長期収載品(先発医薬品)の選定療養と掲示義務をわかりやすく解説

長期収載品の選定療養とは
令和6年10月から、後発医薬品(ジェネリック)があるにもかかわらず、医療上の必要性がなく患者の希望で先発医薬品(長期収載品)を選んだ場合、後発品との価格差の一部が患者の自己負担となる制度が始まりました。
これは「選定療養」という仕組みで、保険外併用療養費の一つです。差額ベッド代や予約診察料と同じカテゴリに位置づけられています。
この制度の導入に伴い、医療機関・薬局には院内掲示とウェブサイトへの掲載が求められています。
制度の詳細は厚生労働省の長期収載品の選定療養についてで確認できます。
対象となる医薬品と患者負担の仕組み
対象医薬品
すべての先発医薬品が対象ではありません。厚生労働省が指定した長期収載品リストに掲載されている医薬品が対象です。対象となる基本的な条件は以下の通りです。
- 後発医薬品の上市後5年以上経過していること(置換率1%未満のものは除く)
- または、後発医薬品への置換率が50%以上に達していること
- 先発品の薬価が、後発品の最高薬価を上回っていること
2024年10月の制度開始時は約1,095品目が対象でしたが、その後の薬価改定により対象品目数は変動しています。2025年4月の薬価改定で1,006品目、2026年4月の薬価改定で776品目に更新されました。品目数が減った主な理由は、薬価改定により一部の先発品の価格が引き下げられ、後発品の薬価を下回った(価格が逆転した)ためです。
対象医薬品のリストは薬価改定のたびに見直されます。最新のリストは以下で確認できます。

患者負担の計算方法
患者が長期収載品を希望した場合の追加負担は、以下のように計算されます。
追加負担 = (先発品の薬価 − 後発品の最高薬価)× 1/4
例えば、先発品が100円、後発品の最高薬価が60円の場合:
- 価格差: 100円 − 60円 = 40円
- 追加負担: 40円 × 1/4 = 10円(これに加えて通常の自己負担もかかる)
追加負担が発生しないケース
以下の場合は、先発品を処方しても追加負担は発生しません。
- 医療上の必要性がある場合(副作用歴、アレルギー等)
- 後発品の供給が不安定な場合
- 医師が処方箋に変更不可と記載した場合(医療上の理由がある場合)
- 対象リストに掲載されていない医薬品の場合
掲示が必要な具体的な内容
医療機関・薬局は、この制度について患者に情報提供するため、以下の内容を掲示する必要があります。
掲示すべき事項
- 長期収載品を選択した場合に特別の料金が発生すること
- 後発医薬品への変更が可能であること
- 医療上の必要性がある場合は追加負担が発生しないこと
掲示の例文
長期収載品(先発医薬品)の選定療養について
後発医薬品(ジェネリック医薬品)が存在する先発医薬品について、医療上の必要性がなく患者様のご希望により先発医薬品を選択される場合は、後発医薬品との価格差の1/2を選定療養費としてご負担いただきます。
後発医薬品への変更をご希望の方は、医師または薬剤師にご相談ください。
医療機関と薬局それぞれの掲示対応
医療機関(病院・クリニック)と薬局では、掲示の位置づけが少し異なります。
| 医療機関 | 薬局 | |
|---|---|---|
| 掲示の対象 | 処方時に患者へ説明 | 調剤時に患者へ説明 |
| 掲示場所 | 外来の見やすい場所 | 薬局内の見やすい場所 |
| 説明のタイミング | 処方箋交付時 | 調剤・服薬指導時 |
| ウェブサイト掲載 | 必要 | 必要 |
医療機関での対応ポイント
- 処方箋に「変更不可」欄がある場合は、医療上の必要性を記載する
- 患者から「先発品がいい」と言われた場合に、追加負担の説明ができる体制を整える
- 受付や待合室に掲示物を設置する
薬局での対応ポイント
- 調剤時に患者へ制度の説明を行う
- 先発品を調剤する場合、追加負担額を明示する
- 薬局内に掲示物を設置する
ウェブサイトへの掲載義務
長期収載品の選定療養に関する掲示は、保険外併用療養費の一部として、ウェブサイトにも掲載する義務があります。
経過措置
ウェブサイトへの掲載について、令和7年5月31日までの経過措置が設けられていましたが、この期限はすでに終了しています(※最新の状況は厚生局にご確認ください)。
掲載のポイント
- 院内掲示と同じ内容をウェブサイトにも掲載する
- 対象医薬品のリストまでは掲載不要(厚労省のページへリンクすれば十分)
- 自院のホームページがない場合は掲載義務が免除される
よくある質問
Q. すべてのクリニックが対応する必要がありますか?
はい。処方を行うすべての保険医療機関が対象です。長期収載品を一切処方しないクリニックであっても、制度の掲示自体は行っておくことが望ましいです。
Q. 対象医薬品のリストはどこで確認できますか?
厚生労働省のウェブサイトで公開されています。リストは定期的に更新されるため、最新のものを確認してください。
Q. 患者が先発品を希望した場合、必ず追加負担が発生しますか?
いいえ。医師が医療上の必要性を認めた場合(副作用歴、アレルギー等)は追加負担は発生しません。また、後発品の供給が不安定な場合も同様です。
Q. 歯科でも対応が必要ですか?
歯科で処方する医薬品に長期収載品が含まれる場合は対応が必要です。歯科用の処方薬は対象品目が少ないですが、確認しておきましょう。
まとめ
長期収載品の選定療養は、2024年10月から始まった比較的新しい制度です。以下のポイントを確認しておきましょう。
- 患者希望で先発品を選んだ場合、後発品との価格差の1/2が追加負担になる(令和8年6月〜。制度開始時は1/4)
- 医療上の必要性がある場合は追加負担は発生しない
- 院内掲示とウェブサイト掲載が必要
- 対象医薬品リストは定期的に更新される
対象品目が多いため、すべてを把握するのは現実的ではありませんが、制度の概要と掲示義務については確実に対応しておきましょう。
掲示義務のWeb対応についてお困りの方は、お気軽にお問い合わせください。