【令和8年9月1日】薬局が高度管理医療機器を許可なしで渡せる3要件|1品目追加

令和8年9月1日、薬局向けに小さな改正がありました。「インスリン注射器等を交付する薬局に係る取扱いについて」という通知に、デンプン由来吸収性局所止血材が追加されたというものです(令和8年9月1日 医薬機審発0901第1号)。同日から適用されています。
品目がひとつ増えただけ、といえばそれまでです。ただ、この通知そのものが、薬局にとってはかなり重要な内容を持っています。どういう条件なら、高度管理医療機器を販売業の許可なしで患者さんに渡せるのかを定めた通知だからです。在宅業務を持つ薬局ほど関係します。
改正を入り口に、通知の中身を整理します。
何が起きたのか
改正の理由は、通知の前段に書かれています。
今般、「特定保険医療材料及びその材料価格(材料価格基準)」(平成 20 年厚生労働省告示第 61 号)別表Ⅰ及び別表Ⅷにデンプン由来吸収性局所止血材が追記されたことに伴い、室長通知の一部を下記のとおり改正し、本日から適用する。
改正された「室長通知」は、平成17年3月25日付けの薬食機発第0325001号です。20年以上前の通知が、いまも薬局の実務を規律しています。
その前段に、8月31日付の別の通知があります。保険局から出た保医発0831第1号で、こちらは令和8年9月1日から適用されました。特定保険医療材料の材料価格算定に関する留意事項に、次の項目が新設されています。
017 デンプン由来吸収性局所止血材 オスラー病等の高頻度の鼻出血に対して、医師の指示に従って使用した場合に限り算定できる。なお、使用に当たっては、その医学的な必要性を診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。
これは在宅医療の部に規定される特定保険医療材料です。調剤側にも同じ日付で「016 デンプン由来吸収性局所止血材」が新設され、内容は「Ⅰの2の 017 と同様であること」とされています。
材料価格は、同じ8月31日付の「医療機器の保険適用について」に載っています。標準型が1g当たり12,600円、織布型が1cm²当たり48円です。
保険で使えるようになったので、薬局が扱えるように薬事の側も揃えた。9月1日の2本は、そういう関係になっています。
本題は「許可なしで渡せる条件」
ここからが通知の本体です。まず前提として、薬局が高度管理医療機器を扱うには、原則として薬機法第39条の高度管理医療機器等販売業の許可が要ります。通知はこう書き出しています。
薬局において高度管理医療機器の交付を行う場合の医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号。)第39条の高度管理医療機器等販売業の許可の取扱いについては、「インスリン注射器等を交付する薬局に係る取扱いについて」(平成17年3月25日付け薬食機発第0325001号厚生労働省医薬食品局審査管理課医療機器審査管理室長通知。以下「室長通知」という。)により示しているところである。
そのうえで、例外を置いています。インスリン自己注射用のディスポーザブル注射器・注射針について、こう書かれています。
インスリンと合わせて、インスリン製剤の自己注射のために用いる注射用ディスポーザブル注射器(針を含む)を医師の処方箋に基づき、社会保険各法において支給する場合に限って、以下の要件をいずれも満たす薬局は、高度管理医療機器等販売業の許可を取得する必要はないこと。
条件は2つ重なっています。医師の処方箋に基づくこと、そして社会保険各法において支給する場合に限ること。そのうえで、次の3要件をすべて満たすことが求められます。
満たすべき3要件
①使用状況を確認したうえでの指導と、二重の記録
① インスリン自己注射用ディスポーザブル注射器、注射針を患者に支給する際、薬剤師が患者の当該医療機器の使用状況や使用履歴を確認した上で、当該医療機器の使用方法及び管理方法の指導を添付文書等に基づいて適切に行っていること。併せて、調剤録に必要事項を記載するとともに当該医療機器を支給した時点で、薬剤服用歴に患者の氏名、住所、支給日、処方内容等、使用状況、使用履歴及び指導内容等の必要事項を記載していること。
記録先が調剤録と薬剤服用歴の両方である点に注意してください。薬剤服用歴に書くべき項目も具体的に列挙されています。氏名、住所、支給日、処方内容等、使用状況、使用履歴、指導内容。住所まで挙げられているのは、見落としやすいところだと思います。
②添付文書に基づく保管・取扱い
② インスリン自己注射用ディスポーザブル注射器、注射針の保管や取扱いを添付文書等に基づき適切に行っていること。
③研修実施計画の作成と、計画に基づく研修
