標榜診療科名に「睡眠障害」追加|2026年6月施行・組み合わせ標榜の対応ガイド

標榜できる診療科名に「睡眠障害」が追加されました。2026年(令和8年)6月1日施行の医療法施行令の改正によるもので、「内科」などの基本となる科名に組み合わせて掲げられる疾病・病態に、睡眠障害が新しく加わります。
この記事では、「何が変わったのか」「そもそも標榜診療科名とはどういう仕組みか」「自院では何をすればよいか」を、一次資料にあたりながら整理します。あわせて、よく混同される「施設基準にもとづくWeb掲示義務」との違いにも触れます。
何が変わったのか(2026年6月1日施行)
今回動いたのは、医療法施行令という政令です。診療科名を看板・自院ホームページ・院内に掲げることを「標榜(ひょうぼう)」といいますが、その名乗り方のルールが改正されました。
ポイントは次の3点です。
- 改正されたのは医療法施行令第3条の2(診療科名のルールを定めた条文)で、組み合わせできる「疾病・病態」を列挙した部分に睡眠障害が追加される
- 公布は令和8年5月29日、施行は令和8年6月1日
- これまで4つだった疾病・病態に睡眠障害が加わり、5つ目になる
つまり、6月1日から「睡眠障害」を組み合わせた診療科名を掲げる選択肢が増えた、ということです。
なお、これは診療報酬の改定とは別の枠組みの話です。施設基準の届出やWeb掲示義務とは根拠となる法令が異なります。この点はあとで整理します。
そもそも「標榜診療科名」と組み合わせ標榜とは
標榜できる診療科名には、決まったルールがあります。患者さんが診療科名から受ける印象と、実際の診療内容がかけ離れないようにするためです。
仕組みはおおまかに次のようになっています。
- 「内科」「外科」「小児科」などの基本となる診療科名がある
- これに、一定の事項を組み合わせて名乗ることができる
- 組み合わせられる事項は、身体の部位、患者の年齢や性別などの特性、診療方法、そして疾病・病態に分かれる
このうち「疾病・病態」は、どれでも自由に組み合わせてよいわけではなく、政令で限定的に列挙されています。これまで認められていたのは、感染症・腫瘍・糖尿病・アレルギー疾患の4つでした。
たとえば「糖尿病内科」「腫瘍内科」「アレルギー科」といった名乗りは、この組み合わせのルールにもとづくものです。逆に、列挙されていない病態を勝手に組み合わせて標榜することはできません。
今回の改正の中身:睡眠障害が5つ目に
今回の改正で、この疾病・病態の列挙に睡眠障害が追加されました。感染症・腫瘍・糖尿病・アレルギー疾患に続く5つ目です。
実務的なイメージとしては、睡眠を専門的に診ている医療機関であれば、「睡眠障害内科」のような形で診療科名を掲げる選択肢が新たに増える、ということになります。
ここで押さえておきたいのは、次の2点です。
- 名乗ることが義務になったわけではない。あくまで「名乗れる範囲が広がった」だけで、掲げるかどうかは各医療機関の判断
- 組み合わせの相手は内科などの基本となる科名が中心で、睡眠障害という病態だけを単独の診療科名として掲げる話ではない
疾病・病態の追加は、現行の組み合わせ標榜制度ができた平成20年以来、およそ18年ぶりです。睡眠に関する相談や受診のニーズが定着し、専門的に診ている医療機関が自院の特色を表示できるように、という背景があります。
自院は何をすべきか
睡眠障害を組み合わせた診療科名を新たに掲げたい医療機関にとっては、6月1日が出発点になります。検討するときのチェックポイントを挙げます。
- 自院の診療実態に合っているかを確認する。標榜は患者さんへの情報提供であり、実際に睡眠障害を専門的に診ている体制と表示が一致していることが前提です
- 掲げる場合は、表示する場所をそろえる。標榜は屋外の看板だけでなく、自院ホームページ、院内の表示にもかかわります。一か所だけ新しい科名にして、ほかが古いままだと、患者さんに伝わる情報がちぐはぐになります。院内表示そのものの見直しには、クリニック・診療所の施設基準 掲示例・見本集も参考になります
