【令和9年3月施行想定】OTC類似薬が一部保険外療養に|77成分と薬剤費4分の1

令和8年9月3日の社会保障審議会医療保険部会で、OTC類似薬の保険給付見直しが議題に上がりました。資料は、9月中に仕組みをとりまとめ、令和9年3月に施行するというスケジュールを示しています。半年を切っています。
対象は77成分1,042品目。鼻炎、胃痛、便秘、解熱鎮痛、かぜ、腰痛・肩こり、みずむし、口内炎、皮膚のかゆみ・乾燥肌。日常的に処方している薬が並びます。窓口では、薬剤費の4分の1を患者さんに別途いただくことになります。
まだ決まりきっていない部分もあります。何が固まっていて何が固まっていないのかを、9月3日時点の資料で切り分けます。
制度の名前は「一部保険外療養」
まず正式な呼び名です。「OTC類似薬」は通称で、制度としては一部保険外療養といいます。根拠は「健康保険法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第31号、令和8年6月5日公布)で、健康保険法だけでなく国民健康保険法や高齢者の医療の確保に関する法律などをまとめて改正した法律です。その概要にはこう書かれています。
① OTC医薬品との代替性が特に高い薬剤を用いた療養等について、薬剤費の一部を保険給付外とする一部保険外療養を創設する。
制度の趣旨はこう説明されています。
OTC医薬品(要指導医薬品又は一般用医薬品)との代替性が特に高い薬剤を用いた療養その他の適正な医療の提供を確保しつつ、公平かつ効率的な保険給付を行う必要性に鑑みその要する費用のうち一部を保険給付の対象としないものとする療養として厚生労働大臣が定めるもの(「一部保険外療養」という。)を創設。(令和9年3月施行を想定)
「保険給付の対象としない」部分をつくる、という建て付けです。全額が保険外になるわけではなく、薬剤費の一部が外れます。
施行日は「想定」で、まだ政令待ちです
ここは正確に押さえておきたいところです。改正法の施行期日はこう定められています。
令和9年4月1日(ただし、2④及び4①は公布日、3①は令和8年8月1日、3②の一部は令和9年1月1日、1①は公布(令和8年6月)後1年以内に政令で定める日、2①及び②は公布後2年以内に政令で定める日、1②は公布後5年以内に政令で定める日等)
一部保険外療養は「1①」にあたるので、公布(令和8年6月5日)後1年以内に政令で定める日が施行日になります。資料が書いているのは「令和9年3月施行を想定」で、政令で日が確定したという記載ではありません。3月という数字は、あくまで想定として受け取るのが正確です。
スケジュールはこう示されています。
令和8年9月中 OTC類似薬の一部保険外療養の仕組みについてのとりまとめ 国による患者や医療従事者への周知 医療現場、審査支払機関等の施行準備 令和9年3月 OTC類似薬の一部保険外療養の施行
つまり今月がとりまとめの月です。この記事の内容も、9月中に固まる部分があります。
対象は77成分1,042品目、料金は薬剤費の4分の1
対象範囲と料金は、次のように示されています。
対象医薬品の範囲:77成分(1,042品目) 主な対応症状は、鼻炎、胃痛・胸やけ、便秘、解熱・痛み止め、風邪症状全般、腰痛・肩こり、みずむし、口内炎、皮膚のかゆみ・乾燥肌 等。 特別の料金:対象薬剤の薬剤費の1/4
選び方も機械的です。
OTC医薬品と成分・投与経路が同一で、一日最大用量が異ならない医療用医薬品を機械的に選定。
品目数には注記が付いています。「品目は令和8年8月1日時点」。さらに別の資料では、財政効果の見込みについて「その後の配慮の在り方の検討や対象成分の入れ替えにより多少の変動が見込まれる」とも書かれています。77成分1,042品目は、いまの時点の数字だと理解しておくのが安全です。
なお、これらは告示で定める事項とされており、特別の料金には別途消費税がかかる旨も注記されています。
窓口はどう動くのか
9月3日の資料には、院外処方の場合の実務フローが載っています。医療機関側が2段階、薬局側が2段階です。
❶ 外形的な基準の確認は、診察前でも判断できる部分です。処方する医薬品が対象77成分に該当するか。該当しても、18歳年度末の者か、生活保護の医療扶助か。そして、処方の対象疾患がOTC医薬品では対応していない効能・効果か。いずれかに当たれば対象外になります。
資料には、確認の手立てについて注記があります。年齢や医療扶助かどうかは「マイナ保険証や医療券等により把握可能」、OTC医薬品が対応していない効能・効果の一覧等も「国で公表」とされています。
