CPAPの使用時間記載と算定ルールとは?導入直後の患者の算定可否を解説

CPAP(睡眠時無呼吸症候群の患者が在宅で使う持続陽圧呼吸療法)を始めたばかりの患者さんで、「使用時間の記載、どうするんだっけ」とレセプト点検の手が止まる。始めたての患者さんはそもそも過去の使用時間データがまだ無いので、「空欄にして査定されないか」とモヤッとする――在宅でCPAP管理をしている医療機関なら、この感覚に心当たりがある方は少なくないはずです。
迷いの正体は、令和8年度改定で在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料に「使用時間を見て算定可否を判断する」新しい条件が入ったことにあります。結論から言えば、導入直後の患者さんには通知に明確なただし書が置かれていて、心配はいりません。この記事では、CPAPの使用時間に関する令和8年度改定の算定ルールと、導入直後の患者の扱い・記載の考え方を、一次資料ベースで整理します。
令和8年度改定でCPAPの使用時間ルールはどう変わったか
令和8年度(2026年)の診療報酬改定で、在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料2(区分番号C107-2)に、CPAPの1日平均使用時間を踏まえて算定可否を判断する条件が新しく設けられました。改定前にはなかった算定除外の条件で、いわば「使っていない実態が続くなら管理料は算定しない」という趣旨です。
この条件があるため、各月の1日平均使用時間を見る必要が出てきました。ところが導入したばかりの患者は、過去の月の使用時間データが物理的に存在しません。ここで「データが揃わない=算定できないのでは」「記載できない月は空欄でいいのか」という迷いが生まれます。まずは新しい算定除外の条件そのものを正確に押さえます。
在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料2の算定除外条件
令和8年度改定の留意事項通知(保医発0305第6号・令和8年3月5日)では、CPAP療法を実施している睡眠時無呼吸症候群の患者(入院中の患者を除く)について、おおむね次のように定められています。
当該指導管理を実施する月の前月までの3月の間、すべての月で1月当たりの1日平均使用時間が1時間未満である場合には、当該指導管理料を算定しない。
ここで読み違えやすいのが判定のロジックです。算定できなくなるのは「前月までの3か月がすべて1時間未満」のときだけです。逆に言えば、直近3か月のうち1か月でも1日平均使用時間が1時間以上であれば、ふつうに算定できます。「3か月分のデータが揃わないと算定できない」という意味ではありません。
この条件が当てはまる患者の範囲
この使用時間による算定除外が当てはまるのは、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診断にもとづいてCPAP療法を行っている患者(入院中の患者を除く)です。同じ在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料2でも、ASV(適応補助換気)など慢性心不全に対して行う区分には、この使用時間の条件は及びません。自院の患者がどの要件で算定しているかを取り違えないことが出発点になります。
導入直後の患者はどうなる? ― 「開始3月以内」のただし書
ここが冒頭のモヤモヤへの直接の答えです。同じ通知の同じ項目に、はっきりとただし書が置かれています。
ただし、当該保険医療機関においてCPAP療法を開始してから3月以内の患者については、この限りでない。
つまり、自院でCPAP療法を開始してから3か月以内の患者は、「前月までの3か月がすべて1時間未満なら算定しない」というルールの適用対象外です。3か月前のデータが無いことを理由に、算定できなくなることはありません。
5月や6月にCPAPを導入したばかりの患者であれば、まさにこの「開始から3月以内」に該当します。過去3か月分が揃っていないことを心配する必要はなく、導入直後でも落ち着いて算定して差し支えありません。開始から3か月を超え、前月までの3か月分のデータが揃った段階で、はじめて通常の算定可否判定(3か月すべて1時間未満なら算定しない)に乗ることになります。
判断の軸は「3か月分のデータが揃っているか」ではなく、「CPAP療法の開始から3か月以内かどうか」です。ここを取り違えなければ、導入直後の患者で手が止まることはなくなります。
使用時間の記載 ― 診療録とレセプト摘要欄
では、肝心の使用時間の記載はどうするか。考え方はシンプルです。
存在しない月(まだ療法を始めていない3か月前など)の1日平均使用時間は、記載しようがないので記載の対象外です。一方で、実在する月(実際にCPAPを使用している月)の1日平均使用時間は、モニタリングしたうえで記載します。「記載しなくていい」のは、あくまでデータが物理的に存在しない月の話であって、モニタリングと記載の考え方そのものを免除するものではありません。
