重症化予防連携強化加算は毎回取れる?情報提供したその回だけ?回数と歯周病ハイリスク患者加算との違いを解説

糖尿病の患者さんの歯周治療で、医科に情報提供して重症化予防連携強化加算をつけた。さて、これは情報提供したその回だけなのか、それとも一度連携すれば以後の継続支援治療のたびに取れるのか。令和8年の改定で新しくできた加算なうえ、以前の「歯周病ハイリスク患者加算」とは取り方が違うらしい。名前も中身も変わって、レセプトの前で手が止まる。そんな経験は、少なくないはずです。
結論から先に言うと、この加算は「一度連携したら以後は自動で毎回つく」という性格のものではありません。歯周病継続支援治療(I011-2)の注4に置かれた加算で、医科からの情報に基づいて歯周病継続支援治療を実施し、そのうえで医科の主治医へ診療情報を提供した回に算定する、という組み立てになっています。一方で「毎回の継続支援治療で要件を満たせば算定できるのか」「月1回などの回数上限があるのか」は、令和8年7月時点の告示・通知・疑義解釈に明文がありません。この記事では、その事実関係を一次資料で確認しながら、旧「歯周病ハイリスク患者加算」との違いも含めてQ&A形式で整理します。
そもそも重症化予防連携強化加算とは
重症化予防連携強化加算は、令和8年度改定で新設された、歯科の点数です。告示(歯科診療報酬点数表)は、歯周病継続支援治療(I011-2)の注4として「歯周病の重症化するおそれのある患者に対して他の保険医療機関(歯科診療のみを行う保険医療機関を除く。)からの情報に基づき歯周病継続支援治療を実施し、診療情報を当該他の保険医療機関に提供した場合は、重症化予防連携強化加算として、100点を所定点数に加算する」と定めています。
つまりこの加算は、単独で立つ点数ではなく、歯周病継続支援治療という処置に上乗せする加算です。糖尿病などで歯周病が重症化しやすい患者について、医科と歯科が情報をやりとりしながら管理する連携を評価するもの、と押さえておくと分かりやすいです。歯科の医科連携で使う情報提供系の点数の整理は連携強化診療情報提供料と診療情報等連携共有料の違いもあわせてどうぞ。
Q1. どんなときに算定できる?
留意事項通知(点数表の各項目の運用を厚生労働省が示す文書)は、この加算を「糖尿病の病態によって歯周病の重症化を引き起こすおそれのある患者に対して、他の保険医療機関(歯科診療のみを行う保険医療機関を除く。)からの情報に基づき歯周病継続支援治療を実施し、当該他の保険医療機関の主治の医師に治療した内容、今後の治療方針等について情報提供を行った場合に算定する」としています。
要素に分けると、次の条件がそろったときに算定できる、という組み立てです。
- 糖尿病の病態によって歯周病が重症化するおそれのある患者であること
- 医科(歯科診療のみを行う医療機関を除く他の保険医療機関)からの情報に基づいて歯周病継続支援治療を実施していること
- その医科の主治医に、治療した内容や今後の治療方針などを情報提供していること
「医科から情報をもらう」だけでも、「医科へ情報を出す」だけでも足りず、医科からの情報に基づいて実施し、かつ医科へ情報提供する、という双方向のやりとりがそろって初めて算定できる、というのがポイントです。
Q2. 連携先は医科? 歯科同士でも取れる?
連携先は医科です。告示・通知はいずれも連携先を「他の保険医療機関(歯科診療のみを行う保険医療機関を除く。)」としています。歯科診療のみを行う医療機関が除かれているので、対象になるのは歯科単独ではない医療機関、つまり医科ということになります。
これは、糖尿病という全身疾患の管理を担う医科の主治医と、歯周病を管理する歯科とが連携することを想定した加算だからです。歯科医院同士のやりとりや、院内での情報共有はここでいう連携には当たりません。
Q3. 情報提供したその回だけ? 継続支援のたびに取れる?
