ベースアップ評価料とは?2026年6月改定後の点数・施設基準・院内掲示をわかりやすく解説|掲示ナビ ブログ | 掲示ナビ保険医療機関の開設者・管理者・法人代表者・役員は対象職員に含まれない
また、一定要件を満たした場合は「派遣職員」も対象にできます(労働者派遣法第2条第2項該当者)。請負業務従事者は対象外となります。
2026年6月改定後の点数構造
点数は「新規賃上げ機関」と「継続賃上げ機関」の2区分で設定されています。「継続」の入り口要件は次の OR 条件で、ここを正しく押さえることが事務長として最初の判断ポイントになります。
- (a) 令和8年3月31日時点でベースアップ評価料を届け出済みである、または
- (b) 令和6年3月時点と比較して、対象職員に対し以下の賃上げ実績を達成している
- 一般職員:令和8年度時点で5.5%(5分5厘)以上のベア、令和9年度時点で8.7%(8分7厘)以上のベア
- 看護補助者・事務職員:令和8年度時点で8%(8分)以上のベア、令和9年度時点で13.7%(1割3分7厘)以上のベア
この (a)(b) のどちらかを満たせば「継続」枠の点数(23点等)を取れます。新規開設で届出履歴が無くても、所定水準の賃上げ実績を提示できれば「継続」枠で算定できる場合があるので、自院が新規枠か継続枠かは早めに確認しておきましょう。なお (b) は2階建ての要件で、令和9年度時点で水準を満たせなくなった場合は新規賃上げ機関の点数に切り替わります(要件詳細は告示第69号注2と保医発0305第6号通知に基づく)。
外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)の点数表
令和8年厚生労働省告示第69号(2026年3月5日)により、以下の構成をスタートします。
| 区分 | 新規賃上げ機関 | 継続賃上げ機関 |
|---|
| 初診 | 17点 | 23点 |
| 再診時等 | 4点 | 6点 |
| 訪問診療(同一建物居住者以外) | 79点 | 107点 |
| 訪問診療(その他) | 19点 | 26点 |
改定前(2024年度版)は初診6点・再診2点・訪問28点だったため、初診で 新規17点(約2.8倍)/継続23点(約3.8倍) と最大約3.8倍の拡充となります。
外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)は12段階評価へ拡大
Ⅱは医療機関の規模・賃金改善必要額に応じて区分計算し、初診8〜96点・再診1〜12点の12段階評価 に拡大されました。作成した賃金改善計画書の「賃金改善に必要な額」と「ベースアップ評価料Ⅰの収入見込」の差を、その医療機関の期待収入見込に照らして区分を判定します。
入院ベースアップ評価料は1点刻み250段階
入院ベースアップ評価料は 1〜250段階(1点刻み) の体系に変わりました。2027年6月以降は1〜500段階へ拡大予定で、賃金改善必要額をより細かく加算にトレースできるよう設計されています。
施設基準の主な要件—賃金改善計画書を中身に据える
ベースアップ評価料の施設基準は「賃金改善を実際に行う体制をつくって、その計画と実績を届け出る」ことが柱です。
必ず作成する主な様式(医療機関用)
- 様式95〜100(医療機関用届出様式一式):賃金改善計画書(様式95〜97)/対象職員の状況(様式99)/月額賃金総額算出表(様式100)など、届出時に提出する一連の様式
- 様式98(賃金改善実績報告書):毎年8月に前年度の実績を地方厚生(支)局長へ提出(届出時の計画書とは別系統)
- 様式94(特別事情届出書):規模拡大・重大な事情等の場合に提出
- 訪問看護ステーションは別紙様式11、保険薬局は様式103〜104が用意されています
「掲示」には2つの意味がある
ベースアップ評価料に関する「掲示」には、混同しやすい2つの意味があります。本記事の第3章で扱うのは (1) です。患者向けの掲示・ウェブ掲示は別系統であり、混同しないよう注意してください。
- (1) 施設基準としての対象職員への周知(本章で扱う)— 賃金改善計画書・実施方法を職員に知らせる義務
- (2) 患者向けの院内掲示・ウェブ掲示(別系統)— 医療機関全般に求められる情報提供の掲示
対象職員への周知が施設基準
対象職員に「賃金改善実施方法」を周知することが求められています。例えば以下のような方法で応じられます。
- 賃金改善計画書や就業規則を書面で職員に配布する
- 職員が確認できる箇所(休憩室・スタッフルーム等)に掲示する
- 社内ポータル・連絡ツールで全職員へ送信する
ひとまず「職員休憩室に貼る」「賃金改善計画書を送る」ことで、厚生局の適時調査にも耐えられる形になります。
