自院HPはセーフ?2026改正・医療広告ガイドラインで院長が見るべき5つの落とし穴|掲示ナビ ブログ | 掲示ナビ| 医療広告等ガイドライン(本体) | 名称が「医療広告ガイドライン」から「医療広告等ガイドライン」に変更。第4部「オンライン診療受診施設に関する広告について」を新設 |
| 医療広告等ガイドラインに関するQ&A | オンライン診療受診施設関連の第4部を新設(Q4-1・Q4-2を新規追加)。ガイドライン名称変更に伴い特定10問(Q1-1, 1-2, 1-3, 1-6, 1-7, 1-12, 1-14, 2-5, 6-3, 6-13)の表記を更新 |
| ウェブサイト等の事例解説書(第6版) | 第2章「SNS・動画広告における事例」を再構成し11事例(事例(39)〜(49))を収録。第2章では事例(40)・(48)が新規作成、複数事例で「説明の追加・修正」更新 |
名称変更は、令和7年法律第87号(2025年改正医療法)で創設された「オンライン診療受診施設」が広告規制の対象に加わったためです。同制度は2026年4月1日施行で、オンライン診療を実施する医療機関が主体となって広告するか、受診施設を設置する法人等が主体となるかで規制対象者が分かれます。
第6版の目玉:SNS・動画事例の大幅拡充
第6版で最も大きな変更は、第2章「SNS・動画広告における事例」の再構成です。事例(39)〜(49)の11件が収録されました。第5版(令和7年3月)ではSNS・動画あわせて6事例だったため、ほぼ倍増です。第2章で「新規作成」ラベルが付いているのは事例(40)「一体的かつ一覧性をもった情報提供のあり方(個別具体例2/2)」と事例(48)「費用を強調した広告」の2件、事例(46)・(49)が「説明の追加・修正」で更新されています。
② 投稿や ③ 返信内のハッシュタグ(#)によるタグ付け部分(※投稿内容と関係のないハッシュタグによる誘引は不適切)
(事例解説書 第6版 P.59「(39)SNSにおける広告形態と主な違反形態」より)
SNSは ①プロフィール、②投稿、③返信 の3要素、動画は ①プロフィール、②動画、③タイトル、④概要欄 の4要素で構成され、いずれか一つにでも違反があれば全体が違反扱いになります。
自院HP・SNSでやりがちな5つの落とし穴
事例解説書(第6版)と本体ガイドラインから、院長が特に注意すべき5パターンを抜き出しました。
落とし穴1:患者の口コミ・体験談の引用
クリニック公式アカウントが「ご来院ありがとうございます」といった投稿をし、その下に他者ユーザーから「肌にツヤとハリが出た」「割引チケットがもらえてお得」といった体験談コメントを引用する形式は違反です(事例解説書 第6版 事例(41))。
「他者の投稿を引用することで、自院のサービス等の体験談を紹介している場合も違反」と明記されています(医療法第6条の5第2項第4号、医療法施行規則第1条の9第1号)。動画でも同様で、患者がリスク・副作用を語っている場合も「体験談」とみなされます。
落とし穴2:投稿と無関係なハッシュタグ
痩身治療の投稿に「#メディカル痩身 #美容点滴」のような、その投稿の内容とは関係のないハッシュタグを付けることも違反例として挙げられています(事例(39)・(43))。改善欄では「投稿と関係のないハッシュタグは使用しない」と整理されています。
落とし穴3:限定解除情報を別ページや別SNSへリンクで補う
自由診療を扱う場合、「治療内容・費用・期間及び回数」「主なリスク・副作用」を記載しないと限定解除要件を満たしません。よくあるNG運用が、SNS投稿には費用だけ載せて「詳しくは公式HPへ」とリンクで誘導するパターンです。
第6版ではこのパターンに明確に NG が出されました。
同一SNS内かつ、患者が容易に自由診療における限定解除に必要な情報を入手できるように、投稿が一体的かつ一覧性を持っている
