包括型訪問看護療養費とは?2026年6月新設の算定要件・報酬区分・運用Q&Aを解説

令和8年(2026年)6月、訪問看護療養費に「包括型訪問看護療養費」が新しく加わりました。サービス付き高齢者向け住宅などに併設・隣接する訪問看護ステーションが、頻回の訪問を「1日あたり」でまとめて算定できる、新しい仕組みです。
従来の「1回いくら」の出来高とは考え方が異なり、対象者・訪問体制・報酬区分にいくつもの条件があります。さらに、令和8年5月22日付の疑義解釈(その6)別添4で、現場が迷いやすい運用ポイントも示されました。本記事では、一次資料をもとに「どんな制度か」「報酬はいくらか」「算定の条件と注意点」を整理します。
何が新設されたのか
令和8年度の訪問看護療養費改定で、新区分「包括型訪問看護療養費(1日につき)」が新設され、6月1日から実施されています。
これは、24時間体制で計画的または随時の頻回訪問を行う場合に、その日の訪問をまとめて1日当たりで算定する包括報酬です。金額の根拠は令和8年厚生労働省告示第74号、算定要件の詳細は留意事項通知(保発0305第19号)と届出通知(保医発0305第9号)に定められています。
どんな訪問看護が対象か
包括型訪問看護療養費は、誰でも・どのステーションでも算定できるわけではありません。対象は、次の条件を満たす場合です。
- 利用者:厚生労働大臣が定める疾病等(別表第7・別表第8、または特別訪問看護指示書)に該当し、1日2回以上の訪問看護を行う場合
- ステーション:サービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホームなどの高齢者向け住まいに、併設・隣接する訪問看護ステーション(届出制)
- 訪問体制:日中と夜間帯(午後6時〜午前8時)に、それぞれ少なくとも1回ずつ訪問すること
このほか、1日の実施時間が合計60分以上になる場合は1日3回以上の訪問が必要、1日に1回以上は看護職員(准看護師を除く)が訪問する、といった体制要件もあります。届出できる建物は、1ステーションにつき1か所までという制限もあります。
報酬は「実施時間 × 単一建物の利用者数」で決まる
包括型訪問看護療養費の金額は、その日の訪問看護の合計時間と、同じ建物に住む利用者の人数の組み合わせで決まります。告示第74号の金額は次のとおりです(1日につき)。
| 単一建物の利用者 | イ:30〜60分未満 | ロ:60〜90分未満 | ハ:90分以上 | ニ:90分以上(要件付き) |
|---|---|---|---|---|
| 20人未満 | 7,010円 | 11,010円 | 14,010円 | 15,510円 |
| 20〜50人未満 | 6,310円 | 9,910円 | 13,730円 | 15,200円 |
| 50人以上 | 5,960円 | 9,360円 | 13,450円 | 14,890円 |
いちばん右の「ニ」は、単に90分以上というだけでは算定できません。24時間の連絡・相談体制があり、かつ算定する利用者全員の1日平均実施時間が120分以上、という条件を満たした場合の区分です(120分の基準は留意事項通知による)。
疑義解釈その6が示した運用ポイント
令和8年5月22日付の疑義解釈(その6)別添4では、現場で迷いやすい3点が整理されました。
- 午後6時をまたぐ訪問の数え方(問1):原則は夜間帯の回数に計上します。ただし実施時間の多くが日中なら、日中に計上して差し支えありません。日中・夜間帯のどちらか一方のみに計上し、両方で重複してカウントはしません。
- 訪問看護計画の作り方(問2):1日当たりの訪問看護の「時間」と「内容」は、計画の立案・見直しの際に定めておく必要があります。訪問の「時刻」までは必ずしも定めなくてよいものの、予定があれば計画に盛り込むのが望ましいとされています。
- 計画と実績がズレたとき(問3):計画より訪問時間が長く(または短く)なった場合は、実際に提供した時間に応じた区分で算定します。
算定にあたっての注意点
新設項目なので、令和8年6月以降に算定するには、新たな届出が必要です。「自動的に算定できる」わけではない点に注意してください。
経過措置についてもよく誤解されます。令和9年5月31日まで猶予されるのは、届出基準のうち「地域の医療機関・訪問看護ステーションとの連携実績(合同研修や事例検討会、情報提供の実績)」の要件に限られます。包括型の基準すべてが1年間猶予されるわけではありません。
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まとめ
- 令和8年6月、頻回訪問を1日あたりでまとめて算定する「包括型訪問看護療養費」が新設された
- 対象は、別表第7・第8や特別訪問看護指示書に該当する利用者への1日2回以上の訪問で、高齢者向け住まいに併設・隣接するステーションが届け出て算定する
- 報酬は実施時間(イ〜ニ)と単一建物の利用者数で決まり、20人未満なら7,010〜15,510円
- 疑義解釈その6 別添4で、6時をまたぐ訪問の数え方・計画の作り方・実績とのズレの扱いが整理された
- 算定には新たな届出が必要で、経過措置(令和9年5月)は連携実績の要件に限られる
訪問看護をめぐる体制管理は、年々細かくなっています。新しい区分を算定するなら、対象者・訪問体制・届出の要件を一つずつ確認しておきたいところです。
出典・参考
一次資料(厚生労働省)
- 厚生労働省「訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法の一部を改正する件」(令和8年厚生労働省告示第74号) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001665206.pdf
- 厚生労働省「指定訪問看護の費用の額の算定方法の改正に伴う実施上の留意事項について」(保発0305第19号) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686845.pdf
- 厚生労働省「訪問看護ステーションの基準に係る届出に関する手続の取扱いについて」(保医発0305第9号) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001697764.pdf
- 厚生労働省「疑義解釈資料の送付について(その6)」(令和8年5月22日 保険局医療課事務連絡/別添4 問1〜問3) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001703573.pdf
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について【訪問看護ステーション向け】」 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001671099.pdf
二次資料(業界誌・専門サイト)
- 社会保険研究所「令和8年度診療報酬改定 訪問看護療養費の主な変更点」 https://media.shaho.co.jp/n/n39ae5a76cf52
- PT-OT-ST.NET「令和8年度診療報酬改定(訪問看護療養費)」 https://www.pt-ot-st.net/contents4/medical-treatment-reiwa-8/department/5079
