クリニックのDX対応チェックリスト|何から始める?優先度別に解説

「医療DXで何をやればいいのかわからない」「オンライン資格確認は入れたが、その先は?」という声をよく聞きます。
医療DXは対応項目が多く、すべてを一度に進めるのは現実的ではありません。大切なのは優先度を整理して、段階的に対応することです。
この記事では、クリニックが対応すべき医療DXの項目を「義務」「加算に直結」「今後」の3段階に分けて、チェックリスト形式で整理します。

対応必須(義務化済み)
まず最優先で確認すべき項目です。すでに義務化されているため、未対応の場合は早急に対応が必要です。
オンライン資格確認
2023年4月から、保険医療機関・薬局への導入が原則義務化されています。マイナンバーカードや資格確認書を使って、患者の保険資格をリアルタイムに確認する仕組みです。
- オンライン資格確認等システムを導入済みか
- 顔認証付きカードリーダーが正常に稼働しているか
- スタッフが操作方法(顔認証→暗証番号→目視確認の切り替え)を把握しているか
エラーが発生した場合の対処法は、

オンライン資格確認でエラーが出たときの対処法|原因別の解決策まとめ
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掲示義務のウェブサイト掲載
令和6年度改定により、院内掲示事項のウェブサイト掲載が義務化されました。経過措置は2025年5月31日で終了しています。
- 届出施設基準の一覧をウェブサイトに掲載しているか
- 明細書の発行に関する掲示をウェブサイトに掲載しているか
- 保険外負担に関する掲示をウェブサイトに掲載しているか
- トップページからアクセスしやすい場所にリンクを配置しているか
具体的な掲載方法は

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サイバーセキュリティ対策
2023年4月の医療法施行規則改正により、医療機関のサイバーセキュリティ対策が義務化されました。厚生労働省は年度ごとにチェックリストを公表しています。
- 管理者アカウントのパスワードを適切に設定しているか
- 不要なUSBポートの接続を制限しているか
- バックアップを定期的に取得しているか
- サイバーセキュリティ対策のチェックリスト(厚生労働省)を確認したか
対応推奨(加算に直結)
義務ではありませんが、対応することで診療報酬の加算を算定できます。特にマイナ保険証の利用率は加算の区分に直接影響するため、積極的に取り組むべきです。
マイナ保険証の利用促進
電子的診療情報連携体制整備加算(2026年6月〜)の算定には、マイナ保険証の利用率30%以上が共通要件です。
- マイナ保険証の利用率を把握しているか
- 受付でマイナ保険証の利用を案内しているか
- 待合室にマイナ保険証利用のポスターを掲示しているか
- カードリーダーの使い方を患者にわかりやすく案内しているか
電子処方箋の導入
電子処方箋は任意ですが、2026年6月からの新加算では電子処方箋の導入が算定区分に影響します。
- 電子処方箋の導入を検討・実施しているか
- レセコン・電子カルテが電子処方箋に対応しているか確認したか
- ベンダーに導入スケジュールを確認したか
※ 2025年2月時点で、医科診療所の導入率は約12%にとどまっています。補助金制度もあるため、早めの検討をおすすめします。
電子カルテ情報共有サービス
医療機関間で電子カルテ情報を共有するためのサービスです。2026年度冬頃の本格運用を目指してモデル事業が進行中です。
- 電子カルテ情報共有サービスの概要を把握しているか
- 利用中の電子カルテが標準規格に対応しているか確認したか
詳しくは

