年改定での変更点も網羅。
で解説しています。
| 方法 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 自院ホームページに直接記載 | 自由にレイアウトできる | 更新の手間がかかる |
| PDFを掲載 | 院内掲示と同じものを流用できる | スマホで見づらい場合がある |
| 掲示ナビ等の外部サービスを利用 | 施設基準の変更に自動対応 | 月額費用がかかる |
いずれの方法でも、患者がアクセスしやすい場所(トップページからリンクする等)に掲載することが重要です。
令和8年度改定の見通し
かかりつけ医機能報告制度との連動
2025年4月にかかりつけ医機能報告制度がスタートしました。すべての病院・診療所(特定機能病院・歯科を除く)が対象で、初回報告は2026年1月〜3月に各都道府県へ提出します。
令和8年度(2026年度)の診療報酬改定では、この報告制度の内容を踏まえて、機能強化加算の施設基準や算定要件が見直される可能性があります。令和8年度改定の全体像は

令和8年度(2026年度)診療報酬改定まとめ|改定率・主な変更点をわかりやすく解説
令和8年度(2026年度)診療報酬改定の全体像を解説。改定率+3.09%の内訳、初診料・再診料の変更、医療DX加算の再編、掲示義務の変更点など、クリニックが押さえるべきポイントをまとめました。
をご参照ください。
中医協での議論ポイント
入院・外来医療分科会や中医協総会では、以下のような論点が議論されています。
- かかりつけ医機能報告制度の報告内容を、機能強化加算の施設基準に反映させるべきか
- 現在は初診患者全員に算定しているが、対象患者を限定すべきか(支払側の意見)
- かかりつけ医機能の情報提供の方法をより充実させるべき
今後の改定に備えて、かかりつけ医機能報告制度への対応を進めておくことが重要です。
まとめ
機能強化加算は、かかりつけ医機能を持つ診療所を評価する加算で、初診料に80点を加算できます。
押さえておくべきポイントは以下の通りです。
- 施設基準は7つの要件のうちいずれか1つを満たせばよい
- 多くの診療所では地域包括診療加算2+算定実績3人以上が取り組みやすい
- 院内掲示でかかりつけ医機能の内容を患者に周知する
- 掲示内容を記載した書面の設置・交付も必要
- 2025年6月からウェブサイトへの掲載が義務化された
- 令和8年度改定で、かかりつけ医機能報告制度を踏まえた見直しの可能性がある
掲示義務のWeb対応についてお困りの方は、お気軽にお問い合わせください。
なお、機能強化加算と同じく掲示義務のある加算として

明細書発行体制等加算の掲示内容と注意点【例文付き】
明細書発行体制等加算の算定に必要な院内掲示の内容を、例文付きでわかりやすく解説。ウェブサイト掲載義務についてもまとめています。
も確認しておくとよいでしょう。適時調査では掲示義務の不備が指摘されやすいため、

適時調査チェックリスト|当日までに準備すべきこと完全版
適時調査の通知が届いたら何を準備すべきか。事前提出書類・掲示物・人員配置のチェックリストと、よくある指摘事項TOP5を解説。
で事前に確認しておくことをおすすめします。
参考資料
- 基本診療料の施設基準等に係る届出書・届出様式(令和6年度) — 関東信越厚生局
- 令和6年度診療報酬改定の概要(全体版)(PDF) — 厚生労働省保険局医療課
- かかりつけ医機能報告制度について — 厚生労働省
- かかりつけ医機能の体制を評価する機能強化加算の見直し検討 — 入院・外来医療分科会