複数SNSに分散させたり(SNS1=費用、SNS2=治療期間、SNS3=リスク・副作用)、別リンク先で説明したりする運用は不可。SNSであれば1投稿または一連の投稿、動画であれば動画+概要欄の中で完結させる必要があります。
落とし穴4:費用強調・期間限定割引
第6版で新規作成された事例(48)では、以下のような表現が違反例として明示されました。
- 「この広告を見てご連絡いただいた方 今なら半額!!」
- 「今だけ!サマーキャンペーン実施中!!」「○月△日までに連絡いただいた方限定で初回施術50%OFF!!」
事実と異なる価格の記載や、条件付き価格を一般的な価格であるかのように表示する行為は、虚偽広告に該当するおそれがあることから、価格表示にあたっては特に慎重な対応が求められる
美容クリニック・自由診療を扱う施設は、キャンペーン告知の文言を一度棚卸ししておくことを推奨します。
落とし穴5:未承認医薬品(GLP-1等)の記載漏れ
GLP-1受容体作動薬を肥満治療として広告する場合、事例解説書 第6版 P.48 の事例(31)「医薬品等を承認された効能・効果と異なる目的で用いた自由診療における限定解除(GLP-1関連)」(第5版から継続、医薬品名等の説明を更新)に従い、以下の情報をすべて記載する必要があります。
- 未承認医薬品等であることの明示(例:「○○錠は2型糖尿病の治療薬として承認されており、肥満治療目的での処方は国内で承認されていません」)
- 入手経路等の明示(例:「国内の医薬品卸業者より国内承認薬を仕入れています」。個人輸入の場合はその旨と厚労省「個人輸入において注意すべき医薬品等について」ページの紹介)
- 同成分の承認製剤の有無(例:「同成分(△△)の注射製剤が肥満症の治療薬として国内で承認されています」)
- 諸外国での承認状況とリスク(例:FDAでの承認の有無、ダイエット目的の使用が承認されていない場合は重大なリスクが明らかになっていない可能性がある旨)
- 医薬品副作用被害救済制度の対象外である旨
これらは医療法施行規則第1条の9の2に基づく未承認医薬品等の追加5要件を具体化したもので、(ⅰ)未承認である旨、(ⅱ)入手経路、(ⅲ)国内承認医薬品の有無、(ⅳ)諸外国の安全性情報、(ⅴ)救済制度対象外、を「十分に記載」する必要があります。
違反すると何が起きるか — 覚知から1年以内の標準フロー
ガイドライン本体「第5 4(2)広告違反の指導及び措置」と、令和6年8月に厚労省が示した自治体向けひな型に基づくと、違反対応は以下のステップで進みます。
| ステップ | 内容 | 期限の目安 |
|---|
| ステップ0 | 覚知(ネットパトロール/立入検査/市民通報) | — |
| ステップ1 | 任意調査・行政指導(改善依頼書) | 覚知から2〜3週間以内に着手、2〜3か月以内に対応完了 |
| ステップ2 | 中止命令・是正命令(医療法第6条の8第2項) | 覚知から6か月以内を目途 |
| ステップ3 | 告発・管理者変更命令・開設許可取消(医療法第28条/第29条第1項第5号) | 覚知から1年を超えない範囲で完了 |
ステップ2の中止命令・是正命令に従わなかった場合、医療法第87条第1号により6月以下の懲役または30万円以下の罰金が科され得ます。報告命令への報告懈怠・虚偽報告、立入検査の拒否は同第89条第2号で20万円以下の罰金です。
覚知の入口になるのは、厚労省委託事業のネットパトロール窓口です。誰でも違反疑いを通報できるため、自治体は同事業からの情報提供を契機に動きます。
限定解除の4要件(基本のおさらい)
ウェブサイトで広告可能事項を超えて情報提供する場合、以下の4要件をすべて満たす必要があります(医療法施行規則第1条の9の2)。
- 医療に関する適切な選択に資する情報であって、患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイト等であること
- 問い合わせ先を明示すること
- (自由診療の場合)治療内容・費用等を情報提供すること
- (自由診療の場合)主なリスク・副作用等を情報提供すること
