まず押さえる: 「基本5項目」と「算定要件のWeb掲示」は別系統
Web掲示の話には2つの異なる根拠が走っています。これを切り分けないと整理できません。
系統1: 保医発0327第6号の「基本5項目」
療担規則第2条の6と保医発0327第6号(令和8年3月27日)が根拠。すべての保険医療機関に共通で、ウェブサイトを持つ施設は以下5項目を載せる必要があります。
- 保険医療機関である旨
- 入院基本料に関する事項
- 厚生局へ届け出た施設基準
- 明細書の発行状況に関する事項
- 保険外負担に関する事項
違反は療担規則違反として個別指導・適時調査の対象です。
系統2: 個別加算ごとの「算定要件としてのWeb掲示」
基本診療料施設基準留意事項(保医発0305第7号)と特掲診療料施設基準留意事項(保医発0305第8号)の中で、加算ごとに「掲示事項について、原則としてウェブサイトに掲載していること」と明記されたもの。違反するとその加算が算定不可になります。
| 観点 | 基本5項目 | 算定要件のWeb掲示 |
|---|
| 根拠 | 保医発0327第6号 | 各加算の施設基準告示・通知 |
| 対象 | 全保険医療機関 | 該当加算を算定する施設だけ |
| 違反時の効果 | 療担規則違反 | その加算が算定不可 |
いずれも「自院ホームページを持たない場合は除く」例外規定があります。HPを持っている以上、載っていないと算定不可に直結します(基本診療料施設基準留意事項(保医発0305第7号 PDF))。
医科外来: Web掲示が算定要件の主要加算

医科外来だけで12加算がWeb掲示を算定要件としています。1点の明細書発行体制等加算でも毎再診で算定するため、Web漏れがあると数十万円規模の自主返還になる場合があります。
2026年6月の最大論点: 電子的診療情報連携体制整備加算
既存の「医療DX推進体制整備加算」と「医療情報取得加算」は2026年5月31日で廃止され、2026年6月1日から新加算へ統合再編されます。
外来分は月1回の算定で、初診料への加算と再診料・外来診療料への加算(再診時2点)の同月併算定はできません(疑義解釈その4 PDF)。
加算1の電子処方箋要件は「医療機関等向け総合ポータルサイトで運用開始日が登録され、厚労省ウェブサイトに対応施設として公表されている状態」を指します(疑義解釈その4 PDF)。
本加算でも算定要件として「明細書無料発行体制/医療DX推進体制/質の高い診療実施」のWeb掲載が必須。6月から算定する場合、新規届出が必要で、疑義解釈その3(4/20)では2026年5月18日までの届出が推奨されています。
医科入院: 入院基本料と入院加算のWeb掲示
入院系は加算自体は少ないですが、点数のインパクトが大きく、適時調査での指摘も集中する領域です。

電子的診療情報連携体制整備加算の入院加算1(160点)は、サイバーセキュリティ・データバックアップ・BCP策定・年1回以上の訓練という「非常時における対応につき十分な体制」が要件として課されます。
歯科: 環境体制加算の再編とWeb掲示
歯科は2024年改定で「歯科外来診療環境体制加算1」が「歯科外来診療医療安全対策加算1」と「歯科外来診療感染対策加算1」に再編されました。
改定以前に外来環1・か強診を届出済みの医療機関は2025年5月31日までに新基準で再届出が必要でした。届出後のWeb更新が抜けている施設は要注意です。
薬局: 地域支援体制加算ほかのWeb掲示

薬局は地域支援体制加算だけで複数の実績指標と体制説明が要件になっており、HP上でどこまで公表するかの設計が必要です。
経過措置中もWeb掲示要件は適用される
「機能強化加算のBCPは2027年5月まで経過措置だから、Web掲示も後回しでいい」という勘違いに注意してください。
- 機能強化加算(80点・初診): 2026年改定でBCP策定が施設基準に追加。令和8年3月31日時点で届出済の機関は令和9年5月31日までBCP要件は満たしているとみなされる(新規届出の場合は経過措置の対象外で、届出時点でBCP策定済みである必要あり)。ただし「かかりつけ医機能として行う対応の内容」のWeb掲示は経過措置の対象外で、通常通り適用
- 在宅療養支援診療所・病院: 同じく令和9年5月31日まで一部要件の経過措置あり。Web掲示要件は経過措置の対象外
経過措置はBCP策定・データ提出など一部要件のみ。Web掲示は経過措置とは独立して適用されます。
適時調査でよく指摘される「掲示と届出の不一致」

