歯科技工所ベースアップ支援料は外注の義歯修理で算定できる?クラスプ(鉤)修理の可否をQ&Aで解説

有床義歯のクラスプが外れたので、義歯を預かって外の技工所で直してもらった。その会計で、歯科技工所ベースアップ支援料をつけていいのか、レセプトの前で手が止まる。令和8年に新しくできた区分なうえ、6月末に疑義解釈が追加されたばかり。通知は読んだけれど、自院のこの修理が当てはまるのか自信が持てない。そんなふうにモヤっとした方は、少なくないはずです。
結論から言うと、この支援料を外注の義歯修理で取れるかどうかは、「その修理で有床義歯修理(の装着料)を算定しているか」で決まります。義歯を預かって修理し、有床義歯修理を算定するなら算定できます。一方、鉤(こう=クラスプ)の製作の技術料・材料料だけを算定して有床義歯修理を算定しない場合は、算定できません。6月末に出た疑義解釈が、まさにこのクラスプの外注ケースを名指しで整理しています。この記事では、その中身を一次資料で確認しながら、Q&A形式で整理します。
そもそも歯科技工所ベースアップ支援料とは
歯科技工所ベースアップ支援料は、令和8年度改定で新設された点数です。歯科医師が交付する歯科技工指示書に基づいて、補綴物などの製作を外の歯科技工所に委託したときに、その技工所に所属する歯科技工士の賃金改善を支える趣旨で算定します。1装置につき15点で、令和9年6月以降は所定点数の2倍(100分の200)で算定します。算定には施設基準の届出が必要で、賃上げの評価という性格を持つ点数です。ベースアップの評価という枠組み全体はベースアップ評価料とは?もあわせてどうぞ。
Q1. この支援料は、どんなときに算定する点数?
外の歯科技工所に、補綴物などの製作を委託したときに算定します。留意事項通知(点数表の各項目の運用を厚生労働省が示す文書)は、この支援料を「歯科技工指示書に基づき、補綴物等の製作等の委託を受けた歯科技工所に所属する歯科技工士の賃金の改善」を評価するものと位置づけ、施設基準を満たす保険医療機関が「補綴物等の製作等の委託を行った場合」に算定する、としています。
ここで大事なのは、これが「外注(委託)」を前提にした点数だという点です。次のQ2のとおり、院内で技工を行う場合は対象になりません。
Q2. 院内の歯科技工士が作った・直した場合は取れる?
取れません。留意事項通知は、歯科医師が交付した歯科技工指示書や歯科医師の直接の指示に基づいて、当該保険医療機関内の歯科技工士が補綴物などの製作や修理を行う場合には算定できない、と明記しています。あくまで外の歯科技工所に委託したケースが対象で、院内技工は対象外です。院内技工そのものを評価する歯科技工加算とは、名前は似ていますが評価の対象がまったく別なので、混同しないよう整理しておくと安心です。
Q3. 算定は「いつ」する? 装着との関係は?
この支援料は、補綴物などの「装着」の算定日にひもづけて算定します。留意事項通知は、装着(M005やN008の装着など)の算定日に算定する、としています。支台築造や暫間歯冠補綴装置など、装着の費用が含まれる区分については、それぞれの区分の算定日に算定します。
つまり、この支援料は単独でいつでも立つ点数ではなく、「装着(の算定)」を起点にひもづく点数だ、と押さえておくのがポイントです。これが、次のクラスプ修理の可否にそのまま効いてきます。
Q4. 外れたクラスプを外注で直した——支援料は取れる?
ここが、6月末(令和8年6月26日)に出た疑義解釈(その9)が名指しで整理したところです。疑義解釈は、鉤(こう=クラスプ)の製作などを歯科技工所に委託する場合について、次のように答えています。
- 鉤の製作に係る技術料・材料料のみを算定する場合 → 算定できない
- 鉤の製作や組込などに伴い、有床義歯修理を併せて算定する場合 → 義歯修理の装着料の算定時に、算定して差し支えない
言い換えると、分かれ目は「その修理で有床義歯修理(の装着料)を算定しているか」です。義歯を預かって修理し、有床義歯修理を算定するなら、その装着料の算定時に支援料も算定できます。一方、鉤の製作の技術料・材料料だけで、有床義歯修理を算定しないケースでは算定できません。疑義解釈その9の全体像は疑義解釈その9をわかりやすくでも整理しています。
Q5. 届出したとき、もう技工所が作り始めていた場合は?
