外来腫瘍化学療法診療料とは?施設基準・点数・掲示義務をわかりやすく解説

外来でがんの化学療法(抗がん剤による治療)を行う体制を評価するのが「外来腫瘍化学療法診療料」です。2026年(令和8年)6月の診療報酬改定で点数の区分が見直され、抗がん剤の投与方法によって点数が細かく分かれるようになりました。施設基準には院内掲示・ウェブサイトへの掲載の義務も含まれており、掲示の観点でも押さえておきたい診療料です。
この記事では、外来腫瘍化学療法診療料1・2・3の違い、点数、算定要件、施設基準、そして掲示義務を、厚生労働省の告示・通知(一次資料)に当たりながら整理します。
外来腫瘍化学療法診療料とは?
外来腫瘍化学療法診療料は、医科の診療報酬点数表の区分番号B001-2-12に置かれた、医学管理等の診療料です。入院中以外の悪性腫瘍を主病とする患者さんに対して、抗がん剤の外来投与などの治療管理を、安全な体制のもとで行ったことを評価します。
特徴は、体制の手厚さに応じて1・2・3の3区分に分かれている点です。
- 外来腫瘍化学療法診療料1:化学療法の専用治療室や経験豊富な専任スタッフ、24時間の連絡体制などを自院で備えた、もっとも体制の手厚い区分
- 外来腫瘍化学療法診療料2:1に近い体制を備えつつ、一部の要件が緩和された中間的な区分
- 外来腫瘍化学療法診療料3:24時間体制などを自院で完結しない医療機関(主に診療所)が、診療料1を届け出た医療機関と連携することで成り立つ区分
「がんの外来化学療法を、急変にも備えた体制で安全に提供する」ことを評価する仕組みで、その体制を患者さんに分かるよう示す掲示までがセットになっているのが、掲示の観点での要点です。
点数(2026年6月改定後)
2026年6月の改定では、「イ(抗悪性腫瘍剤を投与した場合)」が、投与方法(静脈注射などの場合と、皮下注射の場合)によって分かれる形に細分化されました。改定前は「初回から3回目まで」「4回目以降」の2区分でしたが、これに投与方法の区別が加わっています。
主な点数は次のとおりです(いずれも令和8年厚生労働省告示第69号にもとづく)。
| 区分 | 初回〜3回目(静注等) | 初回〜3回目(皮下注射) | 4回目以降(静注等) | 4回目以降(皮下注射) | ロ(イ以外の治療管理) |
|---|---|---|---|---|---|
| 診療料1 | 801点 | 351点 | 451点 | 201点 | 351点 |
| 診療料2 | 601点 | 261点 | 321点 | 141点 | 221点 |
| 診療料3 | 541点 | 241点 | 281点 | 121点 | 181点 |
算定回数の考え方は次のように整理できます。
- イの「初回から3回目まで」は、月3回に限り算定
- イの「4回目以降」は、初回〜3回目を算定する日以外で、週1回に限り算定
- ロ(抗がん剤投与以外の必要な治療管理を行った日)は、イを算定する日以外で、週1回に限り算定
加算もあります。15歳未満の患者さんには小児加算として200点を加算します。また、診療料1に限り、地域連携の体制を評価する連携充実加算(月1回150点)と、がん薬物療法の体制を評価するがん薬物療法体制充実加算(月1回100点)が設けられています。
なお、静注などの場合と皮下注射の場合の具体的な薬剤の線引きは、点数表上は「皮下注射による場合」とそれ以外で区別する形になっています。個別の製剤がどちらに該当するかの細目は、最新の通知で確認するのが確実です。
算定要件
外来腫瘍化学療法診療料は、入院中以外の悪性腫瘍を主病とする患者さんに対し、患者さんの同意を得たうえで、化学療法の経験を有する医師・専任の看護師・専任の薬剤師が必要に応じて他職種と協力し、注射による外来化学療法などの治療管理を行った場合に算定します。
実務で押さえておきたい点は次のとおりです。
- 抗がん剤の注射投与は、外来化学療法に係る専用室で行う
- 効能・効果、投与計画、副作用とその対策、日常生活上の注意、抗がん剤のばく露予防などを、文書により患者さんに説明する。患者さん本人の十分な理解が得られない場合や、家族などのみへの説明では算定できない
