調剤時残薬調整加算は週1回の注射薬1本でも取れる?注射薬の数え方をQ&Aで解説

「週1回投与の注射薬を1本だけ残薬調整した。でも調剤日数としては1日分だから、調剤時残薬調整加算は取れないよね……」——現場でこう判断して、算定を見送っていませんか。
結論から言うと、それは早計かもしれません。令和8年(2026年)7月17日に出た疑義解釈資料(その10)が、まさにこの「注射薬の残薬調整をどう数えるか」を明確化しました。この記事では、注射薬に絞って、調剤時残薬調整加算が取れるかどうかの判断軸を、薬局の窓口で使えるQ&A形式でまとめます。
なお、調剤時残薬調整加算そのものの点数・算定要件・全体の流れは別記事「調剤時残薬調整加算とは?点数・算定要件・残薬調整の流れを薬局向けに解説」で解説しています。本記事は、その中でも判断に迷いやすい「注射薬」に焦点を当てた深掘り編です。
そもそも、なぜ注射薬の残薬調整は迷うのか
調剤時残薬調整加算は、原則として「7日分以上相当」の残薬を調整したときに算定できる加算です。ところが、この「7日分以上相当」の数え方が、内服薬・屯服薬・外用薬・注射薬でそれぞれ違います。
とくに注射薬は、「調剤日数の見た目」でそのまま数えてしまいがちです。「週1回の注射薬を1本だけ減らした=調剤日数は1日分=7日分以上には届かない=算定できない」と早合点しやすいのですが、ここが落とし穴です。注射薬には注射薬の数え方があり、令和8年7月の疑義解釈その10がその考え方をはっきり示しました。
【Q&A】注射薬の残薬調整と調剤時残薬調整加算
Q1. 週1回投与の注射薬を1本だけ残薬調整しました。調剤日数は1日分ですが、加算は取れませんか?
「調剤日数が1日分だから一律に取れない」わけではありません。原則どおり算定できるケースがあります。
ポイントは、注射薬の「7日分以上相当」を、調剤日数の見た目で数えないことです。疑義解釈その10(令和8年7月17日)は、注射薬について「処方箋で指示されている1日使用量に鑑みて、7日分以上の使用量に相当する残薬」で判断する、と示しました。
週1回投与の注射薬1本は、1回分がおおむね1週間分(=7日分)にあたります。これが「7日分以上相当」を満たすのであれば、そのまま原則ルートで算定して差し支えない、という整理になります。「1本だから1日分」ではなく、「その1本が何日分の使用量に相当するか」で見るわけです。
Q2. 注射薬の「7日分以上相当」は、具体的にどう数えればいいですか?
判断軸は「処方箋で指示されている1日使用量」です。その1日使用量を基準に、調整した残薬が7日分以上の使用量に相当するかどうかで判定します。
内服薬・屯服薬・外用薬の「7日分以上相当」は、次のように整理されています。
- 内服薬など日数単位で処方される医薬品:調剤日数を7日分以上減じた場合
- 屯服薬:7回分以上
- 外用薬:1回使用量に鑑みて7回分以上の使用量
- 隔日投与などで患者が服用しない日がある医薬品:実際に服薬する日数で数える
注射薬は、このうち内服薬などとは別枠で、「1日使用量に鑑みて7日分以上の使用量に相当する残薬か」で判断する、という位置づけです。
Q3. インスリンなど、1本で複数回使える注射薬はどう扱いますか?
インスリン製剤など、1製剤で複数回使用できる注射薬については、疑義解釈その10で「製剤単位で残薬の調整を行うこと」と示されています。
つまり、1回ごとの単位ではなく、製剤(1本・1キット等)を単位として残薬を調整し、その調整量が7日分以上相当にあたるかを見る、という考え方です。単回使用の注射薬と、複数回使用できる注射薬とで、数え方の起点が変わる点に注意してください。
Q4. 「7日分以上相当」に届かず、6日分以下相当のときは、もう算定できませんか?
いいえ、この場合も道はあります。ただし例外的な取り扱いになります。
留意事項では、6日分以下相当の処方日数の変更を行う理由は、「がん化学療法薬等の高額な医薬品であるため患者負担等を軽減する必要が特に高いこと」または「薬学的専門的な観点」によるもの、と限定されています。この理由に該当する場合は、6日分以下相当でも算定でき、その理由をレセプトの摘要欄に記載します。
週1回投与のように投与間隔が長い薬剤は、この「薬学的専門的な観点」の枠で整理できるケースがあります(次のQ5で詳しく説明します)。
Q5. 摘要欄に書く「投与間隔が長い薬剤のため」の「長い」とは、何日以上を指しますか?