ここが多くの方が迷うところですが、一次資料の書き方に沿って正確に押さえる必要があります。
まず、この加算は「情報提供を行った場合に算定する」という構造です。告示注4も留意事項通知も、「医科からの情報に基づき歯周病継続支援治療を実施し、医科へ情報提供を行った場合」に加算する、と書いています。裏を返すと、一度連携の実績をつくれば以後の歯周病継続支援治療に自動で毎回つく、という書き方はどこにもありません。加算は、その要件を満たす回の歯周病継続支援治療に対して乗せる、という理解が出発点です。
一方で、「毎回の歯周病継続支援治療でこの要件を満たせば、そのたびに算定できるのか」「月1回や患者につき1回といった回数上限があるのか」を明示した文言は、令和8年7月時点の告示注4・留意事項通知・疑義解釈のいずれにも見当たりません。ですから、回数について一次資料の文言で断定することはできない、というのが正確なところです。
参考として、加算が乗る本体の歯周病継続支援治療そのものは、告示上「月1回に限り算定」し、2回目以降は前回実施月の翌月の初日から起算して2月を経過した日以降に行う、と定められています(糖尿病の状態で重症化のおそれがある場合などは治療間隔の短縮が認められ、3月以内の間隔でも月1回算定できます)。加算はこの本体処置に乗るものなので、算定できる回数も現実にはこの本体の頻度の範囲に収まります。そのうえで、加算固有の回数の扱いに迷う個別ケースは、自己判断で押し通さず、所管の社会保険診療報酬支払基金・地方厚生局に確認するのが確実です。
Q4. 以前の「歯周病ハイリスク患者加算」と何が違う?
投稿で触れられている「歯周病ハイリスク患者加算」は、令和6年度までの点数表に実在した加算です。当時は歯周病安定期治療(旧I011-2)の注4に置かれ、「歯周病の重症化するおそれのある患者に対して歯周病安定期治療を実施した場合」に80点を加算する、というものでした。留意事項通知でも、糖尿病の病態によって歯周病が重症化するおそれのある患者に歯周病安定期治療を実施する場合に算定する、とされ、算定にあたっては主治の医師からの文書を診療録に添付することが求められていました。
令和8年度改定では、この枠組みが大きく変わりました。歯科の疑義解釈資料でも示されているとおり、旧・歯周病安定期治療と歯周病重症化予防治療が「歯周病継続支援治療」に統合され、旧「歯周病ハイリスク患者加算(80点)」に代わって「重症化予防連携強化加算(100点)」が新設されています。
取り方の違いを一言でいうと、医科への情報提供が算定要件に加わった点です。旧加算は「歯周病安定期治療を実施した場合」に算定でき、医科への情報提供までは要件になっていませんでした(医科からの文書を診療録に添付することが求められていました)。新加算は、医科からの情報に基づいて実施することに加えて、医科の主治医へ治療内容や今後の方針を情報提供することが要件になっています。名前だけでなく、双方向の連携を求める中身に変わった、と整理すると分かりやすいです。
Q5. 医科への情報提供、診療情報等連携共有料も一緒に取れる?
要件を満たせば算定して差し支えない、とされています。令和8年度の歯科の疑義解釈資料(その5)は、歯周病継続支援治療の注4の重症化予防連携強化加算について、診療情報等連携共有料を算定できるかという問いに対し、算定要件を満たす場合は算定して差し支えない旨を示しています。
ただし、これは「それぞれの算定要件を満たすこと」が前提です。重症化予防連携強化加算と診療情報等連携共有料は評価している内容が異なるため、両者の要件をそれぞれ確認したうえで判断してください。情報提供系の点数の使い分けは連携強化診療情報提供料と診療情報等連携共有料の違いで整理しています。
Q6. 算定に必要な記録・文書は?