- 医療広告のルールとの整合を確認する。診療科名は医療法上の広告可能な事項として扱われます。誇大・虚偽にあたる表現にならないよう、表示全体を見直しておくと安心です
逆に、睡眠障害を標榜する予定がない医療機関は、今回の改正で何か対応を迫られるわけではありません。「名乗れる選択肢が1つ増えた」と理解しておけば十分です。
Web掲示義務(施設基準)との違いに注意
ここで、混同しやすい論点を整理します。今回の「標榜診療科名」の話と、医療機関のWeb掲示義務は、別のルールです。
- 標榜診療科名:医療法・医療法施行令にもとづく、診療科の「名乗り方」のルール。看板・ホームページ・院内表示などで患者さんに示す情報
- Web掲示義務:2024年(令和6年)の診療報酬改定で原則義務化された、施設基準にかかわる掲示事項を自院ホームページにも掲載する仕組み。根拠となる通知(保医発)にもとづく。どの加算でWeb掲示が算定要件になるかは、Web掲示が算定要件の加算【完全リスト】で逆引きできます
どちらも「自院の情報を正しく表示する」という点では共通しますが、根拠となる法令も、対象となる内容も異なります。睡眠障害の標榜を始めたからといって、Web掲示義務の対象項目が増えるわけではありません。
ただ、両者に通底する考え方は同じです。それは「届け出た内容・実際の体制と、外に掲げている内容がズレないようにする」ということ。標榜診療科名にせよ、施設基準の掲示にせよ、表示が実態とずれていると、患者さんの誤解や、適時調査・個別指導での指摘につながりかねません。
掲示ナビが大事にしているのも、まさにこの整合性です。施設基準にもとづくWeb掲示・院内掲示について、厚生局の届出データを起点に内容を生成し、Webと院内(PDF・PPTX出力)で同じ内容をそろえられるようにしています。標榜診療科名そのものを管理する機能ではありませんが、「掲げる内容を最新に、そして実態とそろえて保つ」という発想は共通しています。届出と掲示の更新を足並みそろえる考え方は、施設基準届出は5/18まで|Web掲示の同期更新まで一気通貫でも整理しています。
まとめ:6月施行にあわせて、表示の足並みをそろえる
最後に要点を振り返ります。
- 2026年6月1日施行の医療法施行令改正で、標榜できる組み合わせの疾病・病態に睡眠障害が追加された(4つ目までの感染症・腫瘍・糖尿病・アレルギー疾患に続く5つ目、約18年ぶりの追加)
- 名乗りは義務ではなく、「睡眠障害内科」のような形で掲げられる選択肢が増えたという位置づけ
- 掲げる場合は、看板・ホームページ・院内表示をそろえ、医療広告のルールとの整合も確認する
- これは標榜のルールであり、施設基準にもとづくWeb掲示義務とは別の枠組み。ただし「表示と実態をそろえる」考え方は共通
制度の動きそのものは小さくても、患者さんの目に触れる表示にかかわる改正です。睡眠障害を専門的に診ている医療機関は、6月施行を機に自院の表示を見直してみてはいかがでしょうか。
出典・参考
一次資料(厚生労働省 等)
- 厚生労働省「標榜可能な診療科名に係る医療法施行令の改正について」(改正内容・公布令和8年5月29日・施行令和8年6月1日・対象条文・既存の疾病/病態の列挙) https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_73418.html
- 厚生労働省「医道審議会 医道分科会 診療科名標榜部会」(審議の経緯) https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-idou_127787.html
二次資料(業界団体・専門サイト)
- 日本医師会「診療科名の標榜について」(基本となる診療科名と組み合わせ標榜の仕組み) https://www.med.or.jp/doctor/sien/s_sien/008219.html