- この診療料を算定する場合、初診料・再診料・外来診療料(一部の加算を除く)や、がん患者指導管理料のハ、在宅自己注射指導管理料は別に算定できない(包括の扱い)
施設基準(診療料1・2・3の違い)
施設基準は「特掲診療料の施設基準等」(保医発0305第8号)に定められ、区分ごとに求められる体制が異なります。要点を整理すると次のようになります。
| 項目 | 診療料1 | 診療料2 | 診療料3 |
|---|---|---|---|
| 専用治療室 | 必要 | 必要 | 必要 |
| 専任医師(化学療法経験5年以上) | 必要 | 明示なし | 連携で確保 |
| 専任看護師 | 経験5年以上が常時勤務 | 常時勤務 | 連携で確保 |
| 専任薬剤師 | 経験5年以上の常勤 | 専任常勤 | 連携で確保 |
| 24時間連絡体制 | 必要 | 必要 | 標榜時間外のコールバック体制 |
| 急変時の入院体制 | 必要(自院または連携) | 必要 | 連携先で確保 |
| レジメン委員会(年1回以上) | 必要 | 明示なし | 明示なし |
| 急変時対応の指針整備 | 必要 | 望ましい | ― |
診療料1は、経験5年以上の専任スタッフ、24時間の連絡体制、抗がん剤の治療計画を検討するレジメン委員会の開催などを自院で備える、もっとも手厚い区分です。診療料3は、こうした体制を自院で持たない医療機関が、診療料1を届け出た医療機関と連携し、緊急時に有害事象などの診療ができる体制を確保することで成り立ちます。診療料2はその中間にあたります。
掲示義務(院内とウェブサイト)
外来腫瘍化学療法診療料は、施設基準のなかに院内掲示とウェブサイト掲載の義務が明文で含まれています。適時調査でも確認されやすいところなので、区分ごとに整理して押さえておきましょう。
診療料1で掲示する内容
診療料1では、次の体制を行っていることを、医療機関の見やすい場所に掲示することが求められます。
- 患者からの電話などによる緊急の相談に24時間対応できる連絡体制を整えていること
- 急変時に患者が入院できる体制を確保していること
- 抗がん剤の治療計画を検討するレジメン委員会を開催していること
また、診療料3の患者さんを緊急時に受け入れる場合は、連携する医療機関の名称なども見やすい場所に掲示します。そして、これらの掲示事項は、原則としてウェブサイトにも掲載することとされています(自院で管理するホームページ等を有しない場合は、この限りではありません)。
診療料3で掲示する内容
診療料3では、連携する診療料1の医療機関の名称などを、あらかじめ地方厚生(支)局長に届け出たうえで、見やすい場所に掲示します。この掲示事項も、原則としてウェブサイトに掲載することが求められます。
診療料2の扱いと、患者への文書提供
診療料2については、通知の本文上、診療料1・3のような掲示の条文は明示されていません。ただし、診療料2も24時間連絡体制や急変時入院体制を満たすことが要件になっています。診療料2のみを届け出る場合の運用は、最新の通知で確認しておくと安心です。
なお、施設基準の「見やすい場所への掲示」とは別に、算定する患者さんへ、緊急時の連絡先電話番号や注意事項を文書で提供することも求められています(留意事項)。掲示と文書提供は別の対応である点に注意してください。
このように、外来腫瘍化学療法診療料はホームページを持つ医療機関にとってウェブサイト掲示の対象となる診療料です。どの加算・診療料でWeb掲示が算定要件になるかを横断で確認したい場合は、Web掲示が算定要件の加算【完全リスト】が逆引きに使えます。掲示すべき事項の全体像は厚生労働大臣が定める掲示事項とは?医科・歯科・薬局別に全項目を解説で整理しています。
連携体制(診療料3と診療料1)
外来腫瘍化学療法診療料の制度の中心にあるのが、診療料3と診療料1の連携です。24時間体制などを自院で完結しない医療機関(主に診療所)が、診療料1を届け出た医療機関と連携することで、緊急時にも患者さんが有害事象などの診療を受けられる体制を確保します。連携先の医療機関の名称は、届出のうえ院内掲示・ウェブサイト掲載が求められます。
