【令和8年7月17日】院内掲示はデジタルサイネージでOK、ただし紙の控えが必要|疑義解釈その10で全業態に拡大

院内の掲示物を、モニターやデジタルサイネージで表示していいのか。この問いに、厚生労働省が令和8年7月17日、あらためて「差し支えない」と答えました。しかも今回は、医科・歯科・薬局・訪問看護のすべてが対象です。
ただし、無条件ではありません。「数分以内に全部が一巡すること」と「紙の控えを備え付けること」が条件として付いています。この記事では、令和8年7月17日の疑義解釈その10で何が示されたのかを、一次資料で正確に整理します。
何が起きたか ― 疑義解釈その10で掲示のデジタル表示が示された
厚生労働省保険局医療課は、令和8年7月17日付の事務連絡「疑義解釈資料の送付について(その10)」を出しました。疑義解釈とは、診療報酬改定の運用で生じた疑問に厚生労働省が公式に回答するQ&A集です。その10の別添5「掲示事項関係」に、院内掲示をデジタルサイネージで行ってよいか、という問いが載っています。
問いはこうです。「保険医療機関、保険薬局及び訪問看護ステーションにおいて、…各規則、告示及び通知により、保険医療機関等内に掲示することと定められている事項について、電子的表示(デジタルサイネージ等)による掲示を行ってよいか」。
答えは「差し支えない」。院内に掲示することが定められている掲示事項を、紙ではなくモニターやデジタルサイネージで表示してよい、と明言されました。
認められたのは「条件付き」 ― 3つの条件
ただし、答えには「ただし」以降が続きます。デジタル表示にするなら、次の条件を満たす必要があります。
- 視認できること ── 利用者が容易に視認し、その内容を適切に確認できるようにすること。
- 数分以内に一巡すること ── 表示内容を一定時間ごとに切り替えて表示する方式(スライドショーのように順番に切り替える方式)を使う場合でも、「数分以内に一巡して表示される等、利用者が当該内容を全て確認できる状態を確保すること」。つまり、患者さんが待っているあいだに、掲示すべき内容が一通り流れて全部見られる状態にしておく必要があります。切り替えが遅すぎて、目的の項目にたどり着く前に呼ばれてしまう、という状態は認められません。
- 紙の控えを備え付けること ── 「利用者から求めがあった場合に速やかに閲覧に供することができるよう、掲示内容を記載した紙媒体を保険医療機関等内に備え付け、当該掲示内容を紙媒体で閲覧できる旨を表示すること」。デジタルサイネージにしても、紙で見たいと言われたらすぐ出せるように、紙の控えを院内に置き、「紙でも見られます」と案内しておく必要があります。
加えて、健康保険法以外の法令にも注意が必要です。答えの最後には「『医療法』等、健康保険法以外の法令に基づき掲示が求められている事項については、それぞれの法令の規定に従うこと」とあります。診療報酬の掲示事項はデジタルでよくても、医療法など別の法律で掲示が求められている事項は、その法律のルールに従う必要がある、ということです。
なお、文字の大きさや画面の明るさといった技術的な数値基準は、今回の回答には示されていません。「容易に視認できる」という一般的な表現にとどまっています。
実は5月から変わっている ― 薬局限定から全業態へ
この論点、5月にも一度出ていました。ただし内容が変わっています。
もともと、令和8年5月29日の疑義解釈その7でも、薬局向けに電子的表示による掲示を認める同趣旨の回答が示されていました。今回のその10は、その冒頭で「疑義解釈資料の送付について(その7)別添3の問7は、廃止します」と明記し、その薬局向けの回答を正式に取り下げたうえで、新しい回答に差し替えています。
差し替えのポイントは2つです。ひとつは対象範囲。今回の問いは「保険医療機関、保険薬局及び訪問看護ステーションにおいて」と書かれており、薬局だけでなく、医科・歯科の医療機関と訪問看護ステーションまで含む全業態が対象になりました。もうひとつは条件の明確化で、一巡の速さを「数分以内」と具体的に示し、紙の控えについても「紙媒体で閲覧できる旨を表示する」ことまで求めています。
したがって、いま参照すべきなのはその7ではなく、令和8年7月17日のその10です。薬局のデジタルサイネージについて、その7の段階のルールで理解していた場合は、その10の条件に更新してください。その7で確定していた掲示ルールの全体像は

