診療情報提供料(I)は診察なしで算定できる?紹介状だけのケースと自費文書料を解説

「受診はしたくない、紹介状だけ欲しい」——患者さんからこう頼まれて、手が止まったことはありませんか。診察をしていないのに、診療情報提供料(I)を算定していいのか。窓口でとっさに迷う場面です。
先に結論から言うと、診察を伴わず紹介状(診療情報提供書)だけを作成した場合、診療情報提供料(I)は算定できません。算定の前提が「診療に基づき」だからです。この記事では、その理由と、では患者さんにどう対応すればよいのか、自費の文書作成料との線引き、そして料金を取る場合の掲示まで、厚生労働省の点数表・通知(一次資料)に当たって整理します。
そもそも診療情報提供料(I)とは
診療情報提供料(I)は、医科診療報酬点数表の区分番号B009に定められた医学管理料で、点数は250点です。令和8年度(2026年)改定後も据え置かれています。
算定の基本は、点数表の注に次のように書かれています。
保険医が診療に基づき別の保険医療機関での診療の必要を認め、患者の同意を得て、診療状況を示す文書を添えて患者の紹介を行った場合に、紹介先保険医療機関ごとに患者1人につき月1回に限り算定する。
ポイントは3つです。一つ目は「診療に基づき」という起点。二つ目は「患者の同意」。三つ目は「診療状況を示す文書を添えて紹介」したこと。さらに、交付した文書の写しを診療録(カルテ)に添付することが求められます。算定できるのは、紹介先の医療機関ごとに患者1人につき月1回までです。
診察と紹介状をめぐる、よくある疑問
ここからは、窓口で実際に迷いやすい疑問に、要件に照らして答えていきます。
Q1. 診察せず、紹介状だけ書いたら算定できる?
算定できません。 注にある通り、診療情報提供料(I)は「診療に基づき」紹介した場合に算定するものです。診察などの診療行為が一切ないまま文書だけを作成しても、算定の前提を満たしません。
Q2. なぜ「診察なし」だと取れないの?
保険診療の建て付けによるものです。保険で算定できるのは、診療という行為があってこそ。診察が行われていなければ、そもそもその受診は療養の給付の対象になりません。したがって、診療情報提供料(I)が取れないだけでなく、その日の再診料・初診料も算定できません。「文書を作る」という作業だけでは、保険の対象にならないということです。
Q3. では患者さんが「紹介状だけ」と希望したら、料金は一切取れない?
保険では取れませんが、自費の文書作成料として実費を徴収するという選択肢があります。診断書などの文書料と同じく、保険給付と直接関係しない文書の発行に係る費用は、患者の同意を前提に実費徴収できる扱いだからです。
ただし、診察をせずに他院あての紹介状を書くこと自体が医学的に適切かどうかは、別途、医療機関としての判断が必要です。紹介には本来、診療に基づく医学的な評価が伴うものだからです。
Q4. 自費の文書作成料を取るなら、何が必要?
実費徴収できるサービスには共通の手続きがあります。文書作成料を徴収するなら、次の3点が必要です。
- 料金の院内掲示(受付・待合室など見やすい場所に内容と料金を掲示。原則としてウェブサイトにも掲載)
- 内容と料金の説明と同意(あらかじめ説明し、患者の同意を得る)
- 区別した領収証の発行(保険の一部負担金と混同しない形で発行)
このあたりの考え方は、実費徴収全般のルールと共通です。保険外併用療養費と実費徴収の違いとは?掲示義務と2026年6月の追加項目を解説で整理しています。掲示・同意・領収証の3点セットは、予約の患者都合キャンセル料は実費徴収できる?でも詳しく扱っています。
Q5. 何らかの診察をしてから紹介状を書いた場合は?
算定できます。 来院時に問診や状態確認などの診療を行い、その診療に基づいて別の医療機関での診療の必要を認め、患者の同意を得て文書を添えて紹介すれば、「診療に基づき」の要件を満たします。この場合は、診療情報提供料(I)に加えて、その日の再診料なども算定の対象になります。境界線は、結局のところ「診療に基づくものかどうか」です。
Q6. 電話で伝えただけ、照会しただけでも算定できる?
