2026年6月改定で変わる選定療養、4つの告示と掲示対応|掲示ナビ ブログ | 掲示ナビ厚生労働大臣の定める評価療養、患者申出療養及び選定療養等の一部を改正する告示
- 長期収載品の「特別の料金」を価格差の1/2へ引き上げ
- 薬局の時間外調剤を選定療養の対象に追加
- アトロピン硫酸塩水和物点眼薬等の「近視進行抑制薬」を選定療養に新設
さらにOTC類似薬77成分・約1,100品目については、「薬剤費の一部を保険外の特別負担として上乗せする」仕組みが令和9年(2027年)3月施行を目指して議論されています。実質「2026年6月」と「2027年3月」の二段階で、掲示・説明体制を見直す必要があります。
論点1:長期収載品の「価格差1/2」と計算例
長期収載品の選定療養は2024年10月1日に始まり、当初は「先発品と後発品の価格差の1/4相当」を特別の料金としていました。今回の告示で、これが1/2に引き上げられます。
計算イメージ
- 価格差 = 100 - 60 = 40円
- 特別の料金(令和8年5月31日まで)= 40 × 1/4 = 10円+消費税
- 特別の料金(令和8年6月1日以降)= 40 × 1/2 = 20円+消費税
同一成分の後発品が複数ある場合は「薬価が一番高い後発品」を基準に計算します。具体的な取り扱いは「請求書記載要領」と「費用計算方法通知」に規定されています。
2026年作業の要点
厚生労働省は対象品目リストを「4月1日~5月31日適用版」と「6月1日以降適用版」の二段で公表しています(薬価改定による品目の出入りと、計算ロジックの変更を同時に反映するためです)。リストは厚生労働省の「長期収載品の選定療養」ページからPDFとExcelでダウンロードできます。
選定療養にしないケース
以下のような場合は、選定療養の対象外として保険適用を維持します。
- 医師が医療上の必要性を認めた場合(先発品でなければ効果が得られない、後発品で副作用やアレルギーが出た等の事情をカルテに記載)
- 後発品の供給状況から、保険薬局で後発品を提供することが困難な場合
事務長が考えるべきは、「医療上必要性」の判断をカルテに記載するフローと、説明・同意取得の手順です。これは長期収載品だけでなく、今回追加される近視抑制薬・将来のOTC類似薬にも同じ考え方で応用できます。
論点2:薬局の時間外調剤が選定療養に追加
これまで「診療時間外の診察」は保険医療機関に関して選定療養に位置づけられていましたが、令和8年告示第116号で「保険医療機関又は保険薬局が表示する診療時間又は開店時間以外の時間における診察等」と表現が拡張され、薬局の時間外調剤も選定療養の対象になりました。
「緊急性」で取り扱いが変わる
- 緊急性あり → 従来どおり「時間外等加算」を算定し、選定療養としての特別の料金は徴収しない
- 緊急性なし → 選定療養として「特別の料金」を説明・同意の上で徴収。このとき時間外等加算は同時算定不可とされています。
「どちらに振るか」はケースバイケースで判断するのではなく、薬局ごとに「緊急性の判断マニュアル」をあらかじめ作っておくのが現実的です。例えば、「処方元医療機関が時間外診療を行っている」「処方箋に『至急』の記載がある」「在宅患者の急変対応」などを「緊急性あり」のリストに並べておくイメージです。
金額設定は「社会的に妥当」な水準で
医科の時間外選定療養は5,500円~11,000円(税込)という例もありますが、薬局の時間外調剤については、厚労省が決めた一律の金額はありません。「社会的に見て妥当適切」という考え方に基づき、薬局ごとに設定・掲示・説明します。
論点3:近視進行抑制薬と「診察・検査は保険」の層構造
2025年4月21日に発売されたアトロピン硫酸塩水和物点眼薬(リジュセア®ミニ点眼液0.025%〔参天製薬、薬事承認2024年12月27日〕等)は、日本で初めて近視進行抑制を効能・効果として薬事承認された点眼薬です。
このアトロピン硫酸塩水和物等が、今回の告示で選定療養に新設されました。2026年1月9日の中医協総会で了承された同改正は、薬剤費は全額自費、診察・検査は保険適用という多層構造をとります。
保険適用される項目
- 診察料
- 屈折検査、視力検査
- 眼鏡処方、眼軸長測定など
これらは「コンタクトレンズ検査の取り扱い」と同レベルとして位置づけられ、関連検査については「年2回限り」「1回につき2種類まで」の算定上限が設けられています。
選定療養となる項目
眼科クリニックで掲示すべきこと
- 「取り扱いがある」ことの告知(院内掲示とWeb掲載)
- 薬剤費を含む費用表(消費税込み総額)
- 保険適用される検査・診察と、選定療養となる薬剤費の切り分け
- 事前の説明・同意取得の手順
自由診療の説明と似た位置づけになるため、医療広告ガイドライン上の表現規制に注意し、「効果保証」「よく効く」などの表現は避けるのが安全です。
論点4:OTC類似薬77成分・約1,100品目は令和9年3月施行を目指す
今回の告示第116号とは別に、2025年12月25日の社会保障審議会・医療保険部会で「OTC類似薬77成分・約1,100品目について、薬剤費の1/4を特別の料金として患者負担とする」仕組みが議論されました。施行は令和9年(2027年)3月診療分からを目指すとされています(具体的な告示・通知は今後発出予定)。
