発熱患者等対応加算とは?点数・施設基準・算定要件をわかりやすく解説

発熱患者等対応加算とは?まず全体像から
発熱患者等対応加算は、令和6年度(2024年)改定で新設され、令和8年度(2026年6月施行)改定でも内容が引き継がれた、診療所向けの感染症対応の評価です。ひとことで言うと、外来感染対策向上加算を算定する診療所が、発熱などの症状がある患者を適切な感染対策のもとで診療したときに、初診料・再診料へ「月1回・20点」を上乗せできる仕組みです。
ここで最初に押さえておきたいのは、これは単独で届け出る加算ではない、という点です。発熱患者等対応加算は、外来感染対策向上加算(6点)の「ただし書」として上乗せされる構造になっています。つまり、まず外来感染対策向上加算の施設基準を満たして届け出ていることが大前提で、その算定の中で発熱患者等を診療したときに、さらに20点が乗る、という二段構えです。
この記事では、点数・算定回数、施設基準、対象となる「発熱患者等」の範囲、掲示・公表の扱い、そして令和8年度改定での位置づけまでを、厚生労働省の一次資料(告示・留意事項通知・施設基準通知)に沿って整理します。なお、親となる外来感染対策向上加算そのものの要件は、関連記事「外来感染対策向上加算の施設基準と掲示要件」で詳しく解説しています。
発熱患者等対応加算の点数と算定回数
発熱患者等対応加算の点数は、月1回に限り20点です。初診・再診のどちらでも算定でき、根拠は次のとおりです。
| 区分 | 根拠 | 点数 |
|---|---|---|
| 初診料(A000) | 注11 ただし書 | 月1回 20点(外来感染対策向上加算6点に上乗せ) |
| 再診料(A001) | 注15 ただし書 | 月1回 20点(外来感染対策向上加算6点に上乗せ) |
告示(令和8年厚生労働省告示第69号)の初診料・注11は、外来感染対策向上加算(6点)を定めたうえで、ただし書として「発熱その他感染症を疑わせるような症状を呈する患者に対して適切な感染防止対策を講じた上で初診を行った場合は、発熱患者等対応加算として、月1回に限り20点を更に所定点数に加算する」と規定しています。再診料・注15も同じ構造です。
ポイントは「更に加算する」という表現です。発熱患者等対応加算だけを単独で20点取るのではなく、外来感染対策向上加算6点 + 発熱患者等対応加算20点という形で積み上がります。どちらも月1回が上限なので、同じ月に何度も発熱患者を診ても、加算は月1回までです。
発熱患者等対応加算の対象施設は「診療所」だけ
発熱患者等対応加算は、診療所に限られます。告示の注11・注15にも「(診療所に限る。)」と明記されており、病院は算定できません。これは、上乗せ元である外来感染対策向上加算自体が診療所向けの評価だからです。
許可病床数200床以上の病院が算定する外来診療料(A002)には、そもそも外来感染対策向上加算も発熱患者等対応加算も規定がありません。病院の感染対策は、入院料に対する感染対策向上加算(A234-2)という別系統で評価される建て付けになっています。「病院でも発熱患者を診れば20点取れる」という誤解が起きやすいところですが、この加算は診療所専用と覚えておくのが安全です。
発熱患者等対応加算の施設基準
繰り返しになりますが、発熱患者等対応加算には独立した届出はありません。外来感染対策向上加算の施設基準を満たして届け出ていることが、そのまま発熱患者等対応加算の前提になります。外来感染対策向上加算の施設基準(基本診療料の施設基準等の通知・第1の4)のうち、主な要件は次のとおりです。
- 診療所であること
- 感染防止対策部門を設置していること
- 専任の院内感染管理者(医師・看護師・薬剤師等)を配置していること
- 院内感染対策の業務指針・手順書(マニュアル)を整備していること
- 職員向けの院内感染対策研修を年2回程度行っていること
- 感染対策向上加算1の医療機関または地域医師会が主催するカンファレンスへ年2回程度参加し、新興感染症の発生等を想定した訓練に年1回以上参加していること
- 院内感染管理者が週1回程度、院内を巡回していること
- 院内感染防止対策に関する取組事項を、見やすい場所に掲示していること
