令和8年度診療報酬改定をわかりやすく解説|改定率・主要変更点・対応スケジュール完全ガイド

「また改定か……今回は何から手をつければいいのか」——そう感じている院長先生・事務長の方は少なくないはずです。令和8年度改定は、賃上げ・物価高対応・医療DXが重なる 近年でも特に影響範囲の広い改定 です。届出の組み替え、掲示物の差し替え、職員への説明など、やることは多いのに現場は日々の診療で手一杯。しかも施行は2026年6月1日、準備期間は実質2か月しかありません。
本記事は、「まず何を押さえれば乗り切れるのか」を最短で掴んでいただく ための全体ガイドです。厚労省の告示・通知を読み込まなくても、自院に関係する論点が一目でわかるように整理しました。
まず結論:令和8年度改定の要点5つ
令和8年度(2026年度)の診療報酬改定は、「物価高騰と賃上げへの対応」「医療DXの加速」「地域包括ケアへの転換」 を大きな軸とする大型改定です。まずは全体像を一目で掴んでいただくために、要点を5つに絞って表にまとめました。
| # | 要点 | ひとことで言うと |
|---|---|---|
| 1 | 施行日が6月1日 | 例年の4月施行から変更。4〜5月で準備を終える必要がある |
| 2 | 改定率は本体+3.09% | 過去最大級。うち賃上げ1.70%、物価対応0.76% |
| 3 | 医療DX加算の大再編 | 「医療DX推進体制整備加算」「医療情報取得加算」が廃止され、電子的診療情報連携体制整備加算 に統合 |
| 4 | ベースアップ評価料が全職員対象に | 医師・歯科医師も含め、施設に勤務する全員が対象 |
| 5 | 物価対応料の新設 | 初診2点・再診2点・訪問3点(令和9年度に倍増予定) |
以下、章ごとに詳しく解説していきます。忙しい方は「タイプ別チェックリスト」の章だけでもご覧ください。
改定スケジュール:なぜ今回は「6月施行」なのか
令和8年度改定の施行日は 2026年6月1日 です。令和6年度改定から、従来の4月施行ではなく6月施行に整理されました。
なぜ6月になったのか
改定内容が毎年複雑化するなか、2月の答申から4月施行までの約6週間では現場の準備が間に合わないことが問題視されてきました。6月施行にすることで、告示から施行まで約3か月の準備期間を確保できます。

逆算スケジュール
| 時期 | やること |
|---|---|
| 2026年2月13日 | 中医協から厚生労働大臣へ答申 |
| 2026年3月5日 | 告示(令和8年厚生労働省告示第69〜71号) |
| 3〜4月 | 説明会・疑義解釈Q&Aの確認 |
| 4〜5月 | 施設基準の棚卸し、届出書類の準備 |
| 5月中旬 | 各地方厚生局の「6月算定のための必着日」までに届出提出 |
| 2026年6月1日 | 施行 |
ポイントは「6月1日から算定したい項目は、5月上旬〜中旬の必着日までに届出が完了している必要がある」 ということ。ギリギリに動くと受理漏れで6月算定を逃します。
改定率の内訳を数字で理解する
まず押さえておきたい重要ポイント:今回公表された本体「+3.09%」は令和8・9年度の2年度平均値 です。単年度では次のとおり段階的に引き上げられます。
| 年度 | 本体改定率 |
|---|---|
| 令和8年度 | +2.41% |
| 令和9年度 | +3.77% |
| 2年度平均 | +3.09% |
物価対応料やベースアップ評価料が「令和9年度に倍増」と説明されるのはこのためです。実際の収入インパクトは2年かけて段階的に増えていきます。
本体+3.09%の内訳(2年度平均)
| 区分 | 改定率 |
|---|---|
| 賃上げ対応 | +1.70% |
| 物価対応 | +0.76% |
| 食費・光熱水費対応 | +0.09% |
| 緊急対応(経営悪化対応) | +0.44% |
| その他改定 | +0.25% |
| 効率化(後発品・リフィル等) | ▲0.15% |
| 合計 | +3.09% |
本体改定の過半数(+1.70%)が賃上げ対応 に充てられているのが最大の特徴です。加えて緊急対応分+0.44%が令和6年度改定以降の経営環境悪化への手当として上乗せされており(病院+0.40 / 医科診療所+0.02 / 歯科+0.01 / 薬局+0.01)、物価高騰と人材確保難に対する国の強いメッセージと言えます。なお、薬価・材料はマイナス改定です。

基本方針の4つの柱
厚生労働省は改定の基本方針として、次の4つの視点を示しています。