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で整理しています。
勘違いしやすい点 ― これは「院内掲示の見せ方」の話
ここで、混同しやすい点を整理しておきます。
今回の回答は、院内に掲示する事項を「どの媒体で見せるか」という話です。紙で掲示するか、モニターで表示するか、という掲示の手段が広がった、と考えると分かりやすいです。院内掲示そのものが不要になったわけでも、掲示すべき項目が減ったわけでもありません。
また、これは自院のホームページに掲示事項を載せるWeb掲示義務(令和6年度改定で原則義務化された、ホームページを持つ医療機関が院内掲示事項をウェブサイトにも掲載する義務)とも別の話です。デジタルサイネージが認められたからといって、Web掲示義務がなくなるわけではありません。院内はデジタルサイネージ、ホームページはWeb掲載、というように、それぞれの掲示は引き続き必要です。Web掲示義務の全体像は

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にまとめています。
クリニック・薬局が確認しておくこと
すでにモニターやデジタルサイネージで掲示している、あるいはこれから導入を考えている場合、確認しておきたいのは次の点です。
- 掲示事項が数分以内に一巡して、患者さんが全部確認できる状態になっているか。項目が多くて一巡に時間がかかりすぎていないか。
- 紙の控えを院内に備え付けているか。「紙でも閲覧できます」という案内を掲示しているか。
- 医療法など、診療報酬以外の法令で掲示が求められている事項について、その法令のルールを外していないか。
デジタルサイネージにすれば紙の掲示が一切要らなくなる、と考えがちですが、今回の条件では紙の控えの備え付けと、その旨の表示がセットで求められています。デジタルにしても、紙の内容と一致した控えを用意しておく必要がある、という点は押さえておきたいところです。
掲示ナビとの関係 ― Web・院内・紙の控えを同じデータで揃える
今回の条件で見落とせないのが、「デジタルにしても紙の控えが要る」という部分です。デジタルサイネージの表示内容と、備え付ける紙の控えと、ホームページのWeb掲示。この3つの内容がずれていると、求めに応じて出した紙とモニターの表示が食い違う、といった事態になりかねません。
掲示ナビは、厚生局への届出データを起点に掲示ページを生成し、同じ内容をWeb掲示として表示できるほか、PDFやPPTXでも出力できるしくみです。ホームページのWeb掲示、院内のデジタルサイネージに流す元データ、そして備え付ける紙の控えを、同一のデータから揃えられます。制度が動いて掲示内容が変わっても、Webも紙も同時に追従するので、「モニターは新しいのに紙の控えが古い」といったずれが起きにくくなります。掲示物の管理に手を取られず、その時間を医療に充てる ── それが本来のねらいです。
まとめ
令和8年7月17日の疑義解釈その10で、院内掲示をデジタルサイネージなど電子的表示で行うことが、医科・歯科・薬局・訪問看護のすべてで「差し支えない」と示されました。ただし条件が3つあります。数分以内に全内容が一巡して確認できること、紙の控えを院内に備え付けること、紙で閲覧できる旨を表示すること。加えて、医療法など別の法令で求められる掲示は、その法令に従います。
この回答は、5月の疑義解釈その7で薬局向けに示されていたものを廃止し、全業態に広げて条件を明確化したものです。参照すべきはその10です。デジタルサイネージにしても紙の控えが必要になる以上、Web・院内・紙の3つの内容を同じデータで揃えておくことが、これからの掲示運用の要になります。
出典・参考
一次資料
- 厚生労働省保険局医療課「疑義解釈資料の送付について(その10)」(令和8年7月17日事務連絡) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001725624.pdf




