薬局向け|衣替えされた「地域支援・医薬品供給対応体制加算」、6月施行後の運用と掲示・適時調査の見通し
令和8年6月の調剤報酬改定で、後発医薬品調剤体制加算と地域支援体制加算は「地域支援・医薬品供給対応体制加算」として一本化されました。加算は1〜5の5区分、点数は27〜67点。
ここでは、6月施行後に薬局が押さえておきたい運用ポイントを、点数構造・加算1の新8要件・経過措置のスケジュール・院内とWeb掲示の整理・適時調査での見られ方の順で整理します。届出は終わったが「6月以降の運用イメージがまだ固まっていない」という方向けに、現場で使える視点をまとめました。
どんな改定だったのか — 旧加算2系統を1つに統合
厚生労働省保険局医療課が公表した「令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】」では、薬局加算の改定方針が次のように示されています。
地域での医薬品供給を通じた適切な医療提供体制構築の充実を促進する観点から、後発医薬品調剤体制加算と地域支援体制加算を統合し、地域支援・医薬品供給対応体制加算を新設
旧体制で別々だった次の2系統が、新加算1〜5として再編されました。
- 旧「後発医薬品調剤体制加算」(1:21点/2:28点/3:30点)→ 廃止。後発品割合85%以上は新加算の基礎要件として吸収
- 旧「地域支援体制加算」1〜4(10〜40点)→ 新加算2〜5に対応関係

統合の意図は、後発品調剤体制(量)と地域支援体制(機能)が別評価だったのを、「医薬品の安定供給に資する体制」を起点に1本に束ねること。供給不安が常態化するなか、薬局単位での供給対応力を加算の幹に据えた構造変更です。
加算1〜5の点数と要件区分
新加算の最大の特徴は、全区分の前提として加算1の8要件を満たすことが必須になった点です。旧地域支援体制加算1〜4の枠は、加算2〜5に「加算1要件 + 各々の実績要件」という積み上げで対応します。

調剤基本料1の薬局では加算2(59点)・加算3(67点)、調剤基本料1以外では加算4(37点)・加算5(59点)が選択肢。実績9項目のうち何項目を満たすかで上位区分が決まります(加算3/5は7項目以上、加算2/4は3項目以上+必須項目)。
実績9項目(処方箋1万枚当たりの年間回数、⑨は薬局当たりの年間回数)は次の通り。
- 夜間・休日等の対応実績
- 麻薬の調剤実績
- 調剤時残薬調整加算および薬学的有害事象等防止加算の算定実績
- 服薬管理指導料1のイ・2のイ(かかりつけ薬剤師)の算定実績
- 外来服薬支援料1の実績
- 単一建物診療患者が1人の在宅薬剤管理の実績
- 服薬情報等提供料に相当する実績
- 小児特定加算の算定実績
- 薬剤師認定制度認証機構認証の研修認定取得薬剤師による地域の多職種連携会議出席
加算2は「④を含む3項目以上」、加算4は「④⑥を含む3項目以上」と、かかりつけ薬剤師の実績が必須項目に組み込まれている点に注目してください。
加算1の8つの新要件 — 全区分の土台
新加算の幹である加算1(27点)の施設基準は、旧体制にはなかった「医薬品の安定供給に関する具体的行動」が中心です。「令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】」より、要件は次の8つ。
- 医薬品の安定供給に向けた計画的な調達や在庫管理
- 他の保険薬局に医薬品を分譲した実績(同一グループは含めない)
- 供給不安等により迅速な入手が困難な場合に、入手可能な保険薬局を探し患者紹介、または処方医に処方変更の可否を照会する等の対応
- 重要供給確保医薬品のうち内用薬・外用薬は1ヶ月程度の備蓄に努めること
- 単品単価交渉の実施(原則)
- 卸売販売業者への頻回配送・休日夜間配送・急配に係る過度な依頼を慎む
- 温度管理を要する医薬品や在庫調整目的の返品を慎む
- 地域の保険医療機関・保険薬局・医療関係団体と連携した医薬品情報共有(望ましい)
加算1だけの点数は27点ですが、加算2〜5を取りに行く薬局にとってもこの8要件は前提です。「届出は出した、要件チェックは押した」のあと、6月以降は運用記録として残る形で実行されているかが問われます。
備蓄品目は十分な数(医療用医薬品1200品目)が引き続き目安。調剤室面積16m²以上の要件は「令和8年6月以降に開設・改築・増築した保険薬局のみ」適用で、既存薬局には遡及しません。
経過措置と臨時的取扱いの2本立てスケジュール
6月施行に向けて押さえる期日は、改定の経過措置と「供給不安に対する臨時的取扱い」の2系統あります。