投与間隔が6日間以上の場合を指します。これは疑義解釈その10(令和8年7月17日)で明確化されました。
6日分以下相当の残薬調整をしたときは、その理由を摘要欄に記載することとされており、記載できる理由の1つに「投与間隔が長い薬剤のため」があります。この「投与間隔が長い」の具体的な基準が「6日間以上」と示された、というわけです。
週1回投与=投与間隔7日は、この6日間以上に該当します。したがって、週1回の注射薬で調整量が6日分以下相当にとどまる場合でも、「投与間隔が長い薬剤のため」という理由を摘要欄に記載して算定できる余地がある、ということになります。
Q6. 結局、原則ルートと例外ルートは、どちらで算定すればいいですか?
優先順位で考えると分かりやすいです。
- まず、原則ルート:注射薬の「7日分以上相当」(1日使用量に鑑みて7日分以上の使用量に相当する残薬か)を満たすかを検討する
- 満たすなら、そのまま原則どおり算定する
- 満たさず6日分以下相当にとどまる場合に、例外ルート(高額医薬品または薬学的専門的な観点=投与間隔が長い薬剤等)に該当するかを検討し、該当すれば摘要欄に理由を記載して算定する
いずれのルートでも、「調剤日数が1日分だから即アウト」ではない、という点が大切です。
自院で確認するときのチェックリスト
週1回投与の注射薬で残薬調整をしたとき、次の順で確認すると判断がぶれません。
- その注射薬の「1日使用量」を処方箋で確認する(調剤日数の見た目で数えない)
- 複数回使用できる製剤(インスリン等)なら、製剤単位で残薬を調整する
- 調整した残薬が「7日分以上相当」かを判定する。満たせば原則ルートで算定
- 満たさず6日分以下相当なら、「高額医薬品」または「薬学的専門的な観点(投与間隔が長い薬剤=6日間以上 等)」に該当するかを確認する
- 該当する場合は、レセプトの摘要欄に残薬調整の理由を記載する
- 個別の製剤で「1本が何日分相当か」等の判断に迷うときは、所管の地方厚生局や審査支払機関(社会保険診療報酬支払基金・国保連合会)に確認しておく
関連する加算・記事
- 加算の全体像(点数・算定要件・残薬調整の流れ)は「調剤時残薬調整加算とは?点数・算定要件・残薬調整の流れを薬局向けに解説」を参照してください。
- 一包化に関わる算定の考え方は「外来服薬支援料1と2は同じ月に両方算定できる?レセ分割・併算定の可否を解説」「『全部粉砕』の算定は外来服薬支援料2(一包化)?自家製剤加算?違いと併算定を薬局向けに解説」で整理しています。
- 改定に伴う疑義解釈の読み方は「疑義解釈(その7)令和8年5月29日|医療機関・薬局が押さえる改定Q&A総まとめ」も参考になります。
まとめ
週1回投与の注射薬を1本だけ残薬調整したとき、調剤時残薬調整加算は「調剤日数が1日分だから取れない」と決めつけず、注射薬の「7日分以上相当」の考え方で判断します。疑義解釈その10(令和8年7月17日)は、注射薬は「処方箋で指示されている1日使用量に鑑みて7日分以上の使用量に相当する残薬か」で見ること、複数回使用できる注射薬は製剤単位で調整すること、そして摘要欄に書く「投与間隔が長い薬剤」とは投与間隔6日間以上を指すことを示しました。
まずは原則ルートで7日分以上相当かを確認し、届かないときは例外ルート(高額医薬品・薬学的専門的な観点)と摘要欄記載を検討する。この順で見れば、注射薬の残薬調整の算定判断は迷いにくくなります。個別ケースで判断に迷う場合は、所管の地方厚生局や審査支払機関に確認するのが安全です。
出典・参考
一次資料(厚生労働省)
- 厚生労働省保険局医療課「疑義解釈資料の送付について(その10)」(令和8年7月17日 事務連絡)別添3 問1(注射薬の「7日分以上相当」)・問2(投与間隔が長い薬剤=6日間以上) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001725624.pdf
- 厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」(令和8年3月5日 保医発0305第6号)別添3 区分10の2 調剤管理料 調剤時残薬調整加算の留意事項(6)(7) https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
- 厚生労働省「『診療報酬請求書等の記載要領等について』等の一部改正について」(令和8年3月27日 保医発0327第2号)別表Ⅰ(摘要欄への残薬調整理由の記載要領) https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」(告示・通知・事務連絡の入口ページ) https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html