なお、バナー広告・リスティング広告は①の要件(患者等が自ら求めて入手)を満たさないため限定解除の対象外です。リスティング広告経由のランディングページであっても、その先のページが「自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイト」と認められれば限定解除可能ですが、広告自体の表現には限定された広告可能事項のみを使う必要があります。
「Web掲示」と「医療広告」は別系統 — 整理しておきたい境界線
掲示ナビをご利用の医療機関から「ウェブ掲示と広告は同じものですか?」というご質問を受けることがあります。結論から言うと、院内掲示・施設内パンフレットは医療広告規制の対象外です。
医療機関やオンライン診療受診施設の内部の掲示、内部で配布するパンフレット等はその情報の受け手が、通常、既に受診している患者等に限定されるため、本指針第2の1に掲げた要件のうち、①「患者の受診等を誘引する意図があること」(誘引性)を満たすものではなく、情報提供や広報と解される。
(医療広告等ガイドライン P.6「第2 5(4)」)
つまり、適用される条文と性質は次のように分かれます。
| 区分 | 適用条文 | 性質 |
|---|
| 院内掲示・Web掲示(届出施設基準・明細書発行・選定療養等) | 医療法施行規則第1条の11ほか | 義務的な情報提供。誘引性なし |
| 自院HP・SNS・動画広告 | 医療法第6条の5、施行規則第1条の9等 | 広告規制(限定列挙+限定解除) |
ただし院内向けの記載をそのままウェブに転載する場合でも、内容が広告規制(虚偽・誇大・体験談等)に抵触しないよう注意は必要です。掲示ナビが整備するのは前者の掲示義務対応であり、後者の自院HP本体・SNSの広告規制対応は別途検討する必要があります。
よくある質問・誤解
Q. ホームページは「広告」ではないと聞いたことがあるのですが?
平成30年(2018年)6月1日施行の改正医療法(平成29年法律第57号)以降、医療機関のウェブサイトも他の広告媒体と同様に規制対象です。それ以前は「医療機関ホームページガイドライン」による自主的取組に委ねられていましたが、美容医療相談件数の増加を受けた消費者委員会建議(平成27年7月7日)を踏まえ、規制対象に加わりました。
Q. 個人アカウントで発信していれば広告規制の対象外では?
「個人アカウントによる情報であっても、医療機関・医師等への特定性と誘引性をいずれも有する場合」は医療広告に該当します(事例(39))。個人名であっても勤務先クリニックが特定でき、自院への誘引意図があれば対象です。
Q. 「体験談」と「症例紹介」はどう違いますか?
事例解説書では、患者本人やその家族の感想・主観を伴うものが「体験談」、医療従事者が客観的に治療経過を提示するものが「症例紹介」と整理されています。症例紹介でも限定解除要件(治療内容・費用・主なリスク・副作用)を満たす必要がある点は同じです。個別事案の判断は、お住まいの都道府県・保健所の医療広告相談窓口にお問い合わせください。
まとめ — 院長が今すぐ手を打つべき3つのこと
- 自院HP・SNSの棚卸し:体験談・口コミ引用・無関係なハッシュタグ・期間限定割引・GLP-1関連の記載を、第6版事例(39)〜(49)に照らして点検
- 限定解除情報の一体化:自由診療メニューについて、SNS1投稿または動画+概要欄の中で「治療内容・費用・期間・回数・リスク・副作用」を完結させる
- 広告と掲示の役割分担を整理:医療広告規制は自院HP・SNS、掲示義務(医療法施行規則)はWeb掲示ページ、と適用条文ごとに担当者・運用フローを分ける
ネットパトロール経由の通報→自治体覚知→指導 というフローは既に標準化されており、自治体が手順書を整備するなかで自院に通知が来るのは時間の問題です。改正から半年以内のいま、自己点検に着手しておくことをおすすめします。
掲示義務のWeb対応についてお困りの方は、お気軽にお問い合わせください。
参考資料