R8通知訂正で「在宅医療の基準緩和」が施設基準通知に正式反映|掲示への影響と5月中の点検ポイント
R8(令和8年度)診療報酬改定の関連通知について、2026年5月1日付で厚生労働省保険局医療課など(一部は老健局老人保健課との連名)から「一部訂正」の事務連絡(保医発・老老発の11本)が発出された。注目すべきは、4月21日の疑義解釈4で先行して示されていた在宅医療の基準緩和が、施設基準通知本体に正式に盛り込まれた点だ。在宅療養支援診療所・在宅療養支援病院、在宅時医学総合管理料、施設入居時等医学総合管理料を算定する医療機関にとって、自院の届出内容と院内・Web掲示の整合性を再点検する必要がある。本記事は、訂正の中身と「掲示への影響」を3分で把握できる形で整理する。
何が訂正されたか — 5月1日付事務連絡の位置づけ
訂正の正式名称は「令和8年度診療報酬改定関連通知及び官報掲載事項の一部訂正について」で、対象は次のような3月5日付通知群である。
- 「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」(保医発0305第6号)
- 「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」(保医発0305第7号)
- 「特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」(保医発0305第8号)
このうち在宅医療関連の緩和は、特掲診療料の施設基準通知(保医発0305第8号)に集中している。重要なのは、4月21日に公表された疑義解釈4で「こう運用してよい」と示された内容が、今回の訂正で通知本文そのものとして確定したことだ。Q&Aレベルではなく、施設基準通知の根拠条文に組み込まれたため、適時調査等で根拠を問われた際の判断軸が明確になる。
施行日は変わらず2026年6月1日。法定の届出期限は5月7日〜6月1日だが、厚労省は「下旬以降は混雑するため可能な限り早期に」と5月18日までの早期届出を推奨している。この5月18日(推奨期限)までの届出に向けて、5月後半は通知本体ベースで自院運用を再確認する局面に入る。
在宅医療充実体制加算 — 重度認知症患者対応で「1割5分」に緩和

最大の改正点は、在宅医療充実体制加算の重症患者割合要件である。
通常要件は「在宅時医学総合管理料・施設入居時等医学総合管理料・在宅がん医療総合診療料を算定する患者の延べ診療月数のうち、重症患者の割合が2割以上」(疑義解釈4 問20)。今回の訂正で、次の条件をすべて満たす場合に「1割5分以上」で要件を満たすとされることが正式化された。
- 適切なケアを行う重度の認知症患者であること(認知症自立度ⅣまたはMに該当)
- 当該患者本人・介護者への意思決定支援を継続的に実施
- 直近3か月以内に関係機関と情報共有・連絡調整を実施
- 当該認知症患者の延べ診療月数の割合が8分(8%)以上
- かつ当該認知症患者で在宅時医学総合管理料を算定する患者の延べ診療月数の割合が4分(4%)以上
「重度認知症患者の在宅医療を実際に担っている診療所であれば、重症患者割合のハードルが5ポイント下がる」という構造である。重症割合の母数計算で苦しんでいた施設にとっては、要件充足の現実味が変わる改正と言える。
訪問診療100人ルールに「0.5人みなし」が明文化

もう一つの実務インパクトが、訪問診療患者数のカウント方法だ。
在宅医療充実体制加算の要件には「常勤換算医師1人当たり訪問診療患者100人以下」がある。今回の訂正で、次に該当する患者は70人を上限として「0.5人」として計算してよい旨が施設基準通知に明記された。
- 在宅時医学総合管理料・施設入居時等医学総合管理料のうち単一建物診療患者2人以上として算定する患者
- 月1回の訪問診療を行っている患者
集合住宅型の在宅医療や、月1回の安定期患者を多く抱える診療所では、医師1人当たりのカウントが実質的に下がる。これまで「100人超過リスク」を理由に在宅医療充実体制加算の取得を見送ってきた施設は、要件再評価の好機である。
2026年8月の「往診実施基準該当可否確認・報告」が通知本文に明文化
もう一点見落としやすいのが、2026年8月のタイミングで在総管・施設総管を届け出る全ての医療機関に課される確認・報告義務が、今回の訂正で施設基準通知の本文に明文化された点である。