算定できません。 診療情報提供料(I)は、所定の様式(またはこれに準じた様式)の文書を作成して患者または紹介先に交付し、その写しを診療録に添付することが要件です。口頭や電話で伝えただけで所定の文書の作成・交付・写しの添付がない場合や、別の医療機関への「紹介」ではなく患者の症状についての「照会」にとどまる場合は、この要件を満たしません。また、自院と特別の関係にある医療機関への情報提供も、算定の対象外とされています。
Q7. 同じ紹介先に、同じ月にもう一度紹介したら?
診療情報提供料(I)は、紹介先の保険医療機関ごとに患者1人につき月1回までです。同じ紹介先に同じ月内で重ねて紹介しても、その月の算定は1回となります。紹介先が別の医療機関であれば、それぞれについて算定できます。
窓口での対応チェックリスト
「紹介状だけ」と頼まれたときに確認したいポイントを、流れで整理します。
- まず、患者さんを診察するかどうかを確認する。診察を行わないなら診療情報提供料(I)は算定できない
- 診察を行うなら、診療に基づいて紹介の必要を判断し、同意を得て文書を作成・交付、写しをカルテに添付する
- 診察を行わず文書だけ作成するなら、保険ではなく自費の文書作成料として扱う
- 自費で取るなら、料金の院内掲示(HPがあればWeb掲載も)・説明と同意・区別した領収証をそろえる
- 同じ紹介先への同月の重複紹介は月1回までであることを念頭に置く
掲示・指導との関係も押さえておく
自費の文書作成料を新たに設定するなら、その料金は院内掲示の対象です。掲示事項の全体像は厚生労働大臣が定める掲示事項とは?医科・歯科・薬局別に全項目を解説で確認できます。
また、診療情報提供料の算定根拠(診療に基づくか、文書の写しがカルテにあるか)は、個別指導でも確認されやすい論点です。調査・指導の種類と違いは適時調査・個別指導・医療監視の違い|医療機関が受ける3つの調査を比較、個別指導の流れは個別指導とは?選定基準・当日の流れ・対策をわかりやすく解説で整理しています。
まとめ
- 診療情報提供料(I)はB009・250点、紹介先ごとに患者1人月1回。算定の起点は「診療に基づき」
- 診察を伴わず紹介状だけ作成した場合は算定できない。診療行為がないため、その日の再診料・初診料も取れない
- 患者希望で紹介状だけ作るなら、保険ではなく自費の文書作成料として扱う。診察なしの紹介が医学的に妥当かは別途判断
- 自費で取るなら院内掲示(+原則Web掲載)・説明と同意・区別した領収証が必要
- 来院時に診察を行い、その診療に基づいて紹介すれば算定できる(+再診料等)。文書の作成・交付・写しのカルテ添付が要件で、照会のみ・特別の関係にある機関への提供は算定不可
掲示物の管理に時間を取られるのは、医療の本質ではありません。とはいえ、自費の文書料を新たに取るなら、料金の院内掲示とWeb掲載の内容をそろえておくことが、後の指導で足をすくわれないための近道です。算定できる場合・できない場合の線引きと、取るときの掲示まで、セットで整えておきましょう。
出典・参考
一次資料(厚生労働省・法令)
- 医科診療報酬点数表 区分番号B009 診療情報提供料(I)(令和8年度改定対応、点数・注・通知) https://shirobon.net/medicalfee/latest/ika/r08_ika/r08i_ch2/r08i2_pa1/r08i21_sec1/r08i211_B009.html
- 「療養の給付と直接関係ないサービス等の取扱いについて」の一部改正について(保医発0327第7号、令和8年3月27日、令和8年6月1日実施。文書発行費用等の実費徴収と掲示・同意・領収証の取扱い) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001707281.pdf
二次資料(参考)
- ウィーメックス(PHC メディコム)「診療情報提供料の仕組みを基本から算定不可の場合まで解説」 https://www.phchd.com/jp/medicom/park/idea/medicalfees-information-provision-fee
- 愛知県保険医協会「診療情報提供料の算定方法について」 https://aichi-hkn.jp/news/4938
