【令和8年9月9日】処方箋に「一部保険外療養」欄|掲示義務は課さない方針

令和8年9月9日の中央社会保険医療協議会(中医協)総会に、OTC類似薬の一部保険外療養を実際に動かすための法令改正案が示されました。処方箋の様式が変わり、院内掲示とウェブサイト掲示の扱いも整理されています。医科・歯科・薬局のいずれにも関わる内容です。
なお、この日に行われたのは大臣から中医協への諮問で、答申はまだ出ていません。以下は「9月9日に示された案」として読んでください。
9月9日の中医協で何が示されたか
厚生労働大臣から中医協会長あてに、諮問書(厚生労働省発保0909第1号、令和8年9月9日)が出されました。件名は「一部保険外療養の創設に伴う療養担当規則等の所要の見直しについて」です。
一部保険外療養は、健康保険法等の一部を改正する法律(令和8年法律第31号)で新しく作られた枠組みです。OTC医薬品との代替性が特に高い薬剤について、薬剤費の4分の1を保険給付の対象から外し、患者に別途の負担を求めます。対象は77成分1,042品目(令和8年8月1日時点)で、施行は令和9年3月が想定されています。制度そのものの中身は

【令和9年3月施行想定】OTC類似薬が一部保険外療養に|77成分と薬剤費4分の1
OTC類似薬の保険給付見直しは「一部保険外療養」として令和9年3月施行が想定されています。対象77成分1,042品目、薬剤費の4分の1が患者負担に。窓口の実務フローと、9月3日の部会でまだ論点として残った3点を一次資料から整理しました。
で整理しました。
今回の資料(中医協 総3-2)は、この枠組みを現場で回すために、療担規則・薬担規則・告示のどこをどう直すかを4点にまとめたものです。
処方箋に「一部保険外療養」欄が加わる
1点目は処方箋様式の改正です。処方箋の様式は療担規則で定められているため、省令改正で対応します。
資料はこう書いています。
処方箋上に「一部保険外療養」欄を追加し、対象医薬品を処方する場合は、別途の負担の対象である場合は「○」を、別途の負担の対象外である場合は「ー」を処方箋に記載することとする。
つまり、対象の77成分を処方するときは、医師が処方箋の上で「この薬は別途の負担の対象です」「対象外です」を明示することになります。令和9年3月以降の処方が対象です。
判断そのものは医師が行います。9月9日のもう一つの資料には、薬局で判断するのは困難という意見に対して、判断するのは医師が行うこととしている、という整理が示されています。処方箋の欄は、その判断結果を薬局に伝えるための器だと考えると分かりやすいはずです。
様式変更には経過措置が置かれます。
※処方箋様式は当面の間、変更前の様式を使用することを可能とする経過措置を設ける。
在庫している処方箋用紙をすぐ捨てる必要はありません。ただし記載自体は必要になるので、レセコンや電子カルテの改修時期はベンダーに確認しておきたいところです。
院内掲示・ウェブサイト掲示の義務は課さない方針
掲示に踏み込んだのが2点目です。ここは少していねいに書きます。
現行のルールでは、評価療養・患者申出療養・選定療養を実施するときは、その内容と費用を院内に掲示し、ウェブサイトにも掲載する義務があります。療担規則第5条の4はこうです。
2 保険医療機関は、その病院又は診療所の見やすい場所に、前項の療養の内容及び費用に関する事項を掲示しなければならない。 3 保険医療機関は、原則として、前項の療養の内容及び費用に関する事項をウェブサイトに掲載しなければならない。
薬局側も薬担規則第4条の3で同じ構造になっています。差額ベッド代や予約診察のように、施設ごとに内容と金額が違うものは、掲示で患者に知らせる必要があるという考え方です。
一方、一部保険外療養については、次のように示されました。
一部保険外療養については、各医療機関がその内容及び費用を決定することが原則な選定療養等と異なり、全ての保険医療機関・保険薬局において一律の内容及び費用として行われる取組であることから、院内掲示・ウェブサイトへの掲示義務は課さないこととする。
金額を施設が決めるわけではなく、全国どこでも薬剤費の4分の1で同じだから、施設ごとに掲示させる意味がない、という整理です。掲示義務が増える改正が続いてきた流れの中では、珍しい方向の結論だと思います。
ただし、これは9月9日に示された方針であって、省令・告示が公布されて初めて確定します。また「掲示しなくてよい」ことと「説明しなくてよい」ことは別です。窓口で別途の負担を請求する以上、患者への説明は必要になります。掲示義務そのものの全体像は

