電子的診療情報連携体制整備加算の要件はどこまでOK?疑義解釈その8の線引きを解説

令和8年度改定で新しくできた電子的診療情報連携体制整備加算。いざ算定しようと届出要件を確認すると、「うちのこの体制で要件を満たしているんだっけ」と手が止まる。マイナ保険証・電子カルテ・電子処方箋などの医療DX体制をまとめて評価する加算だけに要件が多層で、何がOKで何がNGか、線引きが見えにくい――この感覚を現場で抱えている方は少なくないはずです。
その線引きを医科版で具体的に示したのが、令和8年6月17日に出た疑義解釈その8です。この記事では、その8で固まった「要件のどこまでがOKで、どこからがNGか」を、ネットワーク・電子処方箋・電子カルテの3つの論点に分けて、一次資料ベースで整理します。点数や施設基準の全体像は電子的診療情報連携体制整備加算の施設基準と掲示要件で解説しているので、本記事は「要件の線引き」に絞ります。
電子的診療情報連携体制整備加算とは
電子的診療情報連携体制整備加算は、令和8年度(2026年)改定で、従来の「医療DX推進体制整備加算」と「医療情報取得加算」を統合・再編して新設された加算です。医科では初診料・再診料・入院料に加算され、初診時は要件の充足度に応じて加算1〜3に分かれます。マイナ保険証による情報取得、電子処方箋、電子カルテ情報共有サービスなど、医療情報を電子的に連携する体制をまとめて評価するのが趣旨です。なお、薬局には別に「電子的調剤情報連携体制整備加算」という同趣旨の加算があり、ここで扱うのは医科版です。
評価の軸が「体制を整備しているか」だけでなく、電子処方箋や電子カルテ情報共有サービスを実際に使える状態にあるかへ踏み込んでいるため、要件が階層的になり、自院が満たしているかの判定が難しくなっています。
なぜ「要件を満たしているか」で手が止まるのか
迷いの正体は、要件が「体制の有無」と「その中身の質」の二段構えになっている点にあります。たとえば「診療情報を共有できるネットワークがある」「電子処方箋を発行できる」と一口に言っても、どの程度のものを指すのかが告示・通知の文言だけでは読み取りにくい。「うちのチャットツールでの情報共有は該当するのか」「常勤医師が1人しか電子処方箋を出せないがいいのか」「電子処方箋の申請はしたがカードがまだ届かない」といった、現場でよくある状況がそのまま判定の迷いになります。
こうした境界線を、現場から寄せられた疑問に答える形で整理したのが疑義解釈です。疑義解釈は厚生労働省が発出する事務連絡で、原則として通知(保医発)と同等の運用根拠として扱われます。令和8年6月17日付の疑義解釈その8では、本加算について次の3つの線引きが示されました。
疑義解釈その8で示された3つの線引き
線引き1:診療情報を共有する「ネットワーク」はどこまでが該当するか(問1)
施設基準には「地域の複数の医療機関間で検査結果や画像情報等を含む診療情報を共有又は閲覧できるネットワーク」という要件があります。これについて、医療・介護の関係職種がICTで記録情報を共有できるサービスを使い、チャットやメーリングリストで診療情報を共有する場合は要件を満たすか、が問われました。
答えは「満たさない」です。要件を満たすには、診療情報提供料(Ⅰ)の検査・画像情報提供加算、または電子的診療情報評価料の施設基準を満たすネットワークであって、診療情報を提供する医療機関が電子カルテ情報を共有し、参加している医療機関が随時閲覧できるものである必要があるとされました。単に関係職種がチャット等で日々の報告や一部の情報を共有するだけのネットワークでは、要件を満たさないと明示されています。
ここが最も誤解しやすいポイントです。連携ツールを入れているからといって自動的に該当するわけではなく、共有できる情報の範囲(原則として検査結果・画像情報・投薬内容・注射内容・退院時要約などを含むこと)と、随時閲覧できる仕組みであることが鍵になります。自院が使っているネットワークがこの水準を満たすか、まず確認が必要です。
線引き2:電子処方箋は「常に」発行しなければならないのか(問2)
施設基準には「電子処方箋を発行する体制又は調剤情報を電子処方箋管理サービスに登録する体制を有していること」という要件があります。これについては、先行する疑義解釈その7(令和8年5月29日)の問3で、原則は処方を行う医師全員が電子処方箋を発行できることだが、当面の間は2名以上(常勤医師が1名のみの場合は1名以上)の常勤医師が発行できればよい、と整理されていました。
その8の問2では、その常勤医師が院外処方を行う場合に、常に電子処方箋を発行しなければならないのかが問われました。答えは、疑義解釈その4(令和8年4月21日)の問1のとおり、院外処方を行う場合には原則として、電子処方箋を発行するか、または引換番号が印字された紙の処方箋を発行して処方情報の登録を行っていればよい、とされています。
つまり線引きは「2名以上が電子処方箋を発行できる体制になっているか」であって、その医師が毎回必ず電子処方箋という形で出さなければならないわけではありません。引換番号付きの紙処方箋を発行し、処方情報を登録する運用でも差し支えない、という整理です。
線引き3:電子カルテの「接続インターフェース」はカード待ちでも満たすか(問3)