診療料1には、地域の医療機関・薬局との連携体制を評価する連携充実加算(月1回150点)があります。レジメンをホームページで閲覧できるよう公開することや、年1回以上の研修会の開催、照会・相談への対応体制とその周知などが施設基準に含まれます。地域全体でがんの薬物療法を支える体制を後押しする加算です。
入院を含めた病院の掲示の考え方は病院の施設基準 掲示例・見本集【無料】も参考になります。
届出方法と経過措置
届出は、診療料1・2・3とも別添2の様式39を用いて、地方厚生(支)局長に行います。連携充実加算は様式39の2、がん薬物療法体制充実加算は様式39の3を使用し、治療室の平面図を添付します。
経過措置として、令和8年3月31日の時点で診療料1を届け出ている医療機関については、同年9月30日まで、急変時の対応に係る指針の整備に関する基準を満たしているものとみなすこととされています。
施設基準の掲示や届出の内容が、適時調査でどう確認されるかは適時調査チェックリスト|当日までに準備すべきこと完全版で整理しています。入院料を算定する病院ではDPC対象病院の掲示要件とあわせて確認しておくと、掲示の抜け漏れを防ぎやすくなります。
まとめ
外来腫瘍化学療法診療料の要点を振り返ります。
- 区分番号B001-2-12の医学管理等の診療料で、体制の手厚さに応じて診療料1・2・3に分かれる
- 2026年6月改定で「イ」が投与方法(静注などと皮下注射)で細分化された。診療料1は静注などの初回〜3回目が801点など
- 算定回数は、初回〜3回目が月3回、4回目以降が週1回、ロが週1回。小児加算200点のほか、診療料1には連携充実加算150点・がん薬物療法体制充実加算100点がある
- 施設基準は区分ごとに異なり、診療料1は経験5年以上の専任スタッフ・24時間連絡体制・レジメン委員会などを自院で備える。診療料3は診療料1との連携で成り立つ
- 掲示義務は、診療料1で「24時間連絡体制・急変時入院体制・レジメン委員会開催・連携先名称」を院内掲示し原則ウェブサイトにも掲載、診療料3で連携先名称を届出・掲示・原則ウェブサイト掲載。ホームページを持つ医療機関はWeb掲示の対象
掲示の観点では、「院内に掲げている体制」と「ウェブサイトに載せている内容」が同じであることが大切です。届け出た施設基準と、実際に外へ示している情報がずれていると、患者さんの誤解や、適時調査での指摘につながりかねません。届出データを起点に、院内掲示とWeb掲示の内容を同じ情報でそろえておくことが、安心して外来化学療法を続けるうえでの土台になります。
出典・参考
一次資料(厚生労働省)
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」(医科点数表・施設基準通知・疑義解釈の一覧) https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
- 診療報酬の算定方法の一部を改正する件(令和8年厚生労働省告示第69号)医科診療報酬点数表 B001-2-12 外来腫瘍化学療法診療料 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686842.pdf
- 診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(保医発0305/令和8年5月29日訂正版)外来腫瘍化学療法診療料 算定要件・患者への文書提供 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001707246.pdf
- 特掲診療料の施設基準等(保医発0305第8号/令和8年5月29日訂正版)第6の8の4 外来腫瘍化学療法診療料 施設基準・掲示・届出 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001707256.pdf
二次資料(専門サイト)
- GemMed(メディウォッチ)外来腫瘍化学療法診療料の解説(改定前点数の確認) https://gemmed.ghc-j.com/?p=59413