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にまとめてあります。
長期収載品の選定療養とは重ならない
3点目と4点目は告示の改正です。一部保険外療養の中身として「要指導医薬品又は一般用医薬品との代替性が特に高い医療用医薬品の処方又は調剤」を位置付け、保険外併用療養費の支給額は、薬剤費の4分の1を除いた額と定めるとしています。
混乱しそうなのが長期収載品の選定療養との関係です。ある薬が長期収載品でもありOTC類似薬でもある場面は当然に起きます。資料の処方箋記載イメージでは、一部保険外療養の対象になる場合は長期収載品の選定療養の対象外とし、二重に特別の料金を求めないことが図で示されています。
あわせて、長期収載品の選定療養の計算方法も変わります。
※ 令和9年3月のOTC類似薬の一部保険外療養の施行に合わせて、長期収載品の選定療養の特別の料金の計算方法も「先発薬と後発薬の差額2分の1×投薬全量」により計算することとする。(現行は、特別の料金についても算定告示に基づき点数換算し計算している。)
いま点数換算で計算している薬局・医療機関は、令和9年3月から計算式そのものが変わることになります。長期収載品の選定療養の運用は

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で解説しています。
なお、別途の負担は1の位を四捨五入すること、消費税の取扱いは政府内で検討中であることも資料に明記されています。
判断を支える仕組みも用意される
同じ日の資料では、現場が判断に迷わないための準備も示されています。
電子カルテを使う医療機関には、対象医薬品の薬剤コード、医療用医薬品とOTC医薬品の効能・効果が対応しない傷病名の一覧、レセプトに記載する理由の標準例などを国が公表し、ベンダーの改修に使えるようにするとされています。ただし、がん・指定難病・長期使用のような医学的判断については、システムが自動で最終判定するものではなく、医師が最終的に判断することが基本だと明記されています。
紙カルテの医療機関向けには、対象成分に該当するか、効能・効果と対応するか、別途の負担を求めない要件に当たるかを順に確認できる簡易なチェックシートを国が作る案が示されました。診察室や受付に印刷して置ける形式にするとされています。
対象外とする人の範囲も、パブリックコメント897件を踏まえて整理が進んでいます。低所得者として対象外とするのは生活保護受給者とすること、がん疑いは明確な基準の設定が難しいため対象になること、入院患者と在宅患者では医療提供の場面や治療環境が異なると整理していること、などが示されました。
いま確認しておきたいこと
施行想定の令和9年3月まで半年を切っています。答申と公布を待つ姿勢でよいのですが、次の3つは先に手をつけておくと後が楽です。
1つ目は、自院・自局の頻用薬が77成分に重なるかの棚卸しです。資料が挙げる主な対応症状は、鼻炎、胃痛・胸やけ、便秘、解熱・痛み止め、風邪症状全般、腰痛・肩こり、みずむし、口内炎、皮膚のかゆみ・乾燥肌などです。なお湿布や皮膚保湿剤については、一定の重症患者の長期使用の実態を踏まえ、令和10年度末までは別途の負担の対象外とする経過措置を講じるとされています。
2つ目は、レセコン・電子カルテのベンダーへの確認です。処方箋の「一部保険外療養」欄と、レセプトへの対象外理由の記載に、いつの版で対応するのかを聞いておきます。
3つ目は、窓口での説明の段取りです。掲示義務は課さない方針でも、患者から「なぜこの薬だけ余分に払うのか」と聞かれる場面は必ず来ます。国が広報資材を作るとしているので、公表されたら受付に置ける形にしておくと安心です。
掲示については、いま出ている選定療養・保険外併用療養費の掲示が正しく載っているかを見直すほうが優先度は高いです。ここは

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が参考になります。
まとめ
令和8年9月9日の中医協に、一部保険外療養を動かすための療担規則等の改正案が諮問されました。処方箋に「一部保険外療養」欄が新設され、対象なら○、対象外ならーを記載します。様式には当面の経過措置が置かれます。院内掲示・ウェブサイトへの掲示義務は、全国一律の内容と費用であることを理由に課さない方針です。長期収載品の選定療養とは二重に取らず、その計算方法も令和9年3月から「差額2分の1×投薬全量」に変わります。
いずれも答申・公布を待って確定します。決まったこととして院内ルールを作り込むより、対象成分の棚卸しとベンダー確認から始めるのが現実的です。
出典・参考
一次資料(厚生労働省・厚生局・支払基金 等)
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厚生労働省「一部保険外療養の創設に伴う療養担当規則等の所要の見直しについて」(中医協 総3-2、令和8年9月9日) https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001747615.pdf
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厚生労働省「諮問書(一部保険外療養の創設に伴う療養担当規則等の所要の見直しについて)」(厚生労働省発保0909第1号、令和8年9月9日) https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001747614.pdf
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厚生労働省「OTC類似薬の保険給付の見直しの実施について(その2)」(中医協 総-2、令和8年9月9日) https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001747613.pdf
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厚生労働省「中央社会保険医療協議会 総会(第656回)議事次第」(令和8年9月9日) https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_76086.html
二次資料(業界誌・専門サイト)
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日刊薬業「【中医協】OTC類似薬、処方箋に専用欄 長期品選定療養との二重負担は回避」 https://nk.jiho.jp/article/305077
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ドラッグストアニュース「【厚労省】“OTC類似薬”で処方箋様式案を提示/中医協」(2026年9月9日) https://www.dgs-on-line.com/articles/3331