留意事項通知は、算定にあたって「当該他の保険医療機関の主治の医師からの文書を診療録に添付する」ことを求めています。医科からの情報に基づいて実施した、という裏づけとして、医科の主治医からの文書を診療録に残しておく必要がある、ということです。
あわせて通知は、糖尿病に罹患している者の歯周病の管理を適切に行うため、定期的に糖尿病を踏まえた歯周病の管理等に関する講習会や研修会に参加し、必要な知識の習得に努める、とも述べています。算定の入口だけでなく、こうした記録と研鑽の姿勢も含めて求められている加算だと押さえておくと安心です。
算定前のチェックリスト
重症化予防連携強化加算の会計で手が止まったら、次の順で確認すると整理できます。
- 対象は、糖尿病の病態によって歯周病が重症化するおそれのある患者か
- 医科(歯科診療のみを行う医療機関を除く)からの情報に基づいて歯周病継続支援治療を実施したか
- その医科の主治医へ、治療内容・今後の治療方針などを情報提供したか
- 医科の主治医からの文書を診療録に添付しているか
- 本体の歯周病継続支援治療は月1回・原則2月間隔(糖尿病等で短縮要件に該当すれば3月以内でも月1回)。加算はこの本体に乗る
- 加算固有の回数の扱いに迷うケースは、支払基金・地方厚生局に確認
掲示義務との関係
掲示ナビは医療機関・薬局のウェブサイト掲示義務に対応するサービスなので、掲示との関係も整理しておきます。
重症化予防連携強化加算そのものは、算定の可否が診療報酬のルールで決まる点数で、これ自体を掲示するかどうかは別の話です。ただし歯科医院には、届け出た施設基準や算定する項目などについて、院内やウェブサイトに掲示すべき事項が別に定められています。歯科医院が掲示すべき項目の全体像は歯科の施設基準 掲示例・見本集や医科・歯科編 ウェブサイト掲示義務の掲示項目で確認できます。掲示ナビは厚生局への届出データを起点に掲示ページを自動生成するため、加算の出入りや改定があっても掲示内容が自動で追従し、届出と掲示の不整合を構造的に防げます。
まとめ
重症化予防連携強化加算について、要点を整理します。
- 歯周病継続支援治療(I011-2)の注4に置かれた加算で、点数は100点。単独ではなく歯周病継続支援治療に上乗せする
- 算定要件は、糖尿病で歯周病重症化のおそれのある患者に、医科からの情報に基づき実施し、医科の主治医へ治療内容・今後の方針を情報提供すること。連携先は医科(歯科診療のみの医療機関を除く)
- 「情報提供を行った場合に算定する」構造で、一度連携すれば以後自動で毎回つくものではない。一方、回数上限を明示した規定・疑義解釈は令和8年7月時点で確認できないため、回数は断定できず、迷うケースは支払基金・地方厚生局へ
- 旧「歯周病ハイリスク患者加算(80点)」との違いは、医科への情報提供が算定要件に加わった点。旧・歯周病安定期治療と重症化予防治療が歯周病継続支援治療に統合され、加算も再編された
- 診療情報等連携共有料は、それぞれの要件を満たせば算定して差し支えない(疑義解釈その5)
レセプトで迷ったら、「医科からの情報に基づいて実施し、医科へ情報提供した回か」に立ち返ると、算定できるかどうかが見えてきます。算定の入口を正確に押さえつつ、掲示物の管理のような本質ではない作業に時間を奪われないよう、仕組みに任せられるところは任せて、医療現場の時間を診療に取り戻していきましょう。
出典・参考
一次資料(厚生労働省)
- 診療報酬の算定方法(令和8年厚生労働省告示)別表第二 歯科診療報酬点数表 I011-2 歯周病継続支援治療(170点/200点/350点、注1=月1回、注2=2回目以降は前回実施月の翌月初日から2月経過日以降、注4=重症化予防連携強化加算100点) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001665293.pdf
- 厚生労働省保険局医療課「歯科診療報酬点数表に関する事項」(令和8年3月5日 保医発0305第6号 別添2、令和8年5月29日訂正後)I011-2 歯周病継続支援治療(10)(重症化予防連携強化加算=糖尿病で重症化のおそれのある患者に、医科からの情報に基づき実施し医科の主治医へ治療内容・今後の方針を情報提供した場合に算定、主治医からの文書を診療録に添付)・(11)(糖尿病を踏まえた歯周病管理の研修参加の努力) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001707252.pdf
- 厚生労働省保険局医療課「疑義解釈資料(その5)」(令和8年5月8日 事務連絡)別添3 歯科診療報酬点数表関係【歯周病継続支援治療】問1(歯周病安定期治療・歯周病重症化予防治療の歯周病継続支援治療への統合に伴う経過的取扱い)、問2(重症化予防連携強化加算と診療情報等連携共有料は要件を満たせば算定して差し支えない) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001698587.pdf