- 受診歴の有無にかかわらず、発熱その他感染症を疑わせるような症状を呈する患者の受入れを行う旨を公表し、空間的・時間的分離により発熱患者等の動線を分けるなどの対応ができる体制を有していること
- 感染症法第38条第2項に基づき都道府県知事の指定を受けている第二種協定指定医療機関であること
- 入院料に対する感染対策向上加算(A234-2)の届出を行っていないこと
このうち、発熱患者等対応加算に直結するのが「受診歴の有無にかかわらず発熱患者等の受入れを行う旨を公表し、動線を分ける体制を持つこと」です。発熱患者等対応加算は、この体制があることを前提に、実際に発熱患者等を適切な感染対策のもとで診療したときに算定します。
なお、第二種協定指定医療機関(新興感染症発生時に都道府県と医療措置協定を結んでいる医療機関)であることが要件に含まれている点は、見落とされやすいので注意が必要です。
「発熱患者等」とは具体的に誰を指すのか
対象患者の範囲は、告示と留意事項通知で表現が少し異なります。記事や院内ルールに落とし込むときは、狭めすぎないことが大切です。
- 告示の表現:「発熱その他感染症を疑わせるような症状を呈する患者」
- 留意事項通知の表現:「発熱、呼吸器症状、発しん、消化器症状又は神経症状その他感染症を疑わせるような症状を有する患者」
つまり「発熱患者等」の「等」には、発熱だけでなく、呼吸器症状・発しん・消化器症状・神経症状など、感染症を疑わせるさまざまな症状が含まれます。「熱が出ている人だけ」と限定して運用すると、本来対象になる患者を取りこぼす可能性があります。
また施設基準にあるとおり、受診歴の有無は問いません。かかりつけの患者でも、初めて受診する患者でも、感染症を疑わせる症状があり、空間的・時間的分離を含む適切な感染対策のもとで診療すれば対象になります。
発熱患者等対応加算と掲示・公表の関係
掲示・公表に関わる要件は、外来感染対策向上加算の施設基準に含まれています。発熱患者等対応加算のために、別途新しい掲示物を作る必要があるわけではありません。関係するのは次の2つです。
- 院内感染防止対策に関する取組事項を、見やすい場所に掲示すること
- 受診歴の有無にかかわらず発熱患者等の受入れを行う旨を公表すること
注意したいのは、施設基準の条文は「公表」「掲示」という言葉で書かれている点です。発熱患者等の受入れを公表する手段が、ウェブサイトへの掲載まで一律に必須とされているかどうかは、外来感染対策向上加算の当該条文だけでは明示されていません。この点は断定を避け、自院では院内掲示と公表を確実に行ったうえで、ウェブサイトを持っている場合の掲載範囲は厚生局の最新情報で確認するのが安全です。
一方で、令和6年度改定で施設基準にかかる掲示事項は「見やすい場所に掲示するとともに、原則としてウェブサイトに掲載する」枠組みが整理されています。自院ホームページがある診療所では、院内掲示とウェブ掲載の内容を一致させておくことが、適時調査や個別指導での指摘リスクを下げる現実的な備えになります。どの加算がウェブ掲示の対象になるかを横断的に確認したい場合は、「Web掲示が算定要件の加算【完全リスト】」も併せてご覧ください。掲示事項そのものの全体像は「厚生労働大臣が定める掲示事項とは?」で整理しています。
令和8年度改定での扱い(点数・要件は据え置き)
発熱患者等対応加算は令和6年度(2024年)改定で新設された加算で、令和8年度改定では点数(20点・月1回)も名称も据え置きでした。要件の骨格(診療所限定・外来感染対策向上加算が前提・第二種協定指定医療機関・公表と掲示・動線の分離)も令和6年度からそのまま引き継がれています。
点数表上の根拠となる注番号も、初診料は注11、再診料は注15で、令和6年度・令和8年度を通じて変わりません。発熱患者等対応加算は新設時から外来感染対策向上加算の「ただし書」として規定されており、令和8年度改定でその位置づけや注番号が動いたわけではないため、引用時は「初診料 注11/再診料 注15」で統一して差し支えありません。
対象患者の範囲も同様です。告示本文は「発熱その他感染症を疑わせるような症状」という包括的な表現、留意事項通知は「発熱、呼吸器症状、発しん、消化器症状又は神経症状その他感染症を疑わせるような症状」と症状を列挙する表現で、いずれも令和6年度からの内容です。「発熱」だけに絞られていない点は、運用上あらためて押さえておきたいところです。