賃金改善のタイミングと繰越
- 原則:算定開始月から賃金改善を実施する
- 例外:「令和8年6月〜令和9年5月」の1年間の収入を「令和8年4月〜令和9年3月」の賃金改善に充当しても差し支えない(令和8年4月1日事務連絡「疑義解釈その2」参照)
- 繰越:原則不可。ただし患者数変動による余剰のみ可
届出スケジュール—5/18推奨・6/1必着の意味
2026年6月診療分でベースアップ評価料を算定するための届出スケジュールを、厚生労働省の事務連絡と厚生局の公表を裏取りして整理します。
公式の期限は6月1日(月)「必着」
5月18日推奨の理由
同じ事務連絡では、「令和8年5月下旬以降に地方厚生(支)局等の窓口は届出が集中し、混雑が予想されることから、可能な限り令和8年5月18日までの届出に努めること」とされています。また、電子申請は5月25日から受付開始 とされているため、書面提出の医療機関と電子申請の医療機関で提出タイミングが並ぶ点も意識しておくと良いでしょう。
期限を超えると「7月以降算定」にずれ込む
各厚生局のページでは「期限を過ぎて提出された場合は、7月以降の算定になります」と明記されています(九州厚生局・近畿厚生局 など)。1月遅れるとその間の加算収入がゼロで、以降の賃金改善連動スケジュールも崩れるため、事務長の手で今週中に動き出したいテーマ です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 小規模クリニックでスタッフが医師・受付の2名だけ。それでも加算できる?
A. 加算できる可能性があります。医師本人(開設者)は対象外ですが、受付の事務職員は「幅広い医療従事者」に含まれます。ただし、その1名の賃金改善を計画・実行し、計画書・実績報告を提出し続ける仕組みが必要です。
Q2. 令和8年に入ってから新規開設したクリニックも「継続賃上げ」の点数を取れる?
A. 「継続」枠は、(a) 令和8年3月31日時点で届出済み、または (b) 令和6年3月時点と比較して所定水準の賃上げを実施した医療機関が対象です。(b) は2階建ての要件で、一般職員は令和8年度時点で5.5%以上・令和9年度時点で8.7%以上のベア、看護補助者・事務職員は令和8年度時点で8%以上・令和9年度時点で13.7%以上のベアが必要です。新規開設で (a) が満たせなくても、(b) の賃上げ実績を示せれば継続枠の点数を取れる場合があります。賃上げ実績の根拠書類(賃金台帳等)が必須です。
Q3. ベースアップさせた職員が年度途中で退職したらどうなる?
A. 賃金改善実績報告書(様式98)を提出する際に、退職者・入職者を含めた実際の賃金改善額を計上します。実績が計画を下回った場合は、その差をベア・賞与・一時金で追加支給して補填することが求められるため、提出の手前で公認会計士・社労士に相談されると安心です。
Q4. 外来・在宅ベースアップ評価料Ⅱの「区分」を今すぐ上げたい。可能?
A. 区分は 賃金改善計画書の記載内容と収入見込に基づいて計算 されます。賃上げ幅を増やせば区分も上がりますが、実績報告でその計画を実際に達成していることが不可欠です。実装できる賃上げ幅を計画してから区分を定める順番を推奨します。
Q5. 院長と話して「賃上げはしたくない」と言われた。どうすれば?
A. ベースアップ評価料は「算定しない」という選択もできますが、その場合も6/1必着の届出を出さないと以前の加算収入もそこで打ち切り になります。賃上げ財源を手放すことの意味を院長・会計・社労士と共有した上で判断されることを推奨します。算定可否の最終判断は所轄の厚生(支)局にもご確認ください。
まとめ—4/30以降に事務長が動く3ステップ
- 今週:賃金改善計画書一式(様式95〜100)の下書きを作成し、院長・会計と読み合わせ。対象職員・賃上げ幅・財源の見積をひとまず数字化する。同時に、自院が「新規賃上げ機関」か「継続賃上げ機関」かを (a) 届出履歴/(b) 賃上げ実績(令和8年度時点で一般5.5%・事務職員等8%以上)で判定する。
- ゴールデンウィーク明け:電子申請は5月25日から受付、書面提出は連休明けから。どちらで提出するかを決め、会計・社労士に伝える。
- 5月18日(月)までに提出:厚生局推奨期限に間に合わせる。同時に 対象職員への周知(計画書配布・休憩室掲示)を完了させる。
2026年度の診療報酬改定は賃上げを中身に据えた拡充路線です。「現に算定中だからといって何もしなくていい」という誤解だけは避け、事務長が今週動くことで差がつきます。
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参考資料