❷ 医師による確認は、診察を踏まえて判断する部分です。がん、指定難病に関連する治療か。公費負担医療か。処置、手術、検査に伴う処方(14日以内分)か。年間の服用等が医療上必要か。対象となる成分については、妊婦・妊娠の可能性・授乳か。ここは「国が判断基準、具体例等を示す」とされています。
判断の結果は、どちらに転んでも記載が必要です。対象外と判断した場合は2か所。
・対象外の理由をレセプトに記載 ・処方箋に対象外であることを記載
対象と判断した場合も、処方箋への記載が求められています。
・処方箋に対象であることを記載
つまり対象・対象外のどちらでも、処方箋に判断結果を書く設計です。薬局はその記載を見て動くことになります。
❸ 患者への別途の負担の説明と❹ 薬剤費の4分の1の支払いが薬局側です。フロー図には「必要に応じ疑義照会」と添えられています。
医師の判断材料については、資料にこう書かれています。
医師の判断に資する情報が可能な限り現場のシステム等に反映されるよう、分かりやすい基準の設定・公表に努める。
レセコンや電子カルテ側の対応が前提になる制度設計だと読めます。ベンダーの対応予定は、早めに確認しておいたほうがよさそうです。
長期収載品の選定療養とは重ならない
掲示や患者説明の観点で、いちばん確認しておきたいのがここです。資料の脚注に、はっきり書かれています。
※ 制度が複雑化しないよう、OTC類似薬の一部保険外療養に該当する場合は、長期収載品の選定療養の特別の料金は求めないこととする。
一部保険外療養に該当するなら、長期収載品の選定療養の特別の料金は取らない。両方を重ねて徴収する制度ではありません。長期収載品の選定療養そのものについては

長期収載品の選定療養、説明すれば必ず特別料金を取れる?取れる条件をQ&Aで整理
長期収載品の選定療養、説明して同意をもらえば特別の料金は必ず取れる?取れるかは「説明したから」ではなく「対象に該当するか」で決まります。徴収の3条件、医療上の必要性の四類型、後発品の在庫無しの扱い、令和8年6月からの『価格差の2分の1+消費税』、掲示までQ&Aで整理します。
と

長期収載品の選定療養 2026/6/1 から「2分の1」へ Web掲示更新ガイド
長期収載品の選定療養における「特別の料金」の計算が、2026年6月1日から価格差の4分の1から2分の1へ引き上げられます。Web掲示の必須記載項目・文例・窓口説明スクリプトを厚労省一次資料に基づいて整理しました。
にまとめています。
なお、掲示義務がどうなるかについては、9月3日時点の資料に記載がありません。保険外併用療養費と実費徴収の違いについては

保険外併用療養費と実費徴収の違いとは?掲示義務と2026年6月の追加項目を解説
差額ベッド代などの「保険外併用療養費」と、Wi-Fi利用料や診断書代などの「実費徴収」は同じ保険外でも扱いが異なります。厚生局報告の有無・掲示の決まり方の違いと、2026年6月に追加された4項目、院内・Web掲示義務までを医科・歯科・薬局向けに整理します。
で整理していますが、本制度の掲示上の扱いは今後の情報を待つところです。
対象外になる人・場面
中間とりまとめでは、別途の負担を求めない者・療養が例として示されています。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| がん患者 | がんと関連ない症状は負担対象 |
| 指定難病患者(軽度者も含む) | 指定難病と関連ない症状は負担対象 |
| 国の公費負担医療の受給者 | 公費負担と関連ない症状は負担対象 |
| 入院中(退院時を含む)の処方 | — |
| 処置等に伴う処方 | 14日分まで |
| 内服薬 | 50週を超える場合は対象外 |
| 外用薬 | 長期使用にエビデンスがある場合を除き負担対象(湿布・保湿剤等は条件付きで令和10年度末までの経過措置) |
| 妊婦・妊娠している可能性がある女性・授乳婦 | OTC添付文書に「服用しない」と記載されているもの |
外用薬には経過措置が置かれています。部会資料の概要にはこう書かれています。
※ただし、一定の重症患者への長期使用の実態を踏まえ、湿布・皮膚保湿剤等は別途の負担の対象外とする令和10年度末までの経過措置を講じて、それまでに診療ガイドラインのエビデンスの状況等を踏まえ、必要な見直しを行う。
ここは要注意です。「湿布と保湿剤は令和10年度末まで対象外」と読めてしまいますが、中間とりまとめの本体を見ると、かなり重い条件が付いています。