加算1などで求められる電子カルテの要件には「アからウの全て又はエを満たす電子カルテを有していること」があり、その中の「イ 電子処方箋管理サービスとの接続インターフェースを有していること」が論点になりました。この「接続インターフェースを有している」状態とは、疑義解釈その4の問2で、電子処方箋の運用開始日が登録され、厚生労働省ウェブサイトで電子処方箋対応施設として公表されている状態を指す、と定義されています。
その8の問3では、電子処方箋システムの導入が完了し、必要なカードリーダーも購入済みで、利用申請も行ったが、電子署名に使うHPKIカードの取得待ちで電子処方箋をまだ発行できない、という状況でも要件を満たすか、が問われました。答えは、当面の間に限り、HPKIカードの取得待ちであっても要件を満たすこととする、というものです。
ただし条件があります。HPKIカードを取得した日以降は、速やかに電子処方箋の運用開始日の登録を行ったうえで、実際に電子処方箋を発行するか、引換番号が印字された紙の処方箋を発行して処方情報の登録を行う必要があります。「カード待ちの間だけの猶予」であって、取得後に放置してよいわけではない点に注意が必要です。
自院に当てはめる確認の順番
3つの線引きを、自院の体制チェックの順番に置き直すと次のようになります。
- 診療情報を共有するネットワークは、チャット等での情報共有にとどまらず、検査・画像情報提供加算または電子的診療情報評価料の施設基準を満たし、電子カルテ情報を随時閲覧できる水準か
- 電子処方箋は、当面の経過措置として2名以上(常勤医師1名のみなら1名以上)の常勤医師が発行できる体制になっているか。院外処方は引換番号付き紙処方箋+処方情報登録でも可
- 電子カルテの接続インターフェースは、運用開始日の登録・対応施設としての公表まで到達しているか。HPKIカード待ちなら当面は可だが、取得後は速やかに運用開始の手続きを行う
なお、ここで触れた経過的な取扱い(「当面の間」「2名以上でよい」など)は、あくまで現時点での疑義解釈にもとづくものです。自院の個別事情で判断に迷う場合は、所管の地方厚生局に確認するのが確実です。
掲示義務との関係
掲示ナビは医療機関・薬局のウェブサイト掲示義務に対応するサービスなので、掲示との関係も整理しておきます。
電子的診療情報連携体制整備加算は、施設基準を地方厚生局に届け出て算定する項目です。施設基準を届け出て算定する項目は、原則として院内に掲示し、自院のホームページがある場合はウェブにも掲載することが求められます(ウェブサイト掲示義務は令和6年度改定で原則化されました)。本加算では連携先となる医療機関の掲示の取扱いなども論点になっており、その整理は疑義解釈その7で確定した掲示ルールでまとめています。
掲示で実際に問われやすいのは、届け出ている内容と院内・ウェブの掲示がずれていないか、です。届け出ているのに掲示にない、改定や経過措置で要件が動いたのに古い掲示が残っている、というズレが適時調査や個別指導で指摘されます。どの加算がウェブ掲示を算定要件にしているかはWeb掲示が算定要件の加算【完全リスト】で逆引きできます。掲示ナビは厚生局への届出データを起点に掲示ページを自動生成するため、加算の出入りや改定があっても掲示内容が自動で追従し、この「届出と掲示の不整合」を構造的に防げます。
まとめ
電子的診療情報連携体制整備加算の要件の線引きについて、疑義解釈その8(令和8年6月17日)で示された要点を整理します。
- 診療情報を共有するネットワークは、チャットやメーリングリストでの情報共有では要件を満たさない。検査・画像情報提供加算または電子的診療情報評価料の施設基準を満たし、電子カルテ情報を随時閲覧できる水準が必要(問1)
- 電子処方箋は、当面2名以上(常勤医師1名のみなら1名以上)が発行できる体制であればよく、院外処方は引換番号付き紙処方箋+処方情報登録でも可。毎回必ず電子処方箋で出す必要はない(問2)
- 電子カルテの接続インターフェースは、HPKIカード取得待ちでも当面は要件を満たすが、取得後は速やかに運用開始日の登録と実際の運用が必要(問3)
- 本加算は施設基準を届け出て算定する項目なので、院内・ウェブ掲示の対象になる
「うちのこの体制で要件を満たしているんだっけ」というモヤモヤは、要件を一つずつ線引きに当てはめれば解けます。算定の入口は正確に押さえつつ、掲示物の管理のような本質ではない作業に時間を奪われないよう、仕組みに任せられるところは任せて、医療現場の時間を診療に取り戻していきましょう。改定の全体像は令和8年度診療報酬改定をわかりやすく解説もあわせてご覧ください。
出典・参考
一次資料(厚生労働省)
- 厚生労働省保険局医療課「疑義解釈資料の送付について(その8)」(令和8年6月17日 事務連絡)別添1 医科診療報酬点数表関係【電子的診療情報連携体制整備加算】問1〜問3 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001712853.pdf
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
二次資料(専門サイト)
- GemMed「電子的診療情報連携体制整備加算における電子処方箋・電子カルテ等要件の詳細など示す―疑義解釈4」 https://gemmed.ghc-j.com/?p=74104