対象になります。疑義解釈その9は、施設基準の届出時点で、すでに歯科技工所で補綴物などの製作を開始していた場合も対象になるとし、補綴物などの装着時に支援料を算定して差し支えない、としています。届出前に着手していたからといって、その分が一律に外れるわけではない、と考えると整理できます。
算定前のチェックリスト
外注の義歯修理でこの支援料を取っていいか迷ったら、次の順で確認すると整理できます。
- その製作・修理を、外の歯科技工所に委託したか(院内技工なら対象外)
- 補綴物などの「装着」を算定する場面か(この支援料は装着の算定日にひもづく)
- クラスプ(鉤)の外注では、「有床義歯修理を算定するか」が分かれ目。有床義歯修理を算定するなら、その装着料の算定時に支援料も算定できる
- 鉤の製作の技術料・材料料だけで、有床義歯修理を算定しない場合は算定できない
- 施設基準の届出を済ませているか(届出が算定の前提)
- 個別の当てはめに迷うケースは、所管の社会保険診療報酬支払基金・地方厚生局に確認
掲示義務との関係
掲示ナビは医療機関・薬局のウェブサイト掲示義務に対応するサービスなので、掲示との関係も整理しておきます。
歯科技工所ベースアップ支援料は施設基準の届出を要する点数です。医療機関には、施設基準を届け出て算定する項目などについて、院内やウェブに掲示すべき事項が別に定められています。歯科医院が掲示すべき項目の具体例は歯科の施設基準 掲示例・見本集や医科・歯科編 ウェブサイト掲示義務の掲示項目で確認できます。掲示ナビは厚生局への届出データを起点に掲示ページを自動生成するため、加算の出入りや改定があっても掲示内容が自動で追従し、届出と掲示の不整合を構造的に防げます。
まとめ
歯科技工所ベースアップ支援料と外注の義歯修理について、要点を整理します。
- この支援料は、補綴物などの製作を外の歯科技工所に委託したときに算定する点数(院内技工は対象外)
- 算定は「装着」の算定日にひもづく
- クラスプ(鉤)を外注で直したケースは、6月末の疑義解釈その9が名指しで整理。「有床義歯修理を算定するか」が分かれ目
- 有床義歯修理を算定するなら、その装着料の算定時に支援料も算定できる。鉤の製作の技術料・材料料だけで有床義歯修理を算定しないなら算定できない
- 届出時点で技工所が製作着手済みでも対象になる
会計で迷ったら、「その修理で有床義歯修理(の装着料)を算定しているか」に立ち返ると、支援料を取れるかどうかが見えてきます。算定の入口を正確に押さえつつ、掲示物の管理のような本質ではない作業に時間を奪われないよう、仕組みに任せられるところは任せて、医療現場の時間を診療に取り戻していきましょう。
出典・参考
一次資料(厚生労働省)
- 診療報酬の算定方法(令和8年厚生労働省告示)別表第二 歯科診療報酬点数表 P200 歯科技工所ベースアップ支援料(1装置につき15点、注1=施設基準の届出をした保険医療機関が委託を行った場合に算定、注2=令和9年6月以降は所定点数の100分の200) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001665293.pdf
- 厚生労働省保険局医療課「歯科診療報酬点数表に関する事項」(令和8年3月5日 保医発0305第6号 別添2、令和8年5月29日訂正後)P200 歯科技工所ベースアップ支援料(1)(歯科技工指示書に基づき補綴物等の製作等を委託した場合に算定・施設基準の届出)、(2)(院内の歯科技工士が製作・修理する場合は算定できない)、(3)(M005・N008の装着等の算定日に算定) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001707252.pdf
- 厚生労働省保険局医療課「疑義解釈資料(その9)」(令和8年6月26日 事務連絡)【歯科技工所ベースアップ支援料】問2(届出時点で製作開始済みでも対象)、問3(鉤の製作の技術料・材料料のみは算定不可/有床義歯修理を併せて算定する場合は義歯修理の装着料の算定時に算定可) https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001717147.pdf