よくある誤解・注意点
最後に、現場で間違えやすいポイントをまとめます。
- 病院は算定できない:診療所限定の加算です。許可病床数200床未満の病院でも算定できません。
- 単独では届け出られない:外来感染対策向上加算の施設基準を満たして届け出ていることが前提で、発熱患者等対応加算だけの届出様式はありません。
- 入院の感染対策向上加算とは併存しない:入院料に対する感染対策向上加算(A234-2)を届け出ている医療機関は、外来感染対策向上加算を算定できないため、発熱患者等対応加算も算定できません。
- 月1回まで:外来感染対策向上加算も発熱患者等対応加算も、それぞれ月1回が上限です。同じ月に複数回の発熱患者を診ても、加算は月1回までです。
- 「発熱」だけに絞らない:対象は発熱に限らず、呼吸器症状・発しん・消化器症状・神経症状など感染症を疑わせる症状を含みます。
なお、初診料・再診料に乗る加算には、ほかにも機能強化加算や時間外対応加算があります。これらは施設基準や掲示の要件がそれぞれ異なるため、自院が届け出ている加算ごとに掲示内容を整理しておくと、改定対応や調査対応がスムーズになります。
まとめ
発熱患者等対応加算のポイントを整理します。
- 月1回・20点。初診料(A000 注11)・再診料(A001 注15)の「ただし書」として、外来感染対策向上加算(6点)に上乗せされる
- 診療所限定。病院は算定できない
- 外来感染対策向上加算の届出が前提。発熱患者等対応加算に独立した届出はない
- 対象は「発熱その他感染症を疑わせるような症状を呈する患者」で、受診歴は問わない。発熱だけに限らない
- 施設基準には、院内感染防止対策の取組事項の掲示と、発熱患者等の受入れを行う旨の公表が含まれる
- 令和8年度改定では点数・名称・施設基準の骨格はいずれも据え置き。注番号も初診料注11・再診料注15で令和6年度から変わらない
発熱患者等対応加算は、外来感染対策向上加算とセットで運用する加算です。掲示・公表の要件も親加算側にまとまっているため、外来感染対策向上加算の対応を正しく整えることが、そのまま発熱患者等対応加算の前提を満たすことにつながります。
掲示義務のWeb対応についてお困りの方は、お気軽にお問い合わせください。
出典・参考
一次資料(厚生労働省・厚生局)
- 医科診療報酬点数表(令和8年厚生労働省告示第69号)A000 初診料 注11/A001 再診料 注15 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686842.pdf
- 診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(保医発0305第6号・令和8年3月5日)初診料・再診料の項 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001707246.pdf
- 基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(保医発0305第7号・令和8年3月5日)第1の4 外来感染対策向上加算に関する施設基準 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001707254.pdf
- 基本診療料の施設基準等の一部改正(令和8年厚生労働省告示第70号) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001675854.pdf
- 令和8年度診療報酬改定について(厚生労働省) https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
二次資料(比較・参考)
- 令和6年度診療報酬改定の概要(感染症対応・新設時の比較用) https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001219303.pdf