③ 在宅業務従事者等の資質の向上を図るため、研修実施計画を作成し、当該計画に基づく研修を実施するとともに、定期的に在宅業務等に関する学術研修(地域薬剤師会等が行うものを含む。)を受けさせていること。なお、薬剤師に対して、医療機器に関する講習等への定期的な参加を行わせていることが望ましい。
3つのなかで、書類として残す必要がいちばんはっきりしているのがこれです。研修実施計画を作成し、その計画に基づいて研修を実施する。研修を受けさせているだけでは足りず、計画が要ります。医療機器に関する講習等への定期的な参加は「望ましい」という書きぶりで、必須とは区別されています。
なお、注入用の針についてはこう補足されています。
なお、医薬品・ワクチン注入用針は管理医療機器であるため、薬局がこれを取り扱う場合であっても高度管理医療機器等販売業の許可を取得する必要はない。
高度管理医療機器と管理医療機器では扱いが違う、ということです。
インスリンペン型注入器は、一体型と分離型で結論が逆
同じインスリンの注入器でも、構造によって答えが分かれます。ここは取り違えると許可の要否そのものを間違えるので、原文を並べます。
一体型について。
薬液たるインスリンが注入器と一体であり、インスリンを使い切ったあと注入器を再使用できない、薬液と一体となった注入器は、全体として医薬品として取り扱われているものであり、これを医師の処方箋に基づき薬局において交付する場合、当該薬局は高度管理医療機器等販売業の許可を取得する必要はないこと。
分離型について。
薬液たるインスリンのカートリッジが注入器と分離でき、カートリッジ内のインスリンを使い切った後も、新しいカートリッジに交換の上、注入器を再利用できる分離型のインスリン注入器は、医師の処方箋に基づき交付することはないことから、これを取り扱う薬局は、高度管理医療機器等販売業の許可を取得する必要があること。
一体型は全体が医薬品として扱われるので許可不要。分離型はそもそも処方箋に基づいて交付するものではないので、扱うなら許可が要る。理由づけまで含めて押さえておくと、判断がぶれません。
特定保険医療材料にも同じ3要件が準用されます
そして今回の改正が効いてくるのが、この部分です。
「特定保険医療材料に該当する高度管理医療機器(別紙1参照)」及び「薬価基準に収載された高度管理医療機器(別紙2参照)」(以下「特材高度管理医療機器等」という。)は、上記1(1)インスリン自己注射用ディスポーザブル注射器、注射針と同様、医師の処方箋に基づき、社会保険各法において支給する場合に限り、上記1(1)の①から③の要件をいずれも満たす薬局は、上記1(1)を準用し、高度管理医療機器等販売業の許可を取得する必要はないこと。
別紙1に挙げられている品目は、改正後で次のとおりです。
| 特定保険医療材料に該当する高度管理医療機器 |
|---|
| 腹膜透析液交換セット |
| 在宅寝たきり患者処置用栄養用ディスポーザブルカテーテル |
| 携帯型ディスポーザブル注入ポンプ |
| 在宅寝たきり患者処置用膀胱留置用ディスポーザブルカテーテル |
| 在宅血液透析用特定保険医療材料(回路を含む。) |
| 皮膚欠損用創傷被覆材 |
| 水循環回路セット |
| デンプン由来吸収性局所止血材 |
最後の1行が、今回加わったものです。別紙2は薬価基準に収載された高度管理医療機器で、一般名「外科用接着剤」、品名は「アロンアルフアA「三共」」となっています。
在宅で使う材料が並んでいることがわかると思います。在宅業務を持つ薬局にとっては、3要件を満たしているかどうかが、そのまま扱える範囲を決めることになります。
そして、ここに載っていないものはどうか。通知は最後にこう書いています。
上記1又は2以外の場合で、薬局において高度管理医療機器を販売・授与しようとするときは、当該薬局は高度管理医療機器等の販売業の許可を取得する必要があること。
別紙の一覧に無いものを扱うなら、許可が要ります。
薬局として確認しておきたいこと
第一に、研修実施計画です。3要件のうち、文書として存在しないと説明が難しいのがこれです。作成して、計画どおりに実施しているかを確認します。
第二に、記録の様式です。調剤録と薬剤服用歴の両方に、通知が挙げる項目が残る形になっているか。とくに住所と使用履歴は、様式に欄がないと抜けます。
第三に、扱っている品目の棚卸しです。別紙1の8品目と別紙2に載っているかどうかで、許可の要否が変わります。載っていないものを扱っているなら、許可の取得が要ります。
第四に、インスリン注入器の型の確認です。分離型を扱うなら許可が必要です。
第五に、デンプン由来吸収性局所止血材を算定する場合の摘要欄です。医学的な必要性を診療報酬明細書の摘要欄に記載することが要件になっています。摘要欄の記載事項は7月30日にも大きく差し替えられているので、

