長期収載品の選定療養、説明すれば必ず特別料金を取れる?取れる条件をQ&Aで整理

「説明すれば取れる」「毎回は取らない」で、手が止まる
長期収載品の選定療養。患者さんが後発品ではなく先発品を希望したとき、「説明さえして同意をもらえば、特別の料金はいつでも取れる」と、なんとなく運用していないでしょうか。
逆に、前回と患者さんの負担額が変わらない月には、「今回は取らなくてもいいのかな」と、ふと手が止まる。取る・取らないの線引きが、説明の手続きや負担額の動きに引っ張られて、ぼんやりしている現場は少なくありません。
迷う原因は、二つが混ざっているからです。一つは、選定療養が「患者さんに説明して同意を得る」手続きを伴うため、説明したかどうかとそもそも徴収の対象かが、現場では一体に見えてしまうこと。もう一つは、令和8年6月から特別の料金の計算方法が変わり、患者さんの負担額が動いたことです。
この記事では、長期収載品の選定療養を「取れる/取れない」の線引きにしぼって、厚生労働省の事務連絡・中医協資料に沿ってQ&A形式で整理します。
よくある疑問にお答えします
Q1. 患者さんに説明して同意をもらえば、特別の料金は必ず取れますか?
いいえ。説明と同意は徴収の前提ですが、それだけで取れるわけではありません。 取れるかどうかは「説明したから」ではなく、「対象に該当するか」で決まります。
患者さんへの説明と同意がなければ徴収できないのは大前提です。そのうえで、対象に当たらないケース(後述)では、説明・同意をしても選定療養としての特別の料金は徴収できず、これまでどおり保険給付になります。
Q2. 特別の料金を徴収できるのは、どんな場合ですか?
説明・同意に加えて、次の三つがそろったときだけです。
- 厚生労働省の対象医薬品リストに載っている長期収載品であること
- 患者さんの希望で長期収載品を選んだこと(医療上の必要性がないこと)
- 後発品を提供できる状況であること(在庫がある等)
逆に、医療上の必要性があると認められる場合や、後発品の供給が困難で提供できない場合(薬局に在庫が無い場合などを含みます)は、選定療養にはせず、これまでどおり保険給付です。「説明・同意は欠かせないが、それだけで取れるわけでもない」という関係を押さえておくと、線引きがぶれません。
Q3. 「医療上の必要性がある」とは、具体的にどんな場合ですか?
医療上の必要性は、四つの類型で示されています。これに当たれば、患者さんが先発品でも、従来どおり保険給付です。
- 効能・効果に差があり、その患者さんの治療に長期収載品が必要と医師等が判断する場合
- 後発品で副作用・相互作用・治療効果の差があり、安全性の観点から長期収載品が必要な場合
- 学会のガイドラインで、後発品へ切り替えないことが推奨されている場合
- 剤形上の違いで後発品が飲みにくい、一包化できない等の場合(ただし単なる剤形の好みは対象外)
この四つに当たらず、患者さんの希望で先発品を選ぶのであれば、選定療養の対象になります。
Q4. 後発品の在庫がない・供給が困難なときは取れますか?
いいえ。後発品を提供できない状況では、選定療養の対象になりません。保険給付です。 これは供給不足だけでなく、その時点で薬局に在庫が無い場合なども含みます。
「患者さんが先発品を希望した」ように見えても、そもそも後発品を選べる状況になければ、選定療養の前提を欠きます。在庫切れと、制度上の供給困難を切り分けつつ、提供できない月は徴収しない、と整理してください。
Q5. 前回と患者さんの負担額が同じ月は、取らなくてよいですか?
いいえ。徴収するかどうかは、前回と負担額が同じか違うかとは関係ありません。対象に該当する限り、毎回徴収します。
負担額が動いて見えるのは計算方法が変わったためで、徴収の可否そのものは「対象かどうか」だけで決まります。負担が同じでも違っても、対象なら徴収する、という線引きは変わりません。
Q6. 特別の料金はいくらですか?令和8年6月で何が変わりましたか?