鎮痛消炎剤の外用薬について、本体はこう書いています。
このため、令和 10 年度末までの経過措置として、鎮痛消炎剤の外用薬については、疼痛等の自覚症状が持続しこれまで通年で使用しているだけでなく、画像検査などで慢性かつ重度の疾患(例:変形性膝関節症における Kellgren–Lawrence(KL)分類の Grade4)であることが客観的に確認され、医師が年間を通じた疼痛管理として継続使用が医療上必要と判断し、毎日使用することを指示して処方する場合に限り、別途の負担の対象外と整理する。
通年で使っているだけでは足りず、画像検査などで慢性かつ重度であることの客観的な確認と、毎日使用する旨の指示が要る、という整理です。
皮膚保湿剤等も同様に条件付きです。
皮膚保湿剤・皮膚保護剤・角化症治療剤については、これまで通年で使用しているだけでなく、症状または疾患活動性が十分に改善せず、外用薬だけでなく、免疫抑制剤等による全身療法を併用した治療歴(例:直近1年以内)がある場合は重症と考えることが出来ることから、令和 10 年度末までの経過措置として、当該患者に対して毎日使用することを指示して処方する場合に限り、別途の負担の対象外と整理する。
なお経過措置とは別に、アトピー性皮膚炎のヘパリン類似物質と尿素については、通年で毎日継続して使用する場合は対象外と整理されています。診療ガイドラインで有効性や必要性が明確に示されているのがこの2つに限られる、というのが理由です。
つまり湿布や保湿剤が一律に外れるわけではありません。重症であることの裏づけと、毎日使用の指示がセットで求められています。
低所得者の扱いについては、資料はこう書いています。
「低所得者」として別途の負担の対象外とするのは、生活保護受給者とすると国会の法案審議で議論が行われている。
「議論が行われている」という書きぶりで、確定形では書かれていません。
9月3日に「さらに明確化」とされた3点
今回の部会資料は、寄せられた意見のうち、さらに明確化が必要な事項として3点を挙げています。
ひとつめは、長期使用の50週の確認です。現場負担、がん治療終了後の後遺症に対する薬物療法、周期的・反復的な処方について意見が出たことを踏まえ、「1年という単位の中で、医師が年間を通じた症状の持続と治療の継続性を確認し、対象医薬品の長期使用等が医療上必要である場合」の具体的な適用例を明確にする、という論点です。
ふたつめは、アトピー性皮膚炎に対するステロイド外用薬のプロアクティブ療法です。資料は「診療ガイドラインに位置づけられた計画的な間欠使用である」と整理したうえで、長期使用等の例外としてどう扱うかを論点にしています。
みっつめは、指定難病患者等の確認方法です。登録者証等の普及状況や医療現場の確認負担を踏まえ、患者が提示する書類で簡便かつ客観的に確認できる方法をどう整備するか、とされています。
検討にあたっての視点も示されています。
・ 医療機関及び薬局における確認・判断が過度に複雑にならないこと ・ 医師又は医療機関による判断のばらつきを抑え、患者にとって負担の納得感が得られるようにすること ・ 他の別途の負担を求めない者・療養との間に、制度上の大きな不均衡が生じないこと
裏を返せば、9月3日時点では、この3点はまだ固まっていません。
いま準備できること
第一に、情報を追う体制です。9月中にとりまとめが出ます。この記事で「論点」として挙げた部分は、そこで形が変わる可能性があります。
第二に、頻用薬との重なりの見当をつけることです。鼻炎、胃薬、便秘薬、解熱鎮痛、かぜ、湿布、みずむし、口内炎、保湿剤。自院・自局でよく出す薬がどれだけ入るかで、影響の大きさが変わります。
第三に、システムです。対象外の場合はレセプトへの理由記載と処方箋への記載が要る見込みです。レセコン・電子カルテのベンダーに、対応予定を聞いておく価値があります。
第四に、薬局の説明導線です。患者さんへの説明と徴収が薬局側の役割になります。窓口でのトラブルを避けるための説明の型を、いまから考えておけます。
第五に、院内ルールを作り込みすぎないことです。50週の運用もプロアクティブ療法の扱いも指定難病の確認方法も、まだ論点の段階です。固まってから作るほうが手戻りがありません。
選定療養まわりの掲示の考え方は

2026年6月改定で変わる選定療養、4つの告示と掲示対応
2026年6月1日施行の令和8年厚労省告示第116号で、長期収載品の負担が1/2へ、時間外調剤や近視抑制薬も選定療養に追加されました。現場で押さえる掲示・説明・金額設定・Web掲載のポイントを1本で整理します。