訂正された施設基準通知では、在宅時医学総合管理料・施設入居時等医学総合管理料を届け出ている全ての医療機関が、8月時点で往診実施基準に該当するか否かを自院で確認し、報告する旨が明確化された。新規に課された義務というより、既存ルールが通知本文として明文化された位置づけだが、「うちは在総管を算定しているが、往診実施基準は別の話」と整理してきた施設も、確認の枠組みから外れない。
8月時点の確認に向けて、月別の往診実績・対象患者リスト・記録の準備は、6月施行後すぐに着手したほうがよい。
自院ホームページ・院内掲示にどう効くか
ここからが掲示観点で最も大事な部分である。
R8改定では、在宅医療関連の加算多くが院内掲示およびWeb掲示を算定要件に含む。たとえば在宅療養支援診療所として届け出ている事実、在宅医療充実体制加算の届出有無、在宅時医学総合管理料の体制——いずれも自院サイト上に「届出内容」として掲示することが求められる。
今回の通知訂正で気をつけたいのは次の2点だ。
- 届出した要件(緩和を使ったか・通常要件か)と掲示文言の整合性: 重度認知症患者特例で緩和ルートの届出を行った施設は、自院掲示の文言も「重症患者割合の特例適用要件」を踏まえた書き方になっているか確認したい。
- 疑義解釈時点で先行更新した掲示の再点検: 4月下旬に疑義解釈4をベースに掲示を更新した施設は、5月1日訂正後の通知本文ベースで再点検する。Q&A引用ではなく、施設基準通知の表現に揃えるほうが、適時調査等で堅い。
「届出を直すたびに掲示も全部書き直す」という負荷は、R8改定の中でも在宅医療領域では特に重い。届出データ起点で掲示が自動追従する仕組みがあれば、この再点検サイクル自体が不要になる。掲示ナビは厚生局の届出データを元に院内・Web掲示を自動生成しているため、こうした通知訂正・疑義解釈による「掲示の二度手間」を構造的にゼロ化できる差別化を持つ。
5月中にやることチェックリスト
- 自院の在宅医療充実体制加算の届出ルート(通常要件 or 重度認知症特例)を確定する
- 訪問診療患者100人ルールに「0.5人みなし」を適用した場合の常勤換算医師数を再計算する
- 5月18日(厚労省推奨の早期届出期限。法定期限は5/7〜6/1)までの届出を、通知本文ベース(疑義解釈Q&Aベースでない)で確定させる
- 8月の往診実施基準該当可否確認に備え、6月以降の往診実績集計フローを準備する
- 自院ホームページ・院内掲示の「在宅医療充実体制加算」「在総管」関連の文言を、5月1日訂正後の通知表現に揃える
- 掲示更新の「次回いつ直すか」を決め打ちで設計せず、届出データに連動して自動更新する運用に切り替えるか検討する
まとめ
5月1日の通知訂正は、疑義解釈4(4月21日)で示された在宅医療の基準緩和を施設基準通知本体に格上げした位置づけにある。重度認知症患者対応の重症患者割合「1割5分」緩和、訪問診療100人ルールの「0.5人みなし」、8月の往診実施基準該当可否確認の通知本文への明文化、いずれも在宅医療を担う医療機関の実務に直接効く。
院内・Web掲示の世界では、疑義解釈ベースで先行整備した文言を、通知本文ベースに改めて揃え直す手間が発生する。これは2026年6月の改定施行で終わる話ではなく、次の改定・次の疑義解釈・次の通知訂正のたびに繰り返される構造的負担である。掲示ナビは、この負担を医療現場から取り除くために、厚生局の届出データを起点に掲示を自動生成・自動追従する仕組みを提供している。
参考文献
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定関連通知及び官報掲載事項の一部訂正について」(令和8年5月1日付・保医発0501、保険局医療課事務連絡)
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
- GemMed「2026年度診療報酬改定の関連通知等を訂正、疑義解釈で示された『在宅医療の基準緩和』など施設基準通知等に盛り込む」 https://gemmed.ghc-j.com/?p=74354
- GemMed「在宅医療充実体制加算、重度認知症患者対応を行う場合は『重症患者割合要件』を緩和―疑義解釈4【2026年度診療報酬改定】(3)」 https://gemmed.ghc-j.com/?p=74098
- 厚生労働省「疑義解釈資料の送付について(その4)」(令和8年4月21日、保険局医療課事務連絡) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001694332.pdf