- 物価や賃金、人手不足等の医療機関を取り巻く環境変化への対応
- 2040年頃を見据えた医療機関の機能分化・連携と地域包括ケアシステムの推進
- 安心・安全で質の高い医療の推進(医療DX・医療の質向上)
- 効率化・適正化を通じた医療保険制度の安定性・持続可能性の向上
以下で解説する主要変更は、いずれかの柱に紐づいています。
【主要変更①】賃上げ対応(ベースアップ評価料の拡大)
令和6年度改定で導入された「ベースアップ評価料」が、令和8年度改定で大きく拡充されました。
何が変わったか
- 対象が全職員に拡大:従来は「医師・歯科医師を除く医療従事者」が対象でしたが、令和8年度改定では 施設に勤務する全職員 が対象に。
- 点数が大幅に引き上げ:外来・在宅のベースアップ評価料は、現行の2〜3倍程度の点数に増点される見込み。
医療機関が行うべきこと
- 現行のベースアップ評価料を届け出ているか確認
- 令和8年6月からの新しい区分・点数での届出準備
- 賃金改善計画書の見直し(全職員ベースへの変更)
【主要変更②】物価高騰対応料の新設
物価高騰に対する診療報酬上の対応として、「物価対応料」 が新設されました。
| 区分 | 点数 |
|---|---|
| 外来・在宅における物価対応料(初診) | 2点 |
| 外来・在宅における物価対応料(再診) | 2点 |
| 在宅医療における物価対応料(訪問) | 3点 |
この点数は 令和9年度に倍増する予定 とされています。外来中心のクリニックにとっては、1日の患者数が50人であれば月間約20万円の増収見込みとなる計算です。
【主要変更③】医療DX関連加算の大再編
今回の改定で最も構造変更が大きいのが 医療DX関連加算の再編 です。
廃止される加算
- 医療DX推進体制整備加算
- 医療情報取得加算

新設される加算:電子的診療情報連携体制整備加算
| 区分 | 点数(初診) | 主な要件 |
|---|---|---|
| 加算1 | 15点 | 電子処方箋発行体制+電子カルテ情報共有サービスの活用実績+マイナ保険証利用実績+Webサイト公表 |
| 加算2 | 9点 | 電子処方箋発行体制+マイナ保険証利用+Webサイト公表 |
| 加算3 | 4点 | オンライン資格確認+Webサイト公表 |
再診料の加算は4点から2点に減点 されます。初診加算の最高区分は12点→15点に引き上げられましたが、再診では減額方向となるため、外来の多くを再診が占めるクリニックでは収入への影響を試算しておく必要があります。
特に注意すべきポイント
- 従来は「体制を整えること」が評価されましたが、新加算では マイナ保険証の利用率実績 が施設基準に組み込まれています。
- Webサイトでの情報公表 が要件として明記されました。医療機関のホームページに、届出情報や掲示事項を適切に掲載していることが必須になります。
【主要変更④】外来医療の見直し
生活習慣病管理料の拡充
生活習慣病管理料(Ⅱ)で、これまで「包括範囲」外の医学管理が算定制限を受けていた問題が改善されます。がん・認知症・救急対応などの医学管理は、生活習慣病管理料とは別に算定可能 となりました。
実績評価加算の新設
ガイドラインに沿った適切な生活習慣病管理を行い、外来診療データを提出している医療機関を評価する 3段階の実績加算 が新設されました。
| 区分 | 加算点数 |
|---|---|
| 実績評価加算1 | 30点 |
| 実績評価加算2 | 20点 |
| 実績評価加算3 | 10点 |
脂質異常症・高血圧症・糖尿病それぞれで算定可能です。
かかりつけ医機能報告制度との連動
2025年4月に始まった 「かかりつけ医機能報告制度」 を反映し、地域包括診療料・加算の対象患者や要件が見直されました。機能強化加算の要件も厳格化されています。
糖尿病連携加算の新設
糖尿病患者の重症化予防のため、眼科・歯科との連携を評価する加算が新設されました。
- 眼科連携強化加算:60点(年1回)
- 歯科医療機関連携強化加算:60点(年1回)
【主要変更⑤】入院料の大再編
令和8年度改定は、入院料体系に 戦後最大級の再編 をもたらします。

急性期一般入院料の再編
- 急性期病院A・B が新設され、高度急性期機能を担う病院が区分されます。
- 急性期一般入院料1:1,688点 → 1,874点 に引き上げ。
包括期入院料の新設
従来の「地域一般病棟」「地域包括ケア病棟」を再編し、「包括期入院料」 という新区分が登場。高齢者の急性期医療(誤嚥性肺炎・尿路感染症など)から退院支援までを一体的に評価する方向に変わります。