に、掲示事項の全体像は

厚生労働大臣が定める掲示事項とは?医科・歯科・薬局別に全項目を解説
厚生労働大臣が定める掲示事項の全体像を医科・歯科・薬局別に解説。令和6年度改定でウェブサイト掲載が義務化された背景や、対応していない場合のリスクについても説明します。
にまとめています。
まとめ
OTC類似薬の保険給付見直しは、「一部保険外療養」という制度として、健康保険法等の一部を改正する法律(令和8年法律第31号)で創設されました。対象は77成分1,042品目、患者さんの負担は薬剤費の4分の1です。
施行は令和9年3月が想定されていますが、法律上は公布後1年以内に政令で定める日とされており、日付が確定したわけではありません。仕組みのとりまとめは令和8年9月中の予定で、いまがその月にあたります。
窓口では、医療機関が外形的な基準と医師の判断で対象かどうかを確認し、判断結果を処方箋に記載する。対象外の場合は理由をレセプトにも記載する。薬局が患者さんに説明し、薬剤費の4分の1を徴収する。この流れが示されています。一部保険外療養に該当する場合、長期収載品の選定療養の特別の料金は求めません。
一方で、50週の確認、プロアクティブ療法の扱い、指定難病の確認方法は、9月3日時点でまだ論点として残っています。院内ルールを作り込むのは、9月中のとりまとめを見てからでよさそうです。
掲示ナビでは厚生局の届出データをもとに掲示ページを自動生成しているため、届出内容が変われば掲示も自動で追従します。掲示物の管理に時間を取られず、こうした制度の動きを追う余力を残すことが、開発の出発点だったと聞いています。
出典・参考
一次資料(厚生労働省・厚生局・支払基金 等)
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厚生労働省保険局「OTC類似薬の保険給付の見直しの実施について」(令和8年9月3日 第214回社会保障審議会医療保険部会 資料2) https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001744962.pdf
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厚生労働省保険局「OTC類似薬の保険給付の見直しの実施について」(令和8年8月27日 第213回社会保障審議会医療保険部会 資料1) https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001742888.pdf
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厚生労働省保険局「OTC類似薬の保険給付の見直しの実施について」(令和8年8月26日 中央社会保険医療協議会 総会 総-2) https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001742587.pdf
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OTC類似薬の保険給付の見直しの実施に向けた技術的検討会「OTC類似薬の保険給付の見直しの実施に向けた中間とりまとめ」(令和8年8月6日) https://www.mhlw.go.jp/content/12403550/001734914.pdf
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厚生労働省保険局「健康保険法等の一部を改正する法律(令和8年法律第31号)の成立について」(令和8年6月18日 第212回社会保障審議会医療保険部会 資料1) https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001712849.pdf
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厚生労働省「第214回社会保障審議会医療保険部会(ペーパーレス)資料」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_75969.html
二次資料(業界誌・専門サイト)
- 本記事の内容は上記の一次資料のみに基づいて記述しており、解釈の追加は行っていません。制度は令和8年9月中のとりまとめに向けて検討が続いています。最新の内容は厚生労働省の公表資料をご確認ください。