後発品割合85%要件の経過措置(令和9年5月31日まで)
「令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】」に明記されている経過措置:
令和8年3月31日において現に後発医薬品調剤体制加算1、2又は3に係る届出を行っている保険薬局については、令和9年5月31日までの間に限り、第十五の四の(1)のロに該当するものとみなす
つまり、改定直前まで旧・後発医薬品調剤体制加算(1〜3)を算定していた薬局は、後発品割合85%以上の要件を令和9年5月31日まで満たしているとみなされるという時限的な救済です。1年間で新基準(後発品割合の実数値での確認)に整合させる猶予期間と捉えるとよいでしょう。
後発品割合計算からの供給不安薬除外(2026年9月30日まで)
これとは別系統で、厚生労働省は2026年4月16日付の事務連絡「後発医薬品の出荷停止等を踏まえた診療報酬上の臨時的な取扱いについて」を発出。2026年4月診療・調剤分から2026年9月30日までは、出荷停止等の供給不安薬を後発品割合計算から除外できる取扱いが示されています(※二次情報:GemMed報道による)。
注意点として、「一部の成分品目のみ除外することはできず、該当する全品目を除外対象とする」と規定されています。社内の集計手順を、対象月だけ集計式が変わる前提で更新しておく必要があります。
院内掲示とWeb掲示で押さえるべき項目
届出様式87の3の1のチェック項目から、患者・地域への掲示・周知が要件として明示されているものを抜き出すと次の通り。
- 後発医薬品の調剤を積極的に行っている旨を掲示している(様式87の3の1「3.キ」)
- 休日・夜間を含む時間外の調剤、在宅対応体制(地域の輪番体制含む)の周知(薬局内 + 行政機関 or 薬剤師会を通じた地域への周知)
- 連携薬局名と直接連絡が取れる連絡先電話番号を薬局の外側の見えやすい場所に掲示
- 在宅患者訪問薬剤管理指導を行う薬局である旨の掲示と文書交付
院内(物理的掲示)と自院Webの両方で同期して掲載しておきたい項目です。届出はしたが掲示が追いついていないと、適時調査で「届出と掲示の不一致」として指摘される構造になります。
自院チェックリスト — 6月以降のセルフチェック
新加算の届出を出した薬局は、以下を社内で確認しておくと安全です。
- 加算1の8要件について、運用記録(在庫管理ログ、分譲記録、供給不安時の対応記録、単品単価交渉記録、配送依頼の運用ルール) を整備しているか
- 重要供給確保医薬品の備蓄品目を1ヶ月程度の数量で確保できているか
- 加算2〜5を取得する場合、実績9項目のうち届出区分に必要な数の項目で実績数値が出るかを月次で確認しているか
- 後発医薬品の積極調剤の旨を内側・外側の両方に掲示しているか(届出様式の必須項目)
- 休日・夜間・在宅対応体制を、自院サイトと地域の薬剤師会・行政の両方で周知できているか
- 連携薬局名と連絡先を外側の見えやすい場所に掲示しているか
- 令和9年5月31日までの経過措置期間中に、新基準での後発品割合実数値が85%以上を維持できる見通しか
- 2026年9月30日までの供給不安薬除外措置を踏まえ、集計式の切替手順が社内で共有されているか
まとめ — 6月以降は「届出後の運用」が本番
地域支援・医薬品供給対応体制加算は、旧加算2系統の単純な統合ではなく、「医薬品安定供給に資する具体的行動」を加算1の8要件として全区分の土台に置いた構造改革です。
届出は5月18日で締切られましたが、本番は6月以降の運用記録と掲示の同期。後発品割合85%要件の経過措置(令和9年5月31日まで)と供給不安薬除外措置(2026年9月30日まで)の2系統スケジュールを混同しないこと、適時調査で問われる「届出と掲示の整合」を6月初週で点検しておくこと——この2点が、6月以降の最初の3ヶ月で薬局が押さえるべき要点です。
掲示ナビは、厚生局の届出データを起点に院内・Web掲示を自動生成するサービスです。届出を出した加算は、本サービス側で自動的に掲示候補に反映されるため、加算の取得・取り下げや改定対応で掲示文面を都度書き直す手間がなくなります。
参考文献
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】」 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001684593.pdf
- 近畿厚生局「様式87の3の1 地域支援・医薬品供給対応体制加算の施設基準に係る届出書添付書類」 https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kinki/r8-t87-3-1.pdf
- 近畿厚生局「基本診療料の届出様式(令和8年度診療報酬改定)」 https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kinki/shinsei/shido_kansa/shitei_kijun/kihon_r08k.html
- GemMed「地域支援・医薬品供給対応体制加算などの『後発品割合』、2026年9月分診療等分まで供給不安薬を計算から除外可─厚労省」 https://gemmed.ghc-j.com/?p=73951