特別の料金は、令和8年6月から「長期収載品と後発品(最高価格帯)の価格差の2分の1」に引き上げられました。それ以前は4分の1だったので、多くの品目で患者さんの負担はむしろ増えています。これに消費税分が上乗せされます。
前回とぴったり同じ負担になるのは、薬価も差額も据え置きの一部の品目だけです。改定後のレセプト・会計では、「価格差の2分の1+消費税」で計算できているかを必ず確認してください。
Q7. 掲示は何をすればよいですか?
長期収載品の選定療養を行う場合、本制度の趣旨(なぜ特別の料金がかかるか)と特別の料金を、院内の見やすい場所に分かりやすく掲示する必要があります。自院・自局のホームページ等がある場合は、原則としてウェブサイトにも掲載します。
「2分の1」への引き上げに合わせて掲示内容を更新できているか、ウェブ掲載まで反映できているかは、改定後の見落としポイントです。掲示の更新手順は「長期収載品の選定療養 2026/6/1 から「2分の1」へ Web掲示更新ガイド」で詳しく扱っています。
徴収前チェックリスト
長期収載品の選定療養で特別の料金を徴収する前に、次の順番で確認すると、取りすぎ・取り損ねを防げます。
- その薬は、対象医薬品リストに載っている長期収載品か
- 患者さんの希望で選んだか(医療上の必要性の四類型に当たらないか)
- 後発品を提供できる状況か(在庫等)
- 特別の料金を、令和8年6月時点の「価格差の2分の1+消費税」で計算しているか
- 本制度の趣旨と特別の料金を、院内の見やすい場所に掲示し、自院のHP等があればウェブにも掲載しているか
対象かどうか微妙な品目や、医療上の必要性の判断に迷うケースは、自院・自局で抱え込まず、所管の地方厚生局や審査支払機関に確認するのが確実です。
関連する選定療養・保険外併用の論点
長期収載品の選定療養は、保険外併用療養費(選定療養)という大きな枠組みの一部です。制度の全体像や、実費徴収との違いとあわせて押さえておくと、徴収と掲示の判断が見通しやすくなります。
- 制度の基本と掲示義務の全体像は「長期収載品(先発医薬品)の選定療養と掲示義務をわかりやすく解説」で解説しています。
- 選定療養と実費徴収はそもそも別物です。違いと掲示の考え方は「保険外併用療養費と実費徴収の違いとは?掲示義務と2026年6月の追加項目を解説」を参考にしてください。
まとめ
長期収載品の選定療養を「取れる/取れない」の線引きで整理します。
- 説明・同意は徴収の前提だが、それだけでは取れない。取れるかは「対象に該当するか」で決まる
- 徴収の条件は、対象医薬品リスト掲載・患者希望(医療上の必要性なし)・後発品を提供できる状況、の三つ
- 医療上の必要性の四類型に当たれば、先発品でも保険給付。後発品を提供できない(在庫無し等)場合も保険給付
- 徴収可否は前回との負担額の同異と無関係。対象なら毎回徴収
- 特別の料金は令和8年6月から「価格差の2分の1+消費税」(以前は4分の1)。趣旨と料金の掲示+原則ウェブ掲載が必要
「説明したから取る」でも「負担が同じだから取らない」でもなく、対象に該当するかどうか。この一点を軸に置けば、徴収と掲示の判断がぶれません。
出典・参考
一次資料(厚生労働省)
- 「長期収載品の処方等又は調剤に係る選定療養における費用の計算方法について」の一部改正について(令和8年3月27日 保険局医療課 事務連絡)特別の料金「価格差の2分の1」+消費税、令和8年6月1日適用(令和8年厚生労働省告示第116号) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001275337.pdf
- 「療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等」及びその実施上の留意事項について(保医発0327第6号・令和8年3月27日)長期収載品の選定療養に係る掲示(本制度の趣旨及び特別の料金の掲示・原則ウェブ掲載) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/15-3.pdf
- 中央社会保険医療協議会 総会 総-3(令和6年7月17日)長期収載品の処方等又は調剤に係る選定療養について(医療上の必要性の四類型) https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001276277.pdf
- 厚生労働省「後発医薬品のある先発医薬品(長期収載品)の選定療養について」(対象医薬品リスト・令和8年6月の取扱い) https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_39830.html