何が起こるのか
- 薬剤費の3/4は従来どおり保険適用の対象、残り1/4を選定療養として全額患者負担
- つまり3割負担者の実質負担は「1/4 + 3/4 × 30% = 47.5%」になる計算
- 対象は「OTC医薬品と成分・投与経路が同一で、1日最大用量が異ならない医療用医薬品」を機械的に選定
- 代表例:ロキソプロフェン、ヘパリン類似物質(ヒルドイド類似品)、フェキソフェナジン(アレグラ類似品)など
除外対象
以下に該当する場合は選定療養の対象外となる方針が示されています。
- 子ども
- がん・難病等の患者
- 低所得者
- 入院患者
- 医師が「医療上必要」と認めた長期使用
事務長がいま仕込んでおくべきこと
6月1日の「告示第116号」対応と並行して、OTC類似薬は「他人事ではない」位置づけで読者・患者への予告を始めるのが現実的です。医療上必要性と除外対象の判断フローを設計しておくと、実際の告示が出たときの事務負荷を抑えられます。
院内掲示とWeb掲載 — 面で見るチェックリスト
2025年6月1日以降、保険医療機関及び保険医療養担当規則(療担規則)第2条の6・第2条の7を根拠に、掲示事項は「院内掲示」と「医療機関が自ら管理するWebサイトへの掲載」の両方が求められるようになりました。選定療養の費用は「保険外負担に関する事項」に含まれ、金額は「消費税込み総額」で明記します。
長期収載品(2026/6/1~)
- 価格差の「1/2」を特別の料金とする旨の説明
- 対象品目リスト(6/1以降適用版)への言及、厚労省ポスターとチラシの掲示・配布
- 「医療上必要性を認めた場合」「後発品の供給が難しい場合」は選定療養とならない旨の説明
薬局の時間外調剤(6/1~)
- 表示している開店時間と、「表示している開店時間以外」の調剤で「特別の料金」をいただく可能性がある旨
- 金額と「緊急やむを得ない事情」に該当する場合は徴収しないことを明記
- 「時間外等加算」とは同時算定しないことを記載すると明確
近視進行抑制薬(眼科、6/1~)
- 「薬剤費は選定療養として自費、診察・検査は保険適用」という層構造
- 薬剤を含む費用・検査の算定上限(年2回、1回につき2種類まで)
- 医療広告ガイドラインに抵触しない表現(「近視を治す」と言い切らない等)
OTC類似薬(2027/3~予告)
- 「令和9年3月から、OTC類似薬の一部について薬剤費の1/4を特別の料金とする予定」という予告バナー
- 対象となりうる代表品目と、除外対象者(子ども、医師の医療上必要性、低所得者等)の概要
説明書面と同意取得 — 長期収載品で培ったテンプレを使い回す
長期収載品の2024年10月スタート時にテンプレを作った医療機関・薬局は、それをそのまま使い回すのが近道です。
不要なスクラッチを避けるために、「テンプレをタイトルと中身だけ差し替えて使い回せる」設計が効きます。
テンプレに入れておきたい項目:
- 選定療養の名称(「長期収載品」「時間外調剤」など)
- 告示・通知の名称と施行日
- 特別の料金の金額・計算方法
- 保険適用される部分と選定療養の部分の切り分け
- 医療上必要性を認めた場合・緊急性がある場合は徴収しないこと
- 同意欄(患者・施設側サイン)
長期収載品の厚労省チラシをベースに、今回追加された3つのテーマごとにフォーマットを揃えると作業が早いです。
スケジュール:今週・今月やること
1~2週間以内にやること(4月末〜5月上旬)
- 告示第116号本体、関連通知、長期収載品の対象品目リスト(6/1以降適用版)をダウンロード
- 医院・薬局の会計システムとレジで「時間外調剤を選定療養として取り扱う手順」を確認
- 6/1を起点とした院内掲示とWeb掲載のドラフトを作成
5月中旬までにやること
- ドラフトを院長・薬剤部長・事務長でレビューし合意を取る
- 説明書面と同意書をテンプレ化し、印刷・備品手配・スタッフ研修の準備を進める
- カルテやレセプトシステム、領収書・明細書への反映をベンダーと詰める
5月下旬、合意とスタッフ説明
- レセプトと領収書の表記を切り替えるタイミングを決める
- 受付・調剤・会計・看護の朝礼で、徴収しないケースの基準を共有
- 6/1以降の判断に迷うケースは「対応者が判断保留・請求保留」として、後で保険者・厚生局に確認するルートを決める
まとめ
2026年6月1日の「告示第116号」は、長期収載品の1/2負担・薬局の時間外調剤・近視進行抑制薬の3つのテーマを同時に動かします。そしてその後ろには、令和9年(2027年)3月のOTC類似薬77成分・約1,100品目も控えています。
4つの改正に共通するのは、「説明・同意・金額掲示」の手順を院内掲示とWeb掲載の両方でやり切ること。今後の事務効率に差をつけるのは、4月末〜5月の今、ちゃんとテンプレを揃えておくかどうかです。
他人事と思わず、今週中に厚労省ポスターとチラシのDLから始めるのが一番近道です。
掲示義務のWeb対応についてお困りの方は、お気軽にお問い合わせください。
参考資料