CPAPの使用時間の診療録記載は、持続陽圧呼吸療法充実管理体制加算を算定する医院に求められる要件です。充実管理体制加算を算定する場合は、その月に管理料を算定するかどうかにかかわらず、入院中以外のすべての患者についてCPAP療法の1日平均使用時間を診療録に記載します。この記載は導入直後の患者であっても、実際に使用している月から対象になります。レセプトの摘要欄に各月の1日平均使用時間の記載を求められる場合も、考え方は同じで、実在する月のデータを記載します。
算定前に確認することを整理すると、次のとおりです。
- その患者は在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料2を、CPAP(睡眠時無呼吸症候群)で算定しているか
- CPAP療法の開始から3か月以内か(以内なら使用時間による算定除外の対象外)
- 実在する月の1日平均使用時間を、モニタリングのうえ記載しているか
この3点が整えば、導入直後の患者でも迷わず算定できます。なお、開始月の起算の数え方や、途中で機器を変更したケースなど個別の判断は、所管の地方厚生局や審査支払機関に確認するのが確実です。
掲示義務との関係
掲示ナビは医療機関・薬局のウェブサイト掲示義務に対応するサービスなので、掲示との関係も整理しておきます。
ウェブサイト掲示義務(自院のホームページがある場合に、掲示事項をウェブにも掲載する義務。令和6年度改定で原則化されました)の対象になるのは、主に施設基準を届け出て算定する項目です。在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料そのものは、要件を満たした診療ごとに算定する指導管理料であり、「この管理料を算定しています」と個別にウェブ掲示しなければならない性質のものではありません。
一方で、関連する施設基準(持続陽圧呼吸療法充実管理体制加算など)を届け出ている場合は、その届け出た施設基準が院内・ウェブ掲示の対象になります。掲示で実際に問われやすいのは、届け出ている内容と院内・ウェブの掲示がずれていないか、です。届け出ているのに掲示にない、改定で要件が変わったのに古い掲示が残っている、というズレが適時調査や個別指導で指摘されます。どの施設基準を掲示すべきかの全体像は、Web掲示が算定要件の加算【完全リスト】で整理しています。掲示ナビは厚生局への届出データを起点に掲示ページを自動生成するため、加算の出入りや改定があっても掲示内容が自動で追従し、この「届出と掲示の不整合」を構造的に防げます。
まとめ
CPAPの使用時間記載と算定ルールについて、要点を整理します。
- 令和8年度改定で、在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料2(C107-2)に、CPAPの1日平均使用時間による算定除外の条件が新設された
- 算定しないのは「前月までの3か月がすべて1時間未満」のときだけ。1か月でも1時間以上ならふつうに算定できる
- CPAP療法の開始から3か月以内の患者は、このルールの対象外。導入直後でデータが揃わなくても算定できる
- 存在しない月の使用時間は記載対象外。実在する月の1日平均使用時間はモニタリングのうえ記載する
- 判断の軸は「3か月分が揃っているか」ではなく「開始から3か月以内かどうか」
- 在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料そのものは届出施設基準ではないが、関連する施設基準を届け出ている場合は掲示の対象になる
「導入直後の患者の使用時間をどう記載するか」というモヤモヤは、通知のただし書ひとつで解けます。在宅医療の現場では、関連する在宅療養指導管理料の併算定ルールなど、令和8年度改定で確認すべき論点がいくつも重なります。算定の入口は正確に押さえつつ、掲示物の管理のような本質ではない作業に時間を奪われないよう、仕組みに任せられるところは任せて、医療現場の時間を診療に取り戻していきましょう。
出典・参考
一次資料(厚生労働省・点数表)
- 厚生労働省保険局医療課「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」(保医発0305第6号・令和8年3月5日)別添1 区分番号C107-2 在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001713882.pdf
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
二次資料(専門サイト)
- しろぼんねっと「C107-2 在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料(医科診療報酬点数表 令和8年)」 https://shirobon.net/medicalfee/latest/ika/r08_ika/r08i_ch2/r08i2_pa2/r08i22_sec2/r08i222_sub1/r08i2221_C107_2.html