レセ摘要欄の記載事項一覧、7月30日に差し替え|CPAPとコンタクトレンズが変更
令和8年7月30日の事務連絡で、レセプト記載要領の別表Ⅰ・Ⅱ・Ⅴが差し替えられました。6月版との差分を突き合わせ、初診料のコンタクトレンズ記載の新設、CPAPの使用時間の書き方の変更、10月診療分までの猶予を整理します。
もあわせて確認しておくとよいと思います。
なお、許可の要否の最終的な判断は、都道府県等の薬務主管課の所管です。自局の運用が3要件を満たしているかで迷ったら、そちらに確認してください。
在宅の体制については

地域支援・医薬品供給対応体制加算の施設基準と点数一覧|届出要件と掲示義務を解説
令和8年度改定で統合された地域支援・医薬品供給対応体制加算(旧・地域支援体制加算+後発医薬品調剤体制加算)の加算1〜5の点数・施設基準・届出要件・掲示義務を解説。
に、窓口対応をめぐる最近の整理は

【令和8年7月8日】薬剤師の調剤応需義務を再整理|カスハラで調剤を断れる場合
令和8年7月8日、薬剤師の調剤応需義務について断れる「正当な理由」を整理し直す通知が出ました。カスハラ該当性と信頼関係の喪失による2段階の判断、在庫切れは理由にならない点、10月1日の義務化との関係を一次資料から整理します。
にまとめました。掲示物の整備状況は

薬局の施設基準 掲示例・見本集【無料】|掲示義務の全項目を網羅
薬局の薬機法・療担規則に基づく掲示義務と、施設基準・加算ごとの掲示を網羅。令和8年6月改定(地域支援加算再編・電子的連携加算新設)に完全対応。
で確認できます。
まとめ
令和8年9月1日、デンプン由来吸収性局所止血材が保険適用され、同日付で薬局向けの通知にも反映されました。この材料は在宅医療の部の特定保険医療材料で、オスラー病等の高頻度の鼻出血に対して医師の指示に従って使用した場合に限り算定でき、医学的必要性を摘要欄に記載することとされています。
改正そのものは1品目の追加ですが、入り口になった通知は、薬局が高度管理医療機器を販売業の許可なしで交付できる条件を定めたものです。医師の処方箋に基づき社会保険各法において支給する場合に限り、指導と二重の記録、添付文書に基づく保管・取扱い、研修実施計画に基づく研修という3要件をすべて満たせば、許可は要りません。
インスリン注入器は一体型なら許可不要、分離型なら許可が必要。別紙の一覧に無い高度管理医療機器を扱うなら、やはり許可が要ります。
在宅業務を広げていく薬局ほど、この3要件が扱える範囲を決めることになります。品目が増えたこのタイミングで、研修実施計画と記録の様式を見直しておくとよさそうです。
掲示ナビでは厚生局の届出データをもとに掲示ページを自動生成しているため、届出内容が変われば掲示も自動で追従します。掲示物の管理に時間を取られず、こうした薬事の確認に手を回せる状態をつくることが、開発の出発点だったと聞いています。
出典・参考
一次資料(厚生労働省・厚生局・支払基金 等)
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厚生労働省医薬局医療機器審査管理課長「「インスリン注射器等を交付する薬局に係る取扱いについて」の一部改正について」(令和8年9月1日 医薬機審発0901第1号) https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T260902I0010.pdf
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厚生労働省保険局医療課長・歯科医療管理官「「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」等の一部改正について」(令和8年8月31日 保医発0831第1号。別添2で特定保険医療材料の留意事項を改正) https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T260901S0020.pdf
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厚生労働省「医療機器の保険適用について」(令和8年8月31日 保医発0831第2号。材料価格) https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T260901S0010.pdf
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厚生労働省「新着の通知」(本通知の掲載元) https://www.mhlw.go.jp/hourei/new/tsuchi/newindex.html
二次資料(業界誌・専門サイト)
- 本記事の内容は上記の一次資料のみに基づいて記述しており、解釈の追加は行っていません。許可の要否の個別判断は、所管の都道府県等の薬務主管課にご確認ください。