地域包括医療病棟の役割強化
地域包括医療病棟は、急性期治療後の継続医療・早期リハ・栄養管理・退院支援を総合的に提供する病棟として、より明確に位置づけられました。
回復期リハビリテーション病棟
- リハビリテーション実績指数の 算出方法と除外対象患者の基準を見直し
- より質の高いアウトカム評価を推進する方向
【主要変更⑥】在宅医療・訪問看護
在宅医療
- 在宅緩和ケア充実診療所・病院加算 → 在宅医療充実体制加算 に改編
- 訪問診療薬剤師同時指導料(300点) が新設。医師と薬剤師が同時に患家を訪問し服薬指導を行う場合を評価
- 在宅時医学総合管理料(月2回以上訪問区分)に「重症患者割合20%以上」の要件が追加
訪問看護
- 同一建物居住者への訪問看護に関する区分を細分化
- 訪問看護基本療養費(Ⅱ)で同一日訪問人数の区分を「10〜19人」「20〜49人」「50人以上」に新設
- 機能強化型訪問看護管理療養費4(9,030円) を新設(精神科訪問看護・24時間対応・関係機関連携)
全体として、訪問系サービスは 「量から質へ」 という方向性が明確に示されています。
歯科改定のポイント
歯科は令和8・9年度の2年度平均で +3.09%(令和8年度+2.41%、令和9年度+3.77%)となります。
主な変更点
- 歯科初診料:267点 → 272点
- 歯科再診料:58点 → 59点
- 口腔機能管理料 の対象範囲拡大(口腔機能発達不全症・口腔機能低下症のカバー拡大)
- 歯科医療機関連携強化加算 新設(糖尿病患者の歯周病管理を医科と連携)
- 光学印象:100点 → 150点、CAD/CAM冠にも対象拡大
- 歯科技工士連携加算の評価範囲拡大
医科歯科連携の強化
糖尿病診療における歯科連携を明確に評価する枠組みが設けられ、医科側にも歯科連携加算が新設されました。かかりつけ歯科医機能の評価が全体的に強化されています。
調剤報酬・薬価改定のポイント
調剤報酬(+0.08%)
- 調剤ベースアップ評価料(4点) および 調剤物価対応料(1点/四半期) が新設
- 後発医薬品調剤体制加算が廃止 され、地域支援・医薬品供給体制対応加算 に再編
- 同一医療モール内の複数クリニックは「1医療機関」扱いとなり、集中率計算が厳格化
- 特定医療機関からの処方箋が85%を超え、かつ500m以内に他薬局がある都市部の門前薬局には 15点減点 が適用
- 訪問薬剤師管理医師同時指導料(150点)・残薬調整(230点) を新設
薬価改定
- 長期収載品(先発品) の薬価は、段階的に後発品薬価の 75%水準まで 引き下げ
- 長期収載品を患者が希望する場合の 選定療養 が拡大。患者は後発品最高価格との差額の 1/4 を自己負担
施設基準届出の電子申請が324項目に拡大
2026年1月26日から、施設基準届出の電子申請対象が 113項目から324項目に大幅拡大 されました。
変わったポイント
- 過去に受理済みの届出情報を コピーして再利用 できる機能が追加
- 添付書類のアップロード対応が拡充
- 進捗状況がオンラインで確認可能に
令和8年6月の改定届出では、電子申請の活用がほぼ必須 になります。地方厚生局の窓口混雑を避けるためにも、早めに電子申請アカウントの準備を済ませておきましょう。
タイプ別|改定対応チェックリスト
ご自身の施設タイプに合わせて、6月までにやるべきことを確認してください。
医科クリニック
- 電子的診療情報連携体制整備加算の区分(1/2/3)を選択
- マイナ保険証利用率の現状確認と引き上げ施策
- 生活習慣病管理料ⅠⅡの継続判断と実績評価加算の届出検討
- ベースアップ評価料の全職員対象化への書類更新
- 物価対応料の算定準備
- 施設基準届出書の電子申請での提出(5月中旬必着)
- Webサイトへの掲示事項の更新
病院
- 急性期病院A/B・地域包括医療病棟・包括期入院料のどこで運用するか方針決定
- 回復期リハ実績指数の計算方法見直しへの対応
- ベースアップ評価料の全職員対象化に伴う賃金改善計画書の改訂
- 入院基本料の新点数での算定準備
- Webサイトへの掲示事項の更新
歯科
- 歯科初再診料改定への対応(受付システム・明細書の更新)
- 歯科医療機関連携強化加算の届出検討
- 口腔機能管理料の対象拡大への対応
- 光学印象・CAD/CAM冠の新点数対応
- Webサイトへの掲示事項の更新
薬局
- 地域支援・医薬品供給体制対応加算の届出
- 集中率計算の見直し(医療モール内クリニックの再確認)
- 長期収載品の選定療養に関する患者説明体制の整備
- 訪問薬剤師の体制強化(同時指導料・残薬調整)
- Webサイトへの掲示事項の更新
見落としがちな「掲示事項」の更新義務
改定対応で多くの医療機関が後回しにしがちなのが、「厚生労働大臣が定める掲示事項」のウェブサイト掲載 です。
なぜ重要か
2024年10月から、医療機関がホームページを持っている場合、掲示事項を原則としてウェブサイトに掲載することが義務化 されました。経過措置はすでに終了しています。
施設基準の届出内容が変われば、掲示すべき内容も当然変わります。6月の改定で届出を更新したら、同じタイミングでホームページの掲示事項も更新する必要がある のです。
未対応のリスク
- 適時調査で指摘を受ける
- 届出事項と実際の掲示内容に齟齬があれば算定取消の可能性
- 新設される「電子的診療情報連携体制整備加算」では、Webサイト公表が施設基準そのものに組み込まれています
掲示事項の更新に手間がかかる理由
- 届出内容に合わせて文言を整える必要がある
- 医科・歯科・薬局それぞれに掲示すべき項目が異なる
- 保険外併用療養費(差額ベッド・選定療養など)の金額変更も反映
- 既存のホームページ構造に組み込むのが技術的に難しい
施設名で検索するだけで、あなたの医療機関に必要な掲示義務の一覧と、実際の掲示ページのデモをご覧いただけます。
令和8年度改定に関するFAQ
Q1. 改定はいつから施行されますか? A. 2026年6月1日です。従来の4月施行から6月施行に変更されています。
Q2. 医療DX推進体制整備加算はどうなりましたか? A. 医療情報取得加算と統合されて廃止され、新たに「電子的診療情報連携体制整備加算」(加算1〜3)が新設されました。マイナ保険証の利用実績が施設基準に組み込まれ、Webサイトでの情報公表も必須要件です。
Q3. 旧加算を取っていた場合、何を届け直せばいいですか? A. 新しい「電子的診療情報連携体制整備加算」として、希望する区分(1/2/3)の要件に応じて再度届出が必要です。従前の届出を流用できる項目もあるため、電子申請のコピー機能を活用してください。
Q4. 長期収載品の選定療養とは何ですか? A. 後発品がある先発品(長期収載品)を患者が希望した場合、後発品最高価格との差額の1/4を患者が自己負担する仕組みです。薬局・医療機関は患者への説明が必要になります。
Q5. 届出のスケジュールはどう組めばいいですか? A. 6月1日算定開始を目指すなら、各地方厚生局の「6月算定のための必着日」(多くは5月中旬)までに届出が受理されている必要があります。4月中に棚卸しを済ませ、5月上旬には書類を提出するのが安全です。
Q6. 掲示物やホームページは何を更新すればいいですか? A. 届け出た施設基準の内容、算定する加算の一覧、保険外併用療養費(差額ベッド・選定療養等)、明細書発行体制、その他厚生労働大臣が定める掲示事項を、最新の届出内容に合わせて更新する必要があります。
まとめ
令和8年度診療報酬改定のポイントを最後に整理します。
- 三本柱は「賃上げ」「物価対応」「医療DX」
- 6月施行のため、4〜5月で届出準備を完了させる
- 最大の再編は医療DX関連加算。旧加算廃止・新加算への届出移行が必須
- ベースアップ評価料は全職員対象 に拡大。賃金改善計画書の見直しを
- 入院・在宅・訪問看護は「量から質へ」の方向性がより明確に
- 施設基準届出の電子申請が324項目に拡大。早めにアカウント準備を
- 掲示事項のウェブサイト更新を忘れずに。適時調査リスクに直結
改定対応は時期が限られています。6月1日の施行に向けて、できるところから順に着手していきましょう。
掲示事項のウェブ更新、後回しになっていませんか
本文でも触れたとおり、今回の改定では 掲示事項のウェブサイト掲載 が引き続き求められます。届出や加算の対応に追われる中、「ウェブの更新は後で」となりがちですが、適時調査で真っ先に確認される項目 のひとつです。
自院のサイトを毎回更新するのが手間——という先生方のために、掲示義務ページを自動生成・自動更新できるサービス「掲示ナビ」 をご用意しています。既存のホームページはそのまま、掲示ページだけを月額2,200円で別途運用できる仕組みです。
下のボックスからご自身の医療機関名を検索すると、自院の届出情報をもとにした掲示ページのデモ をすぐにご確認いただけます。
施設名で検索するだけで、あなたの医療機関に必要な掲示義務の一覧と、実際の掲示ページのデモをご覧いただけます。