疑義解釈その9(令和8年6月26日)をわかりやすく|医科・歯科・薬局の改定Q&A総まとめ

令和8年6月26日、厚生労働省から令和8年度診療報酬改定の疑義解釈(その9)が出されました。今回は別添1から別添7まであり、医科・歯科・薬局(調剤)・訪問看護と、ほぼすべての業態にまたがる内容です。「数が多くてどれが自院に関係するのか分かりにくい」という方のために、この記事では疑義解釈その9の要点を業態別にわかりやすく整理します。
疑義解釈とは、厚生労働省が改定後の診療報酬の取扱いについて、現場から寄せられた疑問に答える形で出す事務連絡です。通知(保医発)の解釈を補完する運用上の根拠として実務で参照されるため、内容を確認して算定・届出に反映する必要があります。
疑義解釈その9の全体像
その9は、令和8年3月5日の保医発0305第6号などにもとづく令和8年6月1日施行分の取扱いについて、別添1から別添7までをまとめたものです。それぞれの対象は次のとおりです。
| 別添 | 対象 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 別添1 | 医科 | 心不全再入院予防継続管理料、在宅医療充実体制加算、口腔管理連携加算 ほか |
| 別添2 | 看護職員処遇改善評価料・ベースアップ評価料 | 入院基本料等の減算の救済、歯科技工所ベースアップ支援料 |
| 別添3 | 医科(DPC) | 診断群分類「重症薬疹」 |
| 別添4 | 医科・歯科共通 | 健診と同一日の別受診の取扱い |
| 別添5 | 歯科 | 特別管理加算、3次元プリント有床義歯 ほか |
| 別添6 | 調剤(薬局) | 地域支援・医薬品供給対応体制加算、訪問薬剤管理医師同時指導料 |
| 別添7 | 訪問看護 | 包括型訪問看護療養費の届出 |
以下、関心の高いものから順に見ていきます。
まず確認したい:ベースアップ評価料・入院基本料等の減算の救済(別添2)
今回いちばん時間的に急ぐのが、別添2の問1です。看護職員処遇改善やベースアップに関する一定の取組をしていない場合の「入院基本料等の減算」を免除してもらうには、様式98で施設基準の届出をする必要がありますが、これが令和8年6月1日までに間に合わなかった場合の救済が示されました。
- アに該当する場合:令和8年3月31日時点で入院ベースアップ評価料を届け出ていた医療機関、または同時点で外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)を届け出ていた有床診療所は、6月・7月診療分は届出があったものとみなされ減算の対象になりません。ただし令和8年8月3日(月)までに様式98で届出を行わないと、8月診療分から減算の対象になります。
- イに該当する場合:アに当てはまらず一定水準以上のベースアップ等を行った医療機関(一部は有床診療所に限る)や、令和8年6月1日以降に新規開設した医療機関は、6月・7月診療分の届出を令和8年7月3日(金)までに行えば、6月以降の診療分は減算の対象になりません。
いずれも締切が迫っているため、自院がどちらに該当するかを早めに確認しておきたい論点です。ベースアップ評価料そのものの再届出については現算定機関も再届出が必須、運用の疑問はベースアップ評価料の運用Q&A(疑義解釈その7)で整理しています。
なお別添2では、歯科技工所ベースアップ支援料についても、施設基準の届出時に既に補綴物等の製作を開始していても対象になること(装着時に算定可)などが示されています。
掲示にも関わる:口腔管理連携加算の連携先の扱い(別添1 問2)
掲示の正確さに直結するのが、医科の口腔管理連携加算(A233-3)に関する問2です。この加算の施設基準にある「歯科診療を行う別の医療機関と連携体制を構築していること」について、自治体の口腔保健センター等がコーディネーターとなり、医科の医療機関からの依頼を受けて適切な歯科医療機関へ紹介する体制も、連携体制の施設基準を満たすものとみなされることが示されました。
ただし注意点があります。届出様式や院内の掲示では、口腔保健センター等の名前ではなく、実際に診療を担当する個別の歯科医療機関名を記載することとされています。さらに、一覧に記載していない歯科医療機関で診療が行われた場合は、その医療機関が口腔保健センター等の連携先一覧に掲載されているなど、連携先であることが確認できる場合に限り算定が可能です。掲示に載せる医療機関名と実際の連携先がずれないよう、運用の整理が必要になります。
医科のその他の主な論点(別添1)
- 心不全再入院予防継続管理料:管理料1・2の施設基準で求められる研修会(年1回以上)は、地域で複数の医療機関が合同で開催することも可能です。ただし、あらかじめ地域連携の体制を協議・連携していることが前提です。また管理料1は、検査の実施を主な目的とする入院では算定できません。
- 在宅医療充実体制加算:施設基準で求められる緩和ケア研修会は、在宅医療を担当する常勤医師のうち少なくとも1名が修了していれば要件(キ)を満たします(全員の修了が望ましい)。
- 協力対象施設入所者入院加算・介護保険施設等連携往診加算:新たに協力医療機関となって届け出る場合、介護保険施設等とのカンファレンスの日程が具体的に決まっていて、届出時にその予定を記載すれば要件を満たすものとみなされます。