各厚生局公開の「適時調査における主な指摘事項」では、以下のパターンが毎年上位に並びます。
- 看護要員配置: 届出と実際の配置(または院内掲示の数値)が不一致
- 施設基準: 届け出た事項の掲示が誤っている/更新されていない
- 明細書発行: 「無料で発行している旨」の掲示が見当たらない
- 特別療養環境室(差額ベッド): 室料・設備内容が実態と異なる
- 保険外負担: 文書料・予防接種費用等の徴収項目について掲示漏れ/金額不一致
- 診療時間: 院内掲示と届出書の不一致
公開資料の文言は「(看護要員の配置)について、届出と異なる内容が掲示されているので、改めること」「明細書の発行体制について、掲示が確認できないので速やかに対応すること」といった形式が多く見られます(近畿厚生局、東北厚生局 令和5年度 適時調査における主な指摘事項 PDF)。
2025年6月の経過措置終了以降、ウェブサイト掲載と届出内容の不一致も新たな指摘対象として運用されています。
自院HPの棚卸し3ステップ
ステップ1: 算定加算の一覧化
直近3ヶ月のレセプトから、自院・自薬局が実際に算定している加算をすべてリストアップします。レセコンの加算一覧出力機能で10分程度で出せます。月初1回など算定頻度が低いものも漏らさないことが重要です。
ステップ2: Web掲示要件のマッチング
リストアップした加算を本記事の表と突き合わせ、「Web掲示が要件になっているものだけ」を抽出。各加算ごとに「Webに何を載せる必要があるか」を一覧化してください。
ステップ3: 自院HPとの突き合わせ
抽出した「Web掲載必須項目」と現在の自院HPを突き合わせます。
- ✅ 載っている → そのまま運用
- ⚠️ 載っているが内容が古い/不一致 → 即時更新
- ❌ 載っていない → 算定停止か即日掲載かの判断
特に⚠️の「不一致」は載せていないより指摘リスクが高いことに注意してください。届出書とWeb掲載内容の数値が違う場合、適時調査で「届出と異なる」と直接指摘されます。
よくある質問・間違い
Q1. 自院ホームページがなければWeb掲示は不要?
A. 基本5項目・算定要件いずれも「自院ホームページがない場合は対象外」と明記されています。ただしHPを持っているのに「ない」と扱うことはできません。
Q2. 院内掲示とWeb掲示は同じ内容でよい?
A. 内容としては同じで構いません。ただし更新タイミングのズレが指摘リスクになるため、「院内掲示を更新したら同日にWebも更新する」運用フローを社内で決めておくことが重要です。
Q3. 1点の明細書発行体制等加算なら、Web漏れがあっても大したことない?
A. 月の再診回数が多い施設では年間で数百〜数千件算定しています。漏れが指摘された場合、過去にさかのぼって自主返還を求められる可能性があります。点数の小さい加算ほど件数が多く、自主返還額が大きくなる傾向があります。
Q4. PDFで貼っておけば要件を満たす?
A. PDFでも掲載自体は認められますが、検索や閲覧のしやすさを考えるとHTMLテキストでの掲載が望ましいとされます。個別事案の判断が必要な箇所は厚生局にお問い合わせください。
まとめ
- Web掲示には「保医発0327第6号の基本5項目」と「個別加算ごとの算定要件」の2系統がある
- 後者は加算ごとの違反でその加算が算定不可に直結する
- 医科外来12加算/医科入院5項目/歯科9項目/薬局6加算が主な対象
- 2026年6月1日から電子的診療情報連携体制整備加算が新設され、Web掲示要件はさらに拡大
- 棚卸しは「算定加算の一覧化 → Web要件マッチング → 自院HP突き合わせ」の3ステップで
掲示義務のWeb対応についてお困りの方は、お気軽にお問い合わせください。
参考資料