電子カルテ情報共有サービスとは?仕組み・参加方法・掲示要件を解説
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DX関連の院内掲示・ウェブサイト掲示
医療DXに取り組んでいることを院内に掲示し、ウェブサイトにも掲載する必要があります。
- オンライン資格確認等システムで取得した診療情報を活用している旨を掲示しているか
- マイナ保険証を促進し、医療DXに取り組んでいる旨を掲示しているか
- 上記をウェブサイトにも掲載しているか
今後の対応(2026年6月〜)
2026年6月の令和8年度改定で新設・変更される項目です。施行日までに準備を進めてください。
電子的診療情報連携体制整備加算への移行
従来の医療DX推進体制整備加算と医療情報取得加算が2026年6月に廃止され、電子的診療情報連携体制整備加算に統合されます。
| 区分 | 初診時 | 再診時 | 要件 |
|---|---|---|---|
| 加算1 | 15点 | 2点 | 共通要件+電子処方箋+電子カルテ情報共有 |
| 加算2 | 9点 | 2点 | 共通要件+いずれか一方 |
| 加算3 | 4点 | 2点 | 共通要件のみ |
- 自院がどの区分を算定できるか確認したか
- 必要な届出を準備しているか
- レセコン・電子カルテのアップデートスケジュールを確認したか
詳しくは

医療DX推進体制整備加算は2026年6月に廃止へ|新加算の掲示要件を解説
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マイナ保険証利用率の基準引き上げ
マイナ保険証の利用率基準は段階的に引き上げられています。医療DX推進体制整備加算では、加算の区分や電子処方箋の導入状況によって基準が異なります(最も低い区分で15%〜、最も高い区分で45%〜)。
2026年6月以降の電子的診療情報連携体制整備加算では、30%以上が全区分の共通要件となります。今後の見直しで基準が引き上げられる可能性もあるため、できるだけ高い利用率を目指しておくことが重要です。
チェックリスト一覧
すべての項目を一覧で確認できます。
| 項目 | 優先度 | チェック |
|---|---|---|
| オンライン資格確認の導入・稼働 | 必須 | □ |
| 掲示義務のウェブサイト掲載 | 必須 | □ |
| サイバーセキュリティ対策 | 必須 | □ |
| マイナ保険証の利用促進 | 推奨 | □ |
| 電子処方箋の導入 | 推奨 | □ |
| 電子カルテ情報共有サービスの把握 | 推奨 | □ |
| DX関連の院内掲示・Web掲示 | 推奨 | □ |
| 電子的診療情報連携体制整備加算の準備 | 今後 | □ |
| マイナ保険証利用率の基準対応 | 今後 | □ |
| レセコン・電子カルテのアップデート | 今後 | □ |
対応の優先順位の考え方
すべてを一度に対応する必要はありません。以下の順序で進めてください。
ステップ1:義務を満たす
オンライン資格確認、掲示義務のウェブサイト掲載、サイバーセキュリティ対策。この3つは義務化済みなので、未対応の場合は最優先です。
ステップ2:加算を最大化する
マイナ保険証の利用促進と電子処方箋の導入を進め、2026年6月の新加算でできるだけ高い区分を算定できるよう準備します。
ステップ3:中長期で計画する
電子カルテ情報共有サービスや標準型電子カルテの動向を把握し、ベンダーと相談しながら計画的に対応を進めます。
医療DXの全体像については、

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まとめ
クリニックの医療DX対応は、優先度を整理して段階的に進めることが重要です。
- 必須(義務化済み): オンライン資格確認、掲示義務のウェブサイト掲載、サイバーセキュリティ対策
- 推奨(加算に直結): マイナ保険証の利用促進、電子処方箋、電子カルテ情報共有サービス
- 今後(2026年6月〜): 電子的診療情報連携体制整備加算への移行準備
まずは義務を満たし、次に加算を最大化、そして中長期の計画を立てる。この順序で進めれば、無理なく医療DXに対応できます。
掲示義務のWeb対応についてお困りの方は、お気軽にお問い合わせください。
参考資料
- 医療DXについて — 厚生労働省
- 医療DX推進体制整備加算・医療情報取得加算の見直しについて(PDF) — 厚生労働省保険局医療課
- 医療DXの推進に関する工程表(PDF) — 厚生労働省
- 医療分野のサイバーセキュリティ対策について — 厚生労働省
- 電子処方箋の導入状況に関するダッシュボード — デジタル庁