- 訪問診療薬剤師同時指導料:初回の訪問診療時(在宅時医学総合管理料の算定開始前)は算定できません。共同で指導を行うことは可能ですが、在宅時医学総合管理料の算定を開始した際に併せて算定します。
- 特定感染症入院医療管理加算等:クロストリジオイデス・ディフィシル感染症は、医学的に薬剤耐性の確認を要さない場合に限り、薬剤耐性の確認以外の要件を満たせば対象として差し支えありません。
- このほか、腎代替療法診療体制充実加算(人工腎臓の注15)の対象患者の考え方、外科医療確保特別加算の従たる手術での加算点数の計算、物価対応料のDPC対象病院から地域包括ケア病棟へ転棟した場合の扱いなどが整理されています。
別添4(医科・歯科共通)では、健診等と同一日の別の受診について、健診の診療・会計が終わった後に、患者の状態の変化など客観的な必要性で改めて受診が必要になった場合が「別の受診」に当たり、単に診療時間を形式的に区切ったり予め再受診を指示したりする場合は別の受診として扱わない、と明確化されました。
薬局・歯科・訪問看護の主な論点
薬局(別添6)では、地域支援・医薬品供給対応体制加算の施設基準が論点になりました。保険薬局が属する法人が、薬事未承認の研究用試薬や検査サービスをインターネット上で販売・提供している場合は、その薬局で販売・提供しているものとみなされ、施設基準を満たさず、加算2から5までの届出はできないとされています。あわせて訪問薬剤管理医師同時指導料は、初回の訪問診療時には、在宅時医学総合管理料が算定されたことを確認した後に算定することが示されました。
歯科(別添5)では、特別管理加算について、歯科診療所は都道府県等と病院の両方と連携する必要があること、3次元プリント有床義歯は指定の医療機器(保険適用されているもの)を用いた場合のみ算定できることなどが整理されています。広範囲顎骨支持型装置埋入手術の対象拡大や、事前承認に係る資料の電子媒体での提出可なども示されました。
訪問看護(別添7)では、新規に開設する訪問看護ステーションが包括型訪問看護療養費を届け出る場合、負担軽減の取組や合同研修等について、届出後一定期間内(負担軽減は1か月、合同研修等は3か月以内)の計画を示せば基準を満たすものとして扱われます。ただし、その時点で計画が遂行されず施設基準を満たさない場合は、速やかに取り下げる必要があります。
掲示義務との関係
掲示ナビは医療機関・薬局のウェブサイト掲示義務に対応するサービスなので、掲示との関係も整理しておきます。今回のその9には、施設基準を届け出て算定する加算の取扱いが多く含まれています。施設基準を届け出て算定する項目は、原則として院内に掲示し、自院のホームページがある場合はウェブにも掲載することが求められます(ウェブサイト掲示義務は令和6年度改定で原則化されました)。
特に口腔管理連携加算のように「掲示に個別の連携先名を記載する」と明記された項目は、掲示の内容と実際の運用がずれていないかが問われます。届け出ているのに掲示にない、改定や疑義解釈で扱いが変わったのに古い掲示が残っている、といったズレは適時調査や個別指導で指摘されます。どの加算がウェブ掲示を算定要件にしているかはWeb掲示が算定要件の加算【完全リスト】で逆引きできます。掲示ナビは厚生局への届出データを起点に掲示ページを自動生成するため、加算の出入りや改定があっても掲示内容が自動で追従し、この「届出と掲示の不整合」を構造的に防げます。
まとめ
疑義解釈その9(令和8年6月26日)の要点を整理します。
- 別添1から別添7まで、医科・歯科・薬局・訪問看護の全業態にまたがる内容
- もっとも急ぐのは別添2のベースアップ評価料・入院基本料等の減算の救済。届出の締切は対象により令和8年7月3日(金)または8月3日(月)
- 口腔管理連携加算は、院内掲示に個別の歯科医療機関名を記載する点が明確化された
- 在宅医療充実体制加算の緩和ケア研修は常勤医のうち1名の修了で要件を満たす、心不全再入院予防継続管理料の研修会は合同開催可など、施設基準の運用が緩和・明確化された論点が多い
- 薬局は地域支援・医薬品供給対応体制加算、訪問看護は包括型訪問看護療養費の届出の扱いが示された
数は多いものの、自院に関係するのは一部です。まずはベースアップ評価料まわりの締切を確認し、施設基準を届け出ている加算については掲示とのズレがないかをあわせて点検しておくと安心です。改定の全体像は令和8年度診療報酬改定をわかりやすく解説、前回分は疑義解釈その7の総まとめで整理しています。掲示物の管理のような本質ではない作業に時間を奪われないよう、仕組みに任せられるところは任せて、医療現場の時間を診療に取り戻していきましょう。
出典・参考
一次資料(厚生労働省)
- 厚生労働省保険局医療課「疑義解釈資料の送付について(その9)」(令和8年6月26日 事務連絡)別添1〜別添7 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001716069.pdf
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
二次資料(専門サイト)
- PT-OT-ST.NET「【6月1日施行】令和8年度診療報酬改定ー通知・疑義解釈・官報訂正など整理」 https://www.pt-ot-st.net/index.php/topics/detail